私と雲雀くんが「そろそろ桜井と変わってきな」と蛍さんに命じられたのは3時過ぎだった。「さすがにもう帰る時間なんじゃないのかな」「俺の荷物番が終わるタイミングで帰るみたいなことは言ってた」と話しながら、砂まみれの駿くんの体から海で泥を落としてパラソルのもとへ戻ると、桜井くんはデッキチェアに寝転んだままスヤスヤと寝息を立てていた。なんならティシャツを布団代わりにしている。
「……コイツマジか」
「ね。すぐ寝るよね。ちっちゃい子みたい」
「いつから寝てたの?」
「荷物番始めてすぐ。でも昴夜がいるだけでナンパとか来ないから超便利」
そっか、やっぱり胡桃一人だとナンパされて大変なのか……。そんなことを思っている私の横で「おい起きろ」と雲雀くんが椅子を蹴っている。ガタガタッと揺れた椅子の上で、桜井くんは「んー……よく寝た」と呑気な目の覚まし方をした。
「なに、交代?」
「交代つかお前寝てただけじゃねーか」
「胡桃いるからいいかなって」
「これあたしがいなかったらどうしてたの?」
「英凜が代わりに見張ってた」
「そういう話じゃなくない?」
「俺、別にこのまま荷物番でもいいよ」桜井くんは欠伸をしながら「なんか疲れたし。結構よく遊んだ」
「でもあたし1人じゃ群青の先輩達のとこ戻りにくいし。ね!」
胡桃は、寝転んだままの桜井くんの腕を両腕で引っ張った。その様子に視線が行ってしまったのはなぜだったろう。ともかく、桜井くんはいかにも寝起き、といった感じの眠そうな顔のまま体を起こした。
「別に胡桃1人でも歓迎されんじゃね」
「そういうことじゃないんだってば」
「てか先輩らマジでずっと動いてるけど疲れねーのかな」
「昨日まで夏課外だったんだろ? んで月曜また模試つってたから、今のうちに遊んでんじゃね」
「あーね」
「昴夜、早く早く!」
何をそんなに急いでいるのか、胡桃に急かされるがままに桜井くんは「んじゃ侑生よろしく」と先輩達のもとへ足を向ける。でも途中で胡桃が桜井くんの腕を掴んで方向転換を促していた。遠くの海岸を指差して何か話して、桜井くんが何かを答える横顔だけが見える。
先輩達に合流するのではないのだろうか。ぼんやりとその2人の姿を見てしまって「三国、日蔭入れば」と声を掛けられるまで、自分が立ち尽くしていることに気が付かなかった。
「あー……うん……。っていうか、雲雀くん、椅子座ったら」
雲雀くんはデッキチェアに座らず砂浜に座っていた。理由は椅子が2つしかないからなのだろうけれど「いいよ別に、もとから泥結構ついてるし」と動く気配はない。とはいえ私と駿くんだけ座るというのも気が引ける。結局駿くんだけデッキチェアに乗せて、私と雲雀くんは砂浜に座り込んだままになった。ビーチパラソルの下とはいえ、影が動いていたせいでじんわりと熱い。
「三国の従弟、散々遊ばれてたけど大丈夫か」
「なんか体が小さくてオモチャにしやすいからそうしてみたって感じだよね……」
「楽しかったから問題はない」
セリフとは裏腹に表情を変えず、駿くんはまだ少し泥がついたままの頭を軽く叩く。でも気遣いできるような器用な子ではないので、楽しかったのは本当なのだろう。
「いいならいいけど、来年も来たらまたうっかり遊ばれるぞ」
なんなら、雲雀くんのそのセリフに、駿くんの顔は少しだけ輝いた。よっぽど先輩達に遊んでもらったのが楽しかったらしい。でも確かに一人っ子で兄弟がいないと遊んでもらうなんて機会はないのか……。
「じゃ、来年も来たらいいね」
「……コイツマジか」
「ね。すぐ寝るよね。ちっちゃい子みたい」
「いつから寝てたの?」
「荷物番始めてすぐ。でも昴夜がいるだけでナンパとか来ないから超便利」
そっか、やっぱり胡桃一人だとナンパされて大変なのか……。そんなことを思っている私の横で「おい起きろ」と雲雀くんが椅子を蹴っている。ガタガタッと揺れた椅子の上で、桜井くんは「んー……よく寝た」と呑気な目の覚まし方をした。
「なに、交代?」
「交代つかお前寝てただけじゃねーか」
「胡桃いるからいいかなって」
「これあたしがいなかったらどうしてたの?」
「英凜が代わりに見張ってた」
「そういう話じゃなくない?」
「俺、別にこのまま荷物番でもいいよ」桜井くんは欠伸をしながら「なんか疲れたし。結構よく遊んだ」
「でもあたし1人じゃ群青の先輩達のとこ戻りにくいし。ね!」
胡桃は、寝転んだままの桜井くんの腕を両腕で引っ張った。その様子に視線が行ってしまったのはなぜだったろう。ともかく、桜井くんはいかにも寝起き、といった感じの眠そうな顔のまま体を起こした。
「別に胡桃1人でも歓迎されんじゃね」
「そういうことじゃないんだってば」
「てか先輩らマジでずっと動いてるけど疲れねーのかな」
「昨日まで夏課外だったんだろ? んで月曜また模試つってたから、今のうちに遊んでんじゃね」
「あーね」
「昴夜、早く早く!」
何をそんなに急いでいるのか、胡桃に急かされるがままに桜井くんは「んじゃ侑生よろしく」と先輩達のもとへ足を向ける。でも途中で胡桃が桜井くんの腕を掴んで方向転換を促していた。遠くの海岸を指差して何か話して、桜井くんが何かを答える横顔だけが見える。
先輩達に合流するのではないのだろうか。ぼんやりとその2人の姿を見てしまって「三国、日蔭入れば」と声を掛けられるまで、自分が立ち尽くしていることに気が付かなかった。
「あー……うん……。っていうか、雲雀くん、椅子座ったら」
雲雀くんはデッキチェアに座らず砂浜に座っていた。理由は椅子が2つしかないからなのだろうけれど「いいよ別に、もとから泥結構ついてるし」と動く気配はない。とはいえ私と駿くんだけ座るというのも気が引ける。結局駿くんだけデッキチェアに乗せて、私と雲雀くんは砂浜に座り込んだままになった。ビーチパラソルの下とはいえ、影が動いていたせいでじんわりと熱い。
「三国の従弟、散々遊ばれてたけど大丈夫か」
「なんか体が小さくてオモチャにしやすいからそうしてみたって感じだよね……」
「楽しかったから問題はない」
セリフとは裏腹に表情を変えず、駿くんはまだ少し泥がついたままの頭を軽く叩く。でも気遣いできるような器用な子ではないので、楽しかったのは本当なのだろう。
「いいならいいけど、来年も来たらまたうっかり遊ばれるぞ」
なんなら、雲雀くんのそのセリフに、駿くんの顔は少しだけ輝いた。よっぽど先輩達に遊んでもらったのが楽しかったらしい。でも確かに一人っ子で兄弟がいないと遊んでもらうなんて機会はないのか……。
「じゃ、来年も来たらいいね」



