「飛ばしませんよそんなの……」
でも雲雀くんに野次を飛ばしてやれという先輩はいなかった。どうやらあのブツブツの呪いが功を奏したらしい。
「てか悪いな、優勝は多分赤組だ」隣の蛍さんは柄にもなく体育祭なんて学校行事での優勝に嬉しそうな顔をして「騎馬戦と棒倒し取ったからな。あれ、得点高いんだよ」
「正直、群青のメンツは分散してるって言っても、永人さんと九十三先輩いるのはずるいでしょ」能勢さんも私の隣に座り込んで苦笑しながら「騎馬戦だって、永人さんに狙われた1年半泣きでしたよ」
「うわ……」
「ほら三国ちゃんも引いてるし」
「仕方ねーだろ、最後に残ってたんだから。あ、笹部唯人は初っ端にぶち殺しといた」
「要りませんよそんな報告!」
「あれ、桜井くん、トップバッターなんだ?」
能勢さんの声で、放送席の前に視線を向ける。遠すぎて見えないけれど、桜井くんと思しき金髪が水色のバトン片手にぴょんぴょんと跳ねているところだった。
「1年アンカーじゃないの?」
「……足は速いらしいんですけど、そこは戦略で、初っ端から引き離すとかなんとか言ってたと思います」
「んじゃ雲雀と対決見れねーじゃん。アイツ1年アンカーだろ」
「そうですね……」
でも、私は桜井くんと雲雀くんの競争に順位がつくようなものは見たくなかったので、その偶然の采配には安堵していた。
「……そういえば、九十三先輩って足も速いんですね」
「身長あるしな。アイツはマジで運動神経の塊」
「群青が誇る武闘派だしね。だから三国ちゃんが抱きしめられたら骨折れると思うよ」
何の話……と怪訝な顔をした後で、徒競走で1位になったら抱きしめてあげるよーなんて言われていたことを思い出した。私と九十三先輩は子供と大人のように体格が違うので、確かにやめていただきたい。
その色別対抗リレーの初っ端は、青組団長の狙い通り、桜井くんがトップに躍り出た。群青の中からは色を問わず歓声が上がって「行け桜井ー!」「特別科なんかのしちまいな!」と応援されていたので、なんとなく桜井くんの愛され度が分かった。その金髪はあっという間に、本当にあっという間に私には目もくれず、私達がいるコーナーの前を走り抜ける。一瞬の間に見えた顔はいつになく真剣で、脳裏にその光景が焼き付く。
「んげ、桜井、だいぶ速かったな」
「青組がトップですね。……あー、もう、やっぱり雲雀くんは鬼門ですよ。ほら白組が一人抜かれた」
ぼんやりと、テレビでも見るような状態で雲雀くんが駆けてくるのを見ていた。桜井くんとどっちのスピードが上かなんて分からない、ただ速いことしか分からない。桜井くんのお陰で悠々とトップを走る青組走者を猛スピードで追いかける、その姿が私達の前を横切る。先輩達が「転んでしまえ!」「顔面をやっちまえ!」と野次を飛ばしても、やっぱり私達には目もくれずに走り去る。その背中を呆然と見送りながら、雲雀くんが青組に追いつかないまま2年生にバトンを渡すのを確認する。
「雲雀くんのせいでだいぶアドバンテージ削られましたね」
「ざまーみろ、って言いてぇところだけど、桜井が持ってた水色バトンがマジでずっとトップだな」
その水色バトンは2年生になれば常盤先輩が引き継ぎ、赤組の追い上げにギリギリ追いつかれないスピードで駆け抜け、なんとか青組がトップを保つ。最早トップ2は赤組と青組の争いになっていた。
「最後は色の大将って決まってるからなあ、別に足速くはねえんだよなあ」
「青組の大将、遅いんですよね……」
でも雲雀くんに野次を飛ばしてやれという先輩はいなかった。どうやらあのブツブツの呪いが功を奏したらしい。
「てか悪いな、優勝は多分赤組だ」隣の蛍さんは柄にもなく体育祭なんて学校行事での優勝に嬉しそうな顔をして「騎馬戦と棒倒し取ったからな。あれ、得点高いんだよ」
「正直、群青のメンツは分散してるって言っても、永人さんと九十三先輩いるのはずるいでしょ」能勢さんも私の隣に座り込んで苦笑しながら「騎馬戦だって、永人さんに狙われた1年半泣きでしたよ」
「うわ……」
「ほら三国ちゃんも引いてるし」
「仕方ねーだろ、最後に残ってたんだから。あ、笹部唯人は初っ端にぶち殺しといた」
「要りませんよそんな報告!」
「あれ、桜井くん、トップバッターなんだ?」
能勢さんの声で、放送席の前に視線を向ける。遠すぎて見えないけれど、桜井くんと思しき金髪が水色のバトン片手にぴょんぴょんと跳ねているところだった。
「1年アンカーじゃないの?」
「……足は速いらしいんですけど、そこは戦略で、初っ端から引き離すとかなんとか言ってたと思います」
「んじゃ雲雀と対決見れねーじゃん。アイツ1年アンカーだろ」
「そうですね……」
でも、私は桜井くんと雲雀くんの競争に順位がつくようなものは見たくなかったので、その偶然の采配には安堵していた。
「……そういえば、九十三先輩って足も速いんですね」
「身長あるしな。アイツはマジで運動神経の塊」
「群青が誇る武闘派だしね。だから三国ちゃんが抱きしめられたら骨折れると思うよ」
何の話……と怪訝な顔をした後で、徒競走で1位になったら抱きしめてあげるよーなんて言われていたことを思い出した。私と九十三先輩は子供と大人のように体格が違うので、確かにやめていただきたい。
その色別対抗リレーの初っ端は、青組団長の狙い通り、桜井くんがトップに躍り出た。群青の中からは色を問わず歓声が上がって「行け桜井ー!」「特別科なんかのしちまいな!」と応援されていたので、なんとなく桜井くんの愛され度が分かった。その金髪はあっという間に、本当にあっという間に私には目もくれず、私達がいるコーナーの前を走り抜ける。一瞬の間に見えた顔はいつになく真剣で、脳裏にその光景が焼き付く。
「んげ、桜井、だいぶ速かったな」
「青組がトップですね。……あー、もう、やっぱり雲雀くんは鬼門ですよ。ほら白組が一人抜かれた」
ぼんやりと、テレビでも見るような状態で雲雀くんが駆けてくるのを見ていた。桜井くんとどっちのスピードが上かなんて分からない、ただ速いことしか分からない。桜井くんのお陰で悠々とトップを走る青組走者を猛スピードで追いかける、その姿が私達の前を横切る。先輩達が「転んでしまえ!」「顔面をやっちまえ!」と野次を飛ばしても、やっぱり私達には目もくれずに走り去る。その背中を呆然と見送りながら、雲雀くんが青組に追いつかないまま2年生にバトンを渡すのを確認する。
「雲雀くんのせいでだいぶアドバンテージ削られましたね」
「ざまーみろ、って言いてぇところだけど、桜井が持ってた水色バトンがマジでずっとトップだな」
その水色バトンは2年生になれば常盤先輩が引き継ぎ、赤組の追い上げにギリギリ追いつかれないスピードで駆け抜け、なんとか青組がトップを保つ。最早トップ2は赤組と青組の争いになっていた。
「最後は色の大将って決まってるからなあ、別に足速くはねえんだよなあ」
「青組の大将、遅いんですよね……」



