騎馬戦の大将は体育祭として選ばれている各色の大将だったけれど、その大将に負けない異様な貫禄を醸し出す騎馬があると思ったら、案の定、蛍さんだった。赤組だから雲雀くんもいるはず、と目を凝らすまでもなく、銀髪はすぐに見つかった。体格的にも力的にも納得の騎馬の上だった。そして妙に大きい騎馬がいると思ったら、九十三先輩が騎馬上にいる騎馬まであった。あの身長の九十三先輩を支えているということは、機動力無視で力技にかけた騎馬に違いない。
その騎馬戦は文字通り戦いの場で、始まった途端に雄叫びと土煙が上がった。そして、赤組があまりにも黄組を圧倒していた。いかんせん、赤組の騎馬には蛍さん、九十三先輩、そして雲雀くんがいる。名実ともに群青のトップ2、そして雲雀くんとくれば、私だったら向き合った瞬間に白旗を上げて降参だ。実際、その3人の騎馬は次々と相手を落馬させ、対戦相手の黄組は惨憺たる有様となっていた。
しいて勝負になった色を挙げるとすれば我らが青組だった。能勢さん、常盤先輩、桜井くんの騎馬がいたお陰だ。正直、群青内部の騎馬対決にしか見えなかった。ただ、最終的には桜井くんの騎馬は九十三先輩の騎馬に押し崩され、その横から能勢さんの騎馬が九十三先輩のハチマキを掻っ攫っていた。「きったねーぞ芳喜!」という九十三先輩の声がここまで聞こえた気がした。
結果、棒倒しに引き続き男子騎馬戦も赤組の勝利。得点パネルは伏せられていたけど、色別対抗リレーで勝ったからといって勝敗が逆転しそうにはなかった。
その最終種目、色別対抗リレーにも何人か群青メンバーは混ざっていた。青組には常盤先輩と桜井くん、赤組には九十三先輩と雲雀くん、黄組には誰もおらず、白組に中山先輩。
一番の盛り上がりをみせ、かつ参加者が少ないその競技で、前方の観覧席を確保することは不可能だった。日陰の観覧席を諦めつつ、うろうろとグラウンドの見える場所を探していると「三国ちゃーん、こっちおいでー」と能勢さんの声が聞こえ、手も見えた。駆け寄ると、どうやらテントの片隅を群青の先輩達が占領しているらしかった。
「おう三国」
その中でも最前列を陣取って座っている蛍さんが隣を叩いた。つい、息が止まる。
「リレー見んだろ? ここ座れよ」
赤倉庫の日、新庄が私を拉致するより前に新庄と会ってましたか? 蛍さんって妹さんが亡くなってるんですか? 私ってその妹さんの代わりなんですか? なんで蛍さんは私の中学生のときの写真を持ってるんですか?
そんな疑問が次々沸いたけれど、こんなところで口に出せるはずがなかった。
蛍さんとは、いつか駆け引きが必要になる……。そしてそのいつかは、少なくとも今ではない。そう自分に言い聞かせて、あらゆる疑問を心の奥底に押し込んだ。
「……いいんですか? 先輩達も見たいんじゃ……」
「三国ちゃんチビだから、俺らは後ろでも見えるって」
気にするな、と別の先輩に肩を押さえられ、半ば無理矢理最前列に座らされた。
「……ここって色区別ない観覧席ですよね? 群青で占拠してるんですか?」
「人聞き悪いこと言うんじゃねーよ、俺らがいるからイヤがられて勝手にいなくなるんだよ」
見渡す限り群青の先輩しかいない……と思っていたら、やはりそういうことだし、悪いのはやっぱり群青側だと思う。
「まあ三国、先に言っとくけど、九十三、常盤、このあたりはガンガン野次飛ばしていい。中山は繊細だからやめたほうがいい」
その騎馬戦は文字通り戦いの場で、始まった途端に雄叫びと土煙が上がった。そして、赤組があまりにも黄組を圧倒していた。いかんせん、赤組の騎馬には蛍さん、九十三先輩、そして雲雀くんがいる。名実ともに群青のトップ2、そして雲雀くんとくれば、私だったら向き合った瞬間に白旗を上げて降参だ。実際、その3人の騎馬は次々と相手を落馬させ、対戦相手の黄組は惨憺たる有様となっていた。
しいて勝負になった色を挙げるとすれば我らが青組だった。能勢さん、常盤先輩、桜井くんの騎馬がいたお陰だ。正直、群青内部の騎馬対決にしか見えなかった。ただ、最終的には桜井くんの騎馬は九十三先輩の騎馬に押し崩され、その横から能勢さんの騎馬が九十三先輩のハチマキを掻っ攫っていた。「きったねーぞ芳喜!」という九十三先輩の声がここまで聞こえた気がした。
結果、棒倒しに引き続き男子騎馬戦も赤組の勝利。得点パネルは伏せられていたけど、色別対抗リレーで勝ったからといって勝敗が逆転しそうにはなかった。
その最終種目、色別対抗リレーにも何人か群青メンバーは混ざっていた。青組には常盤先輩と桜井くん、赤組には九十三先輩と雲雀くん、黄組には誰もおらず、白組に中山先輩。
一番の盛り上がりをみせ、かつ参加者が少ないその競技で、前方の観覧席を確保することは不可能だった。日陰の観覧席を諦めつつ、うろうろとグラウンドの見える場所を探していると「三国ちゃーん、こっちおいでー」と能勢さんの声が聞こえ、手も見えた。駆け寄ると、どうやらテントの片隅を群青の先輩達が占領しているらしかった。
「おう三国」
その中でも最前列を陣取って座っている蛍さんが隣を叩いた。つい、息が止まる。
「リレー見んだろ? ここ座れよ」
赤倉庫の日、新庄が私を拉致するより前に新庄と会ってましたか? 蛍さんって妹さんが亡くなってるんですか? 私ってその妹さんの代わりなんですか? なんで蛍さんは私の中学生のときの写真を持ってるんですか?
そんな疑問が次々沸いたけれど、こんなところで口に出せるはずがなかった。
蛍さんとは、いつか駆け引きが必要になる……。そしてそのいつかは、少なくとも今ではない。そう自分に言い聞かせて、あらゆる疑問を心の奥底に押し込んだ。
「……いいんですか? 先輩達も見たいんじゃ……」
「三国ちゃんチビだから、俺らは後ろでも見えるって」
気にするな、と別の先輩に肩を押さえられ、半ば無理矢理最前列に座らされた。
「……ここって色区別ない観覧席ですよね? 群青で占拠してるんですか?」
「人聞き悪いこと言うんじゃねーよ、俺らがいるからイヤがられて勝手にいなくなるんだよ」
見渡す限り群青の先輩しかいない……と思っていたら、やはりそういうことだし、悪いのはやっぱり群青側だと思う。
「まあ三国、先に言っとくけど、九十三、常盤、このあたりはガンガン野次飛ばしていい。中山は繊細だからやめたほうがいい」



