ぼくらは群青を探している

「それはそうかも。九十三先輩、やっぱり年下得意なのかもね」

 そんな話をしながら並んでいる最中、焼きそば片手に歩いてくる人のシルエットに妙に見覚えがあると思ったらお兄ちゃんだった。私の視線で気付いたのか「おう」と声をかけてくる。

「結局お金どうしたの」
「京くんに借りた」
「うわ……」
「英凜の友達? お揃い」

 妹として冷ややかな目を向けるも、お兄ちゃんは意にも介さず、桜井くんに向かってピッと自分の金髪をつまんでみせて意味不明なセリフを口にし、そのまま行ってしまった。桜井くんはその後ろ姿を見つめながら、ピッと自分の前髪をつまんでみせる。

「……英凜の兄貴より似合ってるかな」
「本ッ当に似合わないよね。やめてほしい」
「ハーフの昴夜のほうが似合うのは仕方ないんじゃない」胡桃は笑って「てか英凜のお兄ちゃん? 年離れてるの?」と先輩と似たようなことを聞く。きっと年の近くなさそうな兄弟を見たときはその質問が定型文なのだろう。

「3つ上。いま大学1年目だよ」
「あれ、じゃああたしのとこと全く同じなんだ? あたしもお兄ちゃん大学1年生だから。いま早稲にいるけど、英凜のお兄ちゃんも東京?」
「ううん、お兄ちゃんは京都」
「京都のどこ?」
「帝都大学」
「え、マジ」胡桃は素早くお兄ちゃんが立ち去った方向を見て「……み、見え……見えない……!」
「なに、どういうこと?」
「だってあれ帝大生には見えないじゃん! 英凜のお兄ちゃんだって言われなかったら絶対DQNだと思ってた!」

 ドキュン……? 知らない単語だった。でも文脈的に悪口というか、少なくとも褒められていないのは分かる。

「なんで? 帝大ってそんなすごいの?」
「……昴夜本ッ当になんにも知らないよね。すごいよ。ちなみにあたしの志望校ですーう」
「え、1年なのに志望校ってあんの。てか志望校ってとりあえず東大書いてFもらって、あと女子大書いて何くれるのかなってわくわくするヤツだよね」
「それ絶対に桜井くんとか荒神くんだけの遊びルールだよ。雲雀くんとかはきっとちゃんと書いてるよ」

 しかも問題はそこではない。なお「ちなみに女子大書いたけどFだった、俺が男だからなのか普通に点数足りないのか分かんなかった」とのことなので本当に無駄な遊びだ。

「英凜のお兄ちゃんって灰桜高校だった?」
「ううん、違うけど」
「そうだよねー、去年の進学実績に帝大なかったし、お兄ちゃんがずっと1番だったって聞いてたし……」

 そもそも別々に住んでいるという話は、する必要がなさそうなのでそのまま黙っておいた。

「……胡桃のお兄さんは絶対イケメンだよね」
「うふ、そう思うでしょ。そうなの」

 自信満々の答えからはその仲の良さまで伝わってきた。私も、そうはいっても憎まれ口を叩ける程度には仲が良いとは思っているけれど……。

「英凜の兄貴もイケメンだと思うけどな。あの金髪やめれば」
「イケメンだと思わないし、似合わないのにあの金髪を選択するところがやっぱり元来イケメンの資格がないんだと思う」
「めちゃくちゃ兄貴に厳しいな」

 各自目当てものを買った後、九十三先輩達と合流し、桜井くんが「さっき英凜の兄貴に会った」なんて報告をするので「ああ、あのカツアゲのおにーさんね」「カツアゲ?」なんて当初の誤解が明るみになった。胡桃は「やっぱり見た目で損してるよ」とケラケラ笑ったし、雲雀くんは「そんな似てねーの」と人混みの中にお兄ちゃんを探すような素振りをみせた。

「てかツクミン先輩に脅された英凜の兄貴、不運すぎだろ」