「まともなこと言ってるけど大丈夫? あの散歩道ってなにかにとり憑かれるの?」
「だから違いますって! ねー、英凜、俺のティシャツとって」
「え、うん……」
桜井くんのカバンは……、と荷物の中から探そうとすると、先に雲雀くんの手が伸びて、桜井くんのティシャツを放った。桜井くんは「さんきゅー! ……お日様のにおいする!」とそのままティシャツに顔を埋める。可愛いな……と思ったのは私だけではないはずだ。
「侑生、あたしのパーカーも取って」
「ん」
表情を変えずに胡桃の荷物を取ってあげる雲雀くんはやっぱり大人だ。なんなら「てかねー、胡桃マジで反省して」と桜井くんのほうが口を尖らせている。
「あの散歩道、見た目より遠いじゃん。しかもなんもないし」
「なにかあるなんて言ってないじゃん、散歩しよって言っただけなのに」
「しかもカップルばっかで恥ずかしかったし。途中で海に飛び込んでそのまま帰りたかった」
カップルで歩けば永遠に結ばれる道の途中で離脱するなんて謎過ぎる。よっぽどイヤだったんだなと思うとちょっと安心して笑ってしまった。でも胡桃は膨れっ面だ。
「あたしだって彼氏と歩きたかったけど! いまいないんだから仕方ないじゃん!」
「だからって俺じゃなくてよくね」
「だって近くにて便利なんだもん」
「てかだったら彼氏作って来年行けば? てか岩にめちゃくちゃ色んなカップルの名前彫ってあってマジホラーだった! あれ夜行ったら心霊スポットだと思う」
「昴夜って本当に夢がないよね。本当にそういうところ直したほうがいいと思う」
「だからあ、だったら俺を付き合わせなくてもいいじゃん!」
「よーしそこ、痴話喧嘩やめて帰る準備しろ」
ぱんぱん、と蛍さんが手を叩き、先輩達は例によって階段を使わずに身軽に歩道へとのぼっていく。駿くんのことは「ほら肩乗りな」と常磐先輩が肩車をし、九十三先輩が歩道から引っ張り上げていた。
「三国、どうやって来た? チャリ以外なら俺と芳喜で送る」
……よりによって蛍さんと能勢さんに送ってもらう気にはならない。ふるふると首を横に振りながら「多分、兄ともう一人の従弟も一緒なんで大丈夫です」と言い訳した。
「ああ、そんならいいか。気つけろよ」
「……はい」
実際、お兄ちゃん達も今から帰るのか、携帯電話を見れば、つい2分前に「帰った?」とメールが来ていた。きっとこれから帰るのだろう、嘘から出た真というヤツだ。「今から帰る。最初カツアゲって思われた辺りにいる」と素早く返信してから、一足先に歩道にあがった駿くんを「お兄ちゃん達、こっち来るって。ここで先輩達とお別れ」と九十三先輩の足元から引き取った。駿くんはキャップを外して頭を下げる。
「遊んでもらってありがとうございました」
「おい桜井ィ、お前コイツ見習え」
その頭を撫でながら常磐先輩が叫んだけれど、石階段を上っていた桜井くんは「え、なにが? 俺の可愛さも負けてなくない?」とすっとぼけるだけだ。代わりに駿くんの頭を「来年は俺が投げてやるからな!」と撫でた。
その駿くんが見上げる先に、桜井くんと入れ替わるように雲雀くんが立った。その図に緊張したのは、私だけだったろうか。それとも雲雀くんと駿くんも緊張しただろうか。
分からないまま、ただ雲雀くんが駿くんの頭を撫でた。
「来年、また来いよ」
ホッとしたのは、私だけではない。こくりこくりと駿くんが何度か頷いたのを見ればそれは分かった。
「だから違いますって! ねー、英凜、俺のティシャツとって」
「え、うん……」
桜井くんのカバンは……、と荷物の中から探そうとすると、先に雲雀くんの手が伸びて、桜井くんのティシャツを放った。桜井くんは「さんきゅー! ……お日様のにおいする!」とそのままティシャツに顔を埋める。可愛いな……と思ったのは私だけではないはずだ。
「侑生、あたしのパーカーも取って」
「ん」
表情を変えずに胡桃の荷物を取ってあげる雲雀くんはやっぱり大人だ。なんなら「てかねー、胡桃マジで反省して」と桜井くんのほうが口を尖らせている。
「あの散歩道、見た目より遠いじゃん。しかもなんもないし」
「なにかあるなんて言ってないじゃん、散歩しよって言っただけなのに」
「しかもカップルばっかで恥ずかしかったし。途中で海に飛び込んでそのまま帰りたかった」
カップルで歩けば永遠に結ばれる道の途中で離脱するなんて謎過ぎる。よっぽどイヤだったんだなと思うとちょっと安心して笑ってしまった。でも胡桃は膨れっ面だ。
「あたしだって彼氏と歩きたかったけど! いまいないんだから仕方ないじゃん!」
「だからって俺じゃなくてよくね」
「だって近くにて便利なんだもん」
「てかだったら彼氏作って来年行けば? てか岩にめちゃくちゃ色んなカップルの名前彫ってあってマジホラーだった! あれ夜行ったら心霊スポットだと思う」
「昴夜って本当に夢がないよね。本当にそういうところ直したほうがいいと思う」
「だからあ、だったら俺を付き合わせなくてもいいじゃん!」
「よーしそこ、痴話喧嘩やめて帰る準備しろ」
ぱんぱん、と蛍さんが手を叩き、先輩達は例によって階段を使わずに身軽に歩道へとのぼっていく。駿くんのことは「ほら肩乗りな」と常磐先輩が肩車をし、九十三先輩が歩道から引っ張り上げていた。
「三国、どうやって来た? チャリ以外なら俺と芳喜で送る」
……よりによって蛍さんと能勢さんに送ってもらう気にはならない。ふるふると首を横に振りながら「多分、兄ともう一人の従弟も一緒なんで大丈夫です」と言い訳した。
「ああ、そんならいいか。気つけろよ」
「……はい」
実際、お兄ちゃん達も今から帰るのか、携帯電話を見れば、つい2分前に「帰った?」とメールが来ていた。きっとこれから帰るのだろう、嘘から出た真というヤツだ。「今から帰る。最初カツアゲって思われた辺りにいる」と素早く返信してから、一足先に歩道にあがった駿くんを「お兄ちゃん達、こっち来るって。ここで先輩達とお別れ」と九十三先輩の足元から引き取った。駿くんはキャップを外して頭を下げる。
「遊んでもらってありがとうございました」
「おい桜井ィ、お前コイツ見習え」
その頭を撫でながら常磐先輩が叫んだけれど、石階段を上っていた桜井くんは「え、なにが? 俺の可愛さも負けてなくない?」とすっとぼけるだけだ。代わりに駿くんの頭を「来年は俺が投げてやるからな!」と撫でた。
その駿くんが見上げる先に、桜井くんと入れ替わるように雲雀くんが立った。その図に緊張したのは、私だけだったろうか。それとも雲雀くんと駿くんも緊張しただろうか。
分からないまま、ただ雲雀くんが駿くんの頭を撫でた。
「来年、また来いよ」
ホッとしたのは、私だけではない。こくりこくりと駿くんが何度か頷いたのを見ればそれは分かった。



