「年と喋り方、一致してなくないか」
言いながら雲雀くんが駿くんの頬を指で小突いたけれど、駿くんは表情を変えない。それをどう捉えたのか、雲雀くんは「悪かったな」とでも言いたげにキャップごしに頭を撫でる。雲雀くんにとって年下はみんな妹と同じようなものなのだろうか。
「年の割に大人びてるとか、難しい言葉を知ってるとか、よく言われるみたい。本の虫だから、多分本の表現をそのまま使っちゃうんだと思う」
「やべー、ツクミン先輩と会話成立しなさそ」
「なんだとコラ」
桜井くん達が駿くんに気を取られている隙にそっとその視界から逃げ、もそもそとティシャツを脱いだ。見られている前で脱ぐのは何となく恥ずかしかったからだ。
それでも、全部脱いだタイミングで胡桃が「あーっ、やっぱり似合う! 可愛い! あたしの目に狂いなし!」と明るい声で肩を叩くので、その場にいた全員の視線は一斉に私と胡桃に向いた。ただ、桜井くんはすぐに私から視線を外したし、隣の雲雀くんとは目は合わなかった。
「え……三国ちゃんビキニは……?」
「……九十三先輩ってパンツ以外の話もできるんですね」
「先輩をナメんなよ三国ちゃん」
「三国ちゃんがそういうの選ぶなんて意外だなあ。それ、三国ちゃんチョイス?」
能勢さんがいうのは服部分に付属しているネックレスみたいなアクセサリーのことだろう。鎖骨のあたりから緩く吊り下がり、胸元で一本に纏まっている。買いに行ったときに胡桃が「これがあるだけで違うから!」とこの水着を勧めた理由だ。
「ああいえ、これは胡桃が選んだもので……」
「ああ、やっぱり……」
「……そっか、三国ちゃんは選ばないだろうな」
そんなにこのネックレスには存在感と存在価値があるだろうか。しげしげと眺めるとネックレスよりも自分の胸のサイズのほうが気になったのでやめた。下着と違って、水着は、なんだかこう、世に言う寄せてあげる仕様なので、なんだか見ていて恥ずかしい。
「ってか胡桃ちゃんかっわ! いい!」
ただ、隣に胡桃がいるお陰で、視線は全部胡桃が持って行ってくれた。私もついまじまじと見てしまえば、買ったその場でも一緒だったはずなのに、想像以上に似合う姿にこっちが照れそうになってしまった。ひらひらとしたオレンジ色のレースみたいなバンドゥ(と胡桃が言っていた)は胡桃の色の白さと華奢さを際立てている。
ただ、それとお揃いのオレンジ色の花柄が入ったボトムス(と言うべきなのだろうか)の腰にはリボンがついていて、ついおそるおそる手を伸ばしてしまった。
「こ……これは……解けるの? 解くと脱げるの……?」
「これはねー、ただの飾り。紐結ばないでもちゃんとパンツの形になってるから脱げないよ、危ないでしょ」
「男のロマン潰してくるじゃん、知りたくなかった。なー、滝山」
「……僕に振らないでください」
「なー、芳喜!」
「そんなもんじゃないですか? パンツと違って水着は脱がせるようにできてないですし」
別にパンツも脱がせるようにできてないと思うんですけど……? 駿くんの耳を塞ぐべきか激しく悩んだ。
「てか三国ちゃんは浮き輪いいの」
「あるんですけど、膨らませるの面倒だなと思って」
「芳喜、膨らませてやれば?」
「いいですけど、なんで俺なんです?」
「浮き輪膨らますの疲れるじゃん、三国ちゃんがカワイソーだと思わない?」
「俺も可哀想だと気付いてほしかったですね」
「え、いや、能勢さん、そんな無理にしなくていいです……」
言いながら雲雀くんが駿くんの頬を指で小突いたけれど、駿くんは表情を変えない。それをどう捉えたのか、雲雀くんは「悪かったな」とでも言いたげにキャップごしに頭を撫でる。雲雀くんにとって年下はみんな妹と同じようなものなのだろうか。
「年の割に大人びてるとか、難しい言葉を知ってるとか、よく言われるみたい。本の虫だから、多分本の表現をそのまま使っちゃうんだと思う」
「やべー、ツクミン先輩と会話成立しなさそ」
「なんだとコラ」
桜井くん達が駿くんに気を取られている隙にそっとその視界から逃げ、もそもそとティシャツを脱いだ。見られている前で脱ぐのは何となく恥ずかしかったからだ。
それでも、全部脱いだタイミングで胡桃が「あーっ、やっぱり似合う! 可愛い! あたしの目に狂いなし!」と明るい声で肩を叩くので、その場にいた全員の視線は一斉に私と胡桃に向いた。ただ、桜井くんはすぐに私から視線を外したし、隣の雲雀くんとは目は合わなかった。
「え……三国ちゃんビキニは……?」
「……九十三先輩ってパンツ以外の話もできるんですね」
「先輩をナメんなよ三国ちゃん」
「三国ちゃんがそういうの選ぶなんて意外だなあ。それ、三国ちゃんチョイス?」
能勢さんがいうのは服部分に付属しているネックレスみたいなアクセサリーのことだろう。鎖骨のあたりから緩く吊り下がり、胸元で一本に纏まっている。買いに行ったときに胡桃が「これがあるだけで違うから!」とこの水着を勧めた理由だ。
「ああいえ、これは胡桃が選んだもので……」
「ああ、やっぱり……」
「……そっか、三国ちゃんは選ばないだろうな」
そんなにこのネックレスには存在感と存在価値があるだろうか。しげしげと眺めるとネックレスよりも自分の胸のサイズのほうが気になったのでやめた。下着と違って、水着は、なんだかこう、世に言う寄せてあげる仕様なので、なんだか見ていて恥ずかしい。
「ってか胡桃ちゃんかっわ! いい!」
ただ、隣に胡桃がいるお陰で、視線は全部胡桃が持って行ってくれた。私もついまじまじと見てしまえば、買ったその場でも一緒だったはずなのに、想像以上に似合う姿にこっちが照れそうになってしまった。ひらひらとしたオレンジ色のレースみたいなバンドゥ(と胡桃が言っていた)は胡桃の色の白さと華奢さを際立てている。
ただ、それとお揃いのオレンジ色の花柄が入ったボトムス(と言うべきなのだろうか)の腰にはリボンがついていて、ついおそるおそる手を伸ばしてしまった。
「こ……これは……解けるの? 解くと脱げるの……?」
「これはねー、ただの飾り。紐結ばないでもちゃんとパンツの形になってるから脱げないよ、危ないでしょ」
「男のロマン潰してくるじゃん、知りたくなかった。なー、滝山」
「……僕に振らないでください」
「なー、芳喜!」
「そんなもんじゃないですか? パンツと違って水着は脱がせるようにできてないですし」
別にパンツも脱がせるようにできてないと思うんですけど……? 駿くんの耳を塞ぐべきか激しく悩んだ。
「てか三国ちゃんは浮き輪いいの」
「あるんですけど、膨らませるの面倒だなと思って」
「芳喜、膨らませてやれば?」
「いいですけど、なんで俺なんです?」
「浮き輪膨らますの疲れるじゃん、三国ちゃんがカワイソーだと思わない?」
「俺も可哀想だと気付いてほしかったですね」
「え、いや、能勢さん、そんな無理にしなくていいです……」



