鳥のヒバリのドイツ語訳だ。憤慨すると「だからドイツ語にするあたりに温度あるだろ」と反論されたし「え、あれヒバリって意味なんだ! なんか知らないバンドの名前とかだと思ってた」と陽菜が今更ながらコメントした。
「えー、俺もなんかそういう自分のいいやつにしたい……英凜にやり方聞けばよかった……」
「別に何回でも変えられるんじゃないの?」
「そうなの?」
「でも変えたら先輩らに怒られそうだな」
「それこの間テレビで見た、パワハラってやつだ」
「っていうか2人とも、始業式その恰好で行くの?」
きょとんと桜井くんと雲雀くんは揃って目を丸くした。なにが? とでも聞こえてきそうだ。
「……始業式は風紀検査あるでしょ?」
「あー、そういやそんなのあったね」
呑気に返事をする桜井くんの開襟シャツは襟どころか全部開いている。インナーはオレンジ。どうせ好きな色だからと着てきたに違いない。相変わらず耳はピアスでズタズタだし、なんなら夏の間に一ヵ所増えたし……。隣の雲雀くんも似たような有様だ。
2人は「風紀検査のときだけよかったらスルーされんの?」「なんじゃねーの。じゃなきゃ風紀検査なんてやんねーだろ」と顔を見合わせて、渋々シャツのボタンを留め始める。
「ボタン留めたら2枚着てるようなもんじゃん、あちー」
「つか腕捲り禁止なんだっけ。最悪」
ブツブツと文句を言いながら身だしなみを整える2人に「……うわ、なんか桜井と雲雀が制服ちゃんと着てんの似合わねえ」陽菜が私の心を代弁してくれた。でも春の間はちゃんとシャツを着ていたから、その頃を思えばそんなに違和感はない。ピアスだって、穴がある以上どうしようもないのでそのままだ。ただシャツをズボンの中へ入れ始めると本当に知らない人達みたいになった。
「てかさー、どうせ普段スルーしてんだからよくない? どうせ始業式終わった瞬間に無視じゃん、意味ある?」
「ないよな」
そんな有様になったのは桜井くん達だけじゃなくて、式の間見かける先輩達も一斉に身形を整えていた。お陰で九十三先輩に挨拶代わりに頭を叩かれたときは誰に何をされたのかさっぱり分からなかった。その代わり式と風紀検査が終わった後はいつものだらっとした姿になっていて、この学校はこれでいいのか、激しく不安になった。京くんが「受けない」と断言したのも分かる。
「三国、そのまま掃除行こうぜ」
「あ、うん」
「俺も体育館横がいいー、仲間外れきらーい」
「早く行けよ、うるせーな」
雲雀くんがしっしと桜井くんを追い払った後「体育館横の掃除ってどこに道具あるの?」「ここらへんに用具入れがある」「何で知ってるの」「この間先輩らがこれで野球してた」体育館横でモップとの間の子みたいな箒を取り出す。
「体育館横、北って書いてあったね。これ南側はしなくていいのかな」
「別のクラスがやってんじゃね」
本当は私と雲雀くんも東西に分かれて、それぞれの方向から掃除をする方が効率的だし合理的ではあったのだけれど「掃除時間長くて暇」という理由で、2人揃って東側から箒を掃く。
「……三国、お前特別科となんかあったの?」
「え?」
途端、雲雀くんが口にしたあまりにも突拍子のない話題に素っ頓狂な声が出てしまった。雲雀くんは眉を顰めているけれど、私のほうが眉を顰めたい。
「な……なんで?」
「えー、俺もなんかそういう自分のいいやつにしたい……英凜にやり方聞けばよかった……」
「別に何回でも変えられるんじゃないの?」
「そうなの?」
「でも変えたら先輩らに怒られそうだな」
「それこの間テレビで見た、パワハラってやつだ」
「っていうか2人とも、始業式その恰好で行くの?」
きょとんと桜井くんと雲雀くんは揃って目を丸くした。なにが? とでも聞こえてきそうだ。
「……始業式は風紀検査あるでしょ?」
「あー、そういやそんなのあったね」
呑気に返事をする桜井くんの開襟シャツは襟どころか全部開いている。インナーはオレンジ。どうせ好きな色だからと着てきたに違いない。相変わらず耳はピアスでズタズタだし、なんなら夏の間に一ヵ所増えたし……。隣の雲雀くんも似たような有様だ。
2人は「風紀検査のときだけよかったらスルーされんの?」「なんじゃねーの。じゃなきゃ風紀検査なんてやんねーだろ」と顔を見合わせて、渋々シャツのボタンを留め始める。
「ボタン留めたら2枚着てるようなもんじゃん、あちー」
「つか腕捲り禁止なんだっけ。最悪」
ブツブツと文句を言いながら身だしなみを整える2人に「……うわ、なんか桜井と雲雀が制服ちゃんと着てんの似合わねえ」陽菜が私の心を代弁してくれた。でも春の間はちゃんとシャツを着ていたから、その頃を思えばそんなに違和感はない。ピアスだって、穴がある以上どうしようもないのでそのままだ。ただシャツをズボンの中へ入れ始めると本当に知らない人達みたいになった。
「てかさー、どうせ普段スルーしてんだからよくない? どうせ始業式終わった瞬間に無視じゃん、意味ある?」
「ないよな」
そんな有様になったのは桜井くん達だけじゃなくて、式の間見かける先輩達も一斉に身形を整えていた。お陰で九十三先輩に挨拶代わりに頭を叩かれたときは誰に何をされたのかさっぱり分からなかった。その代わり式と風紀検査が終わった後はいつものだらっとした姿になっていて、この学校はこれでいいのか、激しく不安になった。京くんが「受けない」と断言したのも分かる。
「三国、そのまま掃除行こうぜ」
「あ、うん」
「俺も体育館横がいいー、仲間外れきらーい」
「早く行けよ、うるせーな」
雲雀くんがしっしと桜井くんを追い払った後「体育館横の掃除ってどこに道具あるの?」「ここらへんに用具入れがある」「何で知ってるの」「この間先輩らがこれで野球してた」体育館横でモップとの間の子みたいな箒を取り出す。
「体育館横、北って書いてあったね。これ南側はしなくていいのかな」
「別のクラスがやってんじゃね」
本当は私と雲雀くんも東西に分かれて、それぞれの方向から掃除をする方が効率的だし合理的ではあったのだけれど「掃除時間長くて暇」という理由で、2人揃って東側から箒を掃く。
「……三国、お前特別科となんかあったの?」
「え?」
途端、雲雀くんが口にしたあまりにも突拍子のない話題に素っ頓狂な声が出てしまった。雲雀くんは眉を顰めているけれど、私のほうが眉を顰めたい。
「な……なんで?」



