「なんか始業式の間、1組の連中がこっち見る空気おかしくなかったか?」
「……さあ……?」
そんな“集団の空気”なんて言われても何も分からないのだけれど……。目に見えないものは見えないです、と笑い飛ばしたいくらいさっぱり何も感じなかった。
「っていうか、こっち見てるだけなら桜井くんとか雲雀くんじゃないの? 普段と違って制服ちゃんと着てるから違和感があったとか」
「……お前見てる気がしたんだけど、気のせいか」
「……例えば胡桃が1組を出るときに『5組に海の写真持って行く』って言って、メンバーを聞いて、私と胡桃が一緒に遊ぶ仲だということにみんな驚いていた、とか」
「……なくはないけど、そうだとしても別にそんな驚く話じゃねーしな」
まいいか、と雲雀くんはかぶりを振った。きっとそんなどうでもいい話だ。
「そういえばきびだんごありがと。おばあちゃんも喜んでた」
雲雀くんはお盆の後に1週間ほど、お母さんの実家がある岡山へ行っていたらしい。お陰で桜井くんが「侑生が岡山行って暇だしドーナツ腐るから英凜ん家行っていい?」なんてメールを寄越す羽目になった。ちなみにうちに来て食べたら帰った。謎だったけど、最近のおばあちゃんは桜井くんを第二の孫みたいに可愛がり始めたのでよしとする。
「ああ。昴夜とか、毎年芸がないって言うくせに食べるんだよな」
「実際岡山って他になにかあるの」
「なんか、手を変え品を変えきびだんごがある」
「きびだんご以外ないじゃん、それ」
「あとは桃?」
「本当に全部桃太郎じゃん」
「おーふたーりさん」
ありがちに手より口を動かしていると九十三先輩の声が聞こえた。振り向けば、体育館の囲いに腕と顎を乗せてゆるっと微笑んでいる。その腕の中には箒があった。
「ラブラブの掃除時間なんて許しがたいなー。雲雀、俺と変わろ」
「暑いところ嫌いなんで」
「先輩、どこの掃除なんですか?」
「ん、武道場周辺」
武道場は体育館の真北なので、配置を離れているわけではないらしい。夏休みのうちに髪を切ったらしく、九十三先輩の長い前髪は目に少しかかるくらいまで短くなっていた。
「ねー、三国ちゃんって体育祭何色なの?」
「青色です」
「マジかよ」
「俺は赤ですよ」
「聞いてねー、しかも三国ちゃんじゃなくてお前かー」その口調からはどうやら九十三先輩は赤組らしく「まあ群青のメンツ、結構分散してんだけどな。あ、青組は芳喜いるよ」
能勢さんか……。私が表情を曇らせてしまったせいで思い出したらしく「あ、そういや、夏祭りの話してなかったけどさあ」と例の件を口にする。
「俺が着いたの、結構後だったからさあ、詳しいことは分かんねーけど、三国ちゃんが襲われかけたんだろ? 相変わらず深緋はエッグイことするよなあ」
「……よく分かりましたね」
「そりゃな。三国ちゃんの浴衣ぐっしゃぐしゃだし、陽菜ちゃんもいるって聞いてたのにいねーし、あんな暗いとこにいるのも変だし。まあ俺以外も察したと思うよ。だからそこは俺があんま考えるとこじゃねーや」
私達の反応をよそに九十三先輩はそのまま真面目な話に突入してしまった。
「で? なんであれ、永人と芳喜に言っちゃまずかったの」
「……それは、ですね……」
蛍さんと能勢さんだけ、新庄しか知らないはずのことを知っているから――それをここではっきりと口に出していいものか。逡巡していると「蛍さんと能勢さんが新庄と組んでる可能性あるんで」と雲雀くんがズバリ口に出した。
「ひ、雲雀くん……」
「……さあ……?」
そんな“集団の空気”なんて言われても何も分からないのだけれど……。目に見えないものは見えないです、と笑い飛ばしたいくらいさっぱり何も感じなかった。
「っていうか、こっち見てるだけなら桜井くんとか雲雀くんじゃないの? 普段と違って制服ちゃんと着てるから違和感があったとか」
「……お前見てる気がしたんだけど、気のせいか」
「……例えば胡桃が1組を出るときに『5組に海の写真持って行く』って言って、メンバーを聞いて、私と胡桃が一緒に遊ぶ仲だということにみんな驚いていた、とか」
「……なくはないけど、そうだとしても別にそんな驚く話じゃねーしな」
まいいか、と雲雀くんはかぶりを振った。きっとそんなどうでもいい話だ。
「そういえばきびだんごありがと。おばあちゃんも喜んでた」
雲雀くんはお盆の後に1週間ほど、お母さんの実家がある岡山へ行っていたらしい。お陰で桜井くんが「侑生が岡山行って暇だしドーナツ腐るから英凜ん家行っていい?」なんてメールを寄越す羽目になった。ちなみにうちに来て食べたら帰った。謎だったけど、最近のおばあちゃんは桜井くんを第二の孫みたいに可愛がり始めたのでよしとする。
「ああ。昴夜とか、毎年芸がないって言うくせに食べるんだよな」
「実際岡山って他になにかあるの」
「なんか、手を変え品を変えきびだんごがある」
「きびだんご以外ないじゃん、それ」
「あとは桃?」
「本当に全部桃太郎じゃん」
「おーふたーりさん」
ありがちに手より口を動かしていると九十三先輩の声が聞こえた。振り向けば、体育館の囲いに腕と顎を乗せてゆるっと微笑んでいる。その腕の中には箒があった。
「ラブラブの掃除時間なんて許しがたいなー。雲雀、俺と変わろ」
「暑いところ嫌いなんで」
「先輩、どこの掃除なんですか?」
「ん、武道場周辺」
武道場は体育館の真北なので、配置を離れているわけではないらしい。夏休みのうちに髪を切ったらしく、九十三先輩の長い前髪は目に少しかかるくらいまで短くなっていた。
「ねー、三国ちゃんって体育祭何色なの?」
「青色です」
「マジかよ」
「俺は赤ですよ」
「聞いてねー、しかも三国ちゃんじゃなくてお前かー」その口調からはどうやら九十三先輩は赤組らしく「まあ群青のメンツ、結構分散してんだけどな。あ、青組は芳喜いるよ」
能勢さんか……。私が表情を曇らせてしまったせいで思い出したらしく「あ、そういや、夏祭りの話してなかったけどさあ」と例の件を口にする。
「俺が着いたの、結構後だったからさあ、詳しいことは分かんねーけど、三国ちゃんが襲われかけたんだろ? 相変わらず深緋はエッグイことするよなあ」
「……よく分かりましたね」
「そりゃな。三国ちゃんの浴衣ぐっしゃぐしゃだし、陽菜ちゃんもいるって聞いてたのにいねーし、あんな暗いとこにいるのも変だし。まあ俺以外も察したと思うよ。だからそこは俺があんま考えるとこじゃねーや」
私達の反応をよそに九十三先輩はそのまま真面目な話に突入してしまった。
「で? なんであれ、永人と芳喜に言っちゃまずかったの」
「……それは、ですね……」
蛍さんと能勢さんだけ、新庄しか知らないはずのことを知っているから――それをここではっきりと口に出していいものか。逡巡していると「蛍さんと能勢さんが新庄と組んでる可能性あるんで」と雲雀くんがズバリ口に出した。
「ひ、雲雀くん……」



