「俺は面倒でもいいから黒くなりたかったけどな」
「なんで?」
「……色白だと女みたいだろ」
「そんなことないでしょ」
たとえばそれは雲雀くんが自分の顔を女っぽいと気にするのと同じ……、だろうか? 雲雀くんが女顔を気にするのは、男らしくありたいと思うからだろうか? それと同じだとしたら、女らしくありたいという私の感情は、一体どこから湧き出てきたのだろう……。
「てか先輩らマジでいつまで遊んでんの」
「体力有り余ってるのかな……」
「体育祭も群青のメンツがどんだけ集まってるかで勝敗決まるらしいしな」
「……確かに、喧嘩に強いと騎馬戦に強い、とか」
「それもあるし、普通に運動神経とガタイいい人多いしな。ろくにアップもしねー、部活もやってねーのにあんだけスパイク打ってんの、おかしいから」
答えを見つけられないまま、話は段々と逸れていった。お陰で、その違和感は形にならないまま、ゆっくりと不純物のように沈んでいった。
4時を過ぎる頃、先輩達は「疲れたー」「撤収撤収」とパラソルの下に戻ってきて片付けを始めた。その中に桜井くんと胡桃の姿はなかった。
「……桜井くん達、どこ行ったんだろ」
「桜井くんなら散歩道行ってたよ」答えてくれたのは能勢さんで「そろそろ戻ってくる頃だと思うけど」
指差された方向を見ると、海の上に、お昼に来たときにはなかった道があった。ぱらぱらと、何組かの人が歩いているので、桜井くんがどれなのかは分からない。
「潮の満ち引きで1日2回しか通れねえ、通ったカップルが永遠に結ばれるってやつだろ? 胡散くせえ」蛍さんが苦々し気に「ああいうのは行くヤツほど別れる」
「永人、夢ないなー。そういうこと言ってるから元カノにフラれんだよ」九十三先輩が笑いながら「ああいうのは女の子のロマンなんじゃん。ほら、女の子って占い好きだし。そういうもんだよ」
「俺、占いはマジで嫌いなんですよね」常磐先輩がしかめっ面で反論して「だって普通に都合よすぎじゃないですか?」
「なに、占いになんかイヤな思い出あんの」
「告ったときにAB型は無理って言われたんですよ」
「そんなキチガイに告る常磐が悪いでしょ、てかキチガイ」
「暴言ですよ」
「三国ちゃん、散歩道行きたいの?」
じっと散歩道のことを見ていたせいで勘違いされたらしい。能勢さんがクスッと笑った。
「一緒に行く?」
「……いえ、いいです」
「つか干潮過ぎたろ、やめろ。海のど真ん中に取り残されるラブコメはどっか別ンとこでやってくれ」
じゃあ桜井くん達はもう帰ってくるのだろうか。荷物を片付けながらちらちらと散歩道のほうを見ていたせいか、九十三先輩にまで「三国ちゃんそんな行きたかったの? 明日デートする?」と言われてしまったし、九十三先輩は軽口の罰としてパラソルの片づけをさせられた。
その桜井くん達は十数分もすれば戻ってきて「だからさー、遠いからやめようつったじゃん」「それはごめんって謝ったじゃん」となにやら口喧嘩をしていた。桜井くんはガシガシと金髪を掻き混ぜながら「片付けできなくてすいません」と珍しく律儀に謝った。お陰で蛍さんまで目を丸くした。
「お前……どうした、頭でも打ってきたのか」
「違いますう! 俺だってそのくらいの礼儀ありますう!」
「先輩と擦れ違って『やっほー』なんてふざけた挨拶するヤツが何を」
「挨拶はほら、親しみみたいな。片付けはほら、親しき仲にも礼儀ありみたいな」
「なんで?」
「……色白だと女みたいだろ」
「そんなことないでしょ」
たとえばそれは雲雀くんが自分の顔を女っぽいと気にするのと同じ……、だろうか? 雲雀くんが女顔を気にするのは、男らしくありたいと思うからだろうか? それと同じだとしたら、女らしくありたいという私の感情は、一体どこから湧き出てきたのだろう……。
「てか先輩らマジでいつまで遊んでんの」
「体力有り余ってるのかな……」
「体育祭も群青のメンツがどんだけ集まってるかで勝敗決まるらしいしな」
「……確かに、喧嘩に強いと騎馬戦に強い、とか」
「それもあるし、普通に運動神経とガタイいい人多いしな。ろくにアップもしねー、部活もやってねーのにあんだけスパイク打ってんの、おかしいから」
答えを見つけられないまま、話は段々と逸れていった。お陰で、その違和感は形にならないまま、ゆっくりと不純物のように沈んでいった。
4時を過ぎる頃、先輩達は「疲れたー」「撤収撤収」とパラソルの下に戻ってきて片付けを始めた。その中に桜井くんと胡桃の姿はなかった。
「……桜井くん達、どこ行ったんだろ」
「桜井くんなら散歩道行ってたよ」答えてくれたのは能勢さんで「そろそろ戻ってくる頃だと思うけど」
指差された方向を見ると、海の上に、お昼に来たときにはなかった道があった。ぱらぱらと、何組かの人が歩いているので、桜井くんがどれなのかは分からない。
「潮の満ち引きで1日2回しか通れねえ、通ったカップルが永遠に結ばれるってやつだろ? 胡散くせえ」蛍さんが苦々し気に「ああいうのは行くヤツほど別れる」
「永人、夢ないなー。そういうこと言ってるから元カノにフラれんだよ」九十三先輩が笑いながら「ああいうのは女の子のロマンなんじゃん。ほら、女の子って占い好きだし。そういうもんだよ」
「俺、占いはマジで嫌いなんですよね」常磐先輩がしかめっ面で反論して「だって普通に都合よすぎじゃないですか?」
「なに、占いになんかイヤな思い出あんの」
「告ったときにAB型は無理って言われたんですよ」
「そんなキチガイに告る常磐が悪いでしょ、てかキチガイ」
「暴言ですよ」
「三国ちゃん、散歩道行きたいの?」
じっと散歩道のことを見ていたせいで勘違いされたらしい。能勢さんがクスッと笑った。
「一緒に行く?」
「……いえ、いいです」
「つか干潮過ぎたろ、やめろ。海のど真ん中に取り残されるラブコメはどっか別ンとこでやってくれ」
じゃあ桜井くん達はもう帰ってくるのだろうか。荷物を片付けながらちらちらと散歩道のほうを見ていたせいか、九十三先輩にまで「三国ちゃんそんな行きたかったの? 明日デートする?」と言われてしまったし、九十三先輩は軽口の罰としてパラソルの片づけをさせられた。
その桜井くん達は十数分もすれば戻ってきて「だからさー、遠いからやめようつったじゃん」「それはごめんって謝ったじゃん」となにやら口喧嘩をしていた。桜井くんはガシガシと金髪を掻き混ぜながら「片付けできなくてすいません」と珍しく律儀に謝った。お陰で蛍さんまで目を丸くした。
「お前……どうした、頭でも打ってきたのか」
「違いますう! 俺だってそのくらいの礼儀ありますう!」
「先輩と擦れ違って『やっほー』なんてふざけた挨拶するヤツが何を」
「挨拶はほら、親しみみたいな。片付けはほら、親しき仲にも礼儀ありみたいな」



