でも、蓋を開けてみれば、そのコミュニケーションの方法が間違っていたのは確かだった。私は中学生になるまでの反省を生かして上手くやろうとしただけだったのに、それは周りからみれば“仲が良い”と勘違いされるものでしかなかった。
だから、私がそんな言動をとらなければ、私は笹部くんのことを好きなんだと思い込みさえしなければ、俺は告白なんてしなかった、ともすれば好きとさえ思わなかったと、笹部くんはそう言いたいのだ。
そしてきっと、笹部くんは、2年前の夏祭り以来、それを私に言いたくて仕方がなかったのだろう。
そしてそんなことを言われると、私はいつだって、自分の認識が正しかったかなんて、自信を持つことなんてできないのだ。私は笹部くんの認識が甘いなんて詰っていたけれど、そんなの、私だって同じだ。
黙り込んでしまった私に、笹部くんはまるで鬼の首でも取ったかのようにまくしたてた。
「三国は、そういうヤツなんだよ。告ったら、全然分からなかったって天然ぶるか、ガチで分かってない頭おかしいヤツなんだよ。お前もさ、気を付けたほうがいいぜ。三国が抱き着いてきたから好かれてるって勘違いして告ったらフラれるだけだから」
その横っ面が、拳で弾き飛ばされた。笹部くんの体は体育館扉に叩きつけられたし、背後では悲鳴が上がったし、なんだなんだと一層野次馬が集まり始めた音がしたし「やばいやばい」と九十三先輩の声まで聞こえた気がした。
「お前、いい加減に自分のダサさ自覚しろよ」
その胸座を掴み上げられ、笹部くんは「は? いや、え」と狼狽した声を出す。
「結局お前が勝手に勘違いしたんだろ? お前の話がつまんねー、んで三国だけ優しさで話繋いでやれば盛り上がってるって勘違いして、誘う勇気もねえお前が姑息に仕組んだデートに気付かなけりゃ二つ返事だって思い込んで、三国からしたらなんでもかんでも、気遣いまで好意に勘違いされて有難迷惑だ」
もう笹部くんの顔は赤くなんかなく、逆に、真っ青だった。その胸座は「黙ってんじゃねーよ、なんか言えよ」と更に揺さぶられる。
「で、あんな意味分かんねー写真ばらまいて俺と付き合ってることにして、俺が否定したら、野次馬も集まったところで三国は好きでもない男に平気で抱き着くビッチ呼ばわり。お前マジで何がしたいの?」
「だから……俺じゃなくてみんなが……」
「大体、三国が抱き着いたんじゃねーよ。俺が無理矢理抱きしめたんだ」
……違う。抱き着いたのは私だ。なんなら、抱きしめ返してほしいとさえ思っていた。雲雀くんに特別な感情はないのに、目の前にいたから甘えたかった。その意味で笹部くんの指摘は正しかった。その誹りだけは免れなかった。
「分かったら三国に謝れよ」
「は……、それとこれと関係が」
「謝れつってんだろ」
力任せに胸座を揺さぶられ、そのまま笹部くんの体は体育館扉に向かって叩きつけられた。野次馬からはまた悲鳴が上がって、それに構わず、雲雀くんがもう一度笹部くんの胸座を掴み上げ、拳も振り上げる。ドッと緊張か怯えかで心臓が跳ね――それと前後して九十三先輩が飛び出した。
「こら雲雀! やめやめ!」
パンッと雲雀くんの拳は九十三先輩の手に収まったし、面食らった雲雀くんはそのままもう一方の腕も九十三先輩の手に捕まれた。
「……邪魔しないでくれます?」
だから、私がそんな言動をとらなければ、私は笹部くんのことを好きなんだと思い込みさえしなければ、俺は告白なんてしなかった、ともすれば好きとさえ思わなかったと、笹部くんはそう言いたいのだ。
そしてきっと、笹部くんは、2年前の夏祭り以来、それを私に言いたくて仕方がなかったのだろう。
そしてそんなことを言われると、私はいつだって、自分の認識が正しかったかなんて、自信を持つことなんてできないのだ。私は笹部くんの認識が甘いなんて詰っていたけれど、そんなの、私だって同じだ。
黙り込んでしまった私に、笹部くんはまるで鬼の首でも取ったかのようにまくしたてた。
「三国は、そういうヤツなんだよ。告ったら、全然分からなかったって天然ぶるか、ガチで分かってない頭おかしいヤツなんだよ。お前もさ、気を付けたほうがいいぜ。三国が抱き着いてきたから好かれてるって勘違いして告ったらフラれるだけだから」
その横っ面が、拳で弾き飛ばされた。笹部くんの体は体育館扉に叩きつけられたし、背後では悲鳴が上がったし、なんだなんだと一層野次馬が集まり始めた音がしたし「やばいやばい」と九十三先輩の声まで聞こえた気がした。
「お前、いい加減に自分のダサさ自覚しろよ」
その胸座を掴み上げられ、笹部くんは「は? いや、え」と狼狽した声を出す。
「結局お前が勝手に勘違いしたんだろ? お前の話がつまんねー、んで三国だけ優しさで話繋いでやれば盛り上がってるって勘違いして、誘う勇気もねえお前が姑息に仕組んだデートに気付かなけりゃ二つ返事だって思い込んで、三国からしたらなんでもかんでも、気遣いまで好意に勘違いされて有難迷惑だ」
もう笹部くんの顔は赤くなんかなく、逆に、真っ青だった。その胸座は「黙ってんじゃねーよ、なんか言えよ」と更に揺さぶられる。
「で、あんな意味分かんねー写真ばらまいて俺と付き合ってることにして、俺が否定したら、野次馬も集まったところで三国は好きでもない男に平気で抱き着くビッチ呼ばわり。お前マジで何がしたいの?」
「だから……俺じゃなくてみんなが……」
「大体、三国が抱き着いたんじゃねーよ。俺が無理矢理抱きしめたんだ」
……違う。抱き着いたのは私だ。なんなら、抱きしめ返してほしいとさえ思っていた。雲雀くんに特別な感情はないのに、目の前にいたから甘えたかった。その意味で笹部くんの指摘は正しかった。その誹りだけは免れなかった。
「分かったら三国に謝れよ」
「は……、それとこれと関係が」
「謝れつってんだろ」
力任せに胸座を揺さぶられ、そのまま笹部くんの体は体育館扉に向かって叩きつけられた。野次馬からはまた悲鳴が上がって、それに構わず、雲雀くんがもう一度笹部くんの胸座を掴み上げ、拳も振り上げる。ドッと緊張か怯えかで心臓が跳ね――それと前後して九十三先輩が飛び出した。
「こら雲雀! やめやめ!」
パンッと雲雀くんの拳は九十三先輩の手に収まったし、面食らった雲雀くんはそのままもう一方の腕も九十三先輩の手に捕まれた。
「……邪魔しないでくれます?」



