ぼくらは群青を探している

 ティシャツと浴衣と、厳密にいえばさらし越しの体温。あえて夏の夜に求めるものでもないのに、それがないと震えが収まりそうになかった。肺から吐き出す息が震えている。

「ゆっくり、そう、そのまま、ゆっくりでいい」

 震えを撫でるように、背中の手のひらが動く。その体温を感じながらも、まだ肺が震えている。

「吐いたら、吸って。それもゆっくりでいいから」

 耳元の声は、知らない声かと思うほど優しい声だった。はっ、はー、す、はー、と途切れ途切れで安定しない呼吸が聞こえる。ドクリドクリドクリといつもの2倍の速さで心臓が鼓動している。それに対抗するように、ドク、ドク、と静かな心音が胸に響いてくる。雲雀くんの背中にしがみつく力が入らない。それを許すように、背中が静かに()でられている。

「息できたら、目閉じて。大丈夫、誰もお前に手出さないから」

 ゆるゆると、目を閉じた。そういえば、まるで石像のように、ずっと目を見開いたままでいてしまった気がする。やっと目を閉じることができた。
 雲雀くんの肩に顎をのせたまま、ほっと、やっと安堵の息を吐く。すー、はー、と息を吸う。呼吸が正常に戻っていた。心臓はまだドクリドクリといつもより早く動いているけれど、さっきよりマシだった。

「……落ち着いたか?」

 こくりと肩の上で首を動かした。耳には雲雀くんの声以外に、花火の音が戻って来た。温かいと感じていた体温は、じわりじわりと段々と暑いものに変わっていく。それでも離れるとまた一人になってしまう気がして、雲雀くんの背中にぎゅっと腕を回した。
 雲雀くんが少し身動ぎした。力が強すぎたのかも、と思って緩めたけれど、雲雀くんの体は私の力でぶれるほどやわでないので、きっと別の理由か、勘違いだろうと思いなおした。

「……とりあえず、昴夜と合流したいんだけど、アイツどこいるか分かる?」
「……わ、分かんない……ていうか、雲雀くんと一緒だと……」
「三国から電話きたタイミングで絡まれてな。三国が深緋っぽいヤツって電話で言ってたから、さっさと片付けて探そうってことになって二手に分かれて、俺は池田を見つけて、……んで、今」

 ぽんぽん、と背中を撫でるように叩かれた。私が腕に力を込めたせいかもしれない。
 雲雀くんは私の耳元で舌打ちする。

「マジでアイツにケータイ持たせないとどうにもなんねーな。池田には動くなつっといたし、昴夜も三国が見つかんないって分かったら俺が探してたほうに行くだろうけど……」
「……陽菜は? 大丈夫、だった?」
「なんも問題なかった。なんか片っ端から友達に連絡して能勢さんの連絡先聞こうとしてたらしい。まあ、俺が先に見つけたとはいえ、英断」

 群青のOBを名乗った2人組は、陽菜を狙い撃ちした。私と陽菜が、桜井くんと雲雀くんと一緒にお祭りにいると知っているのは、終業式の日に教室に来ていた蛍さん達、つまり群青の先輩達だけ。その先輩達に、私は、九十三先輩を通じて居場所を伝えていた。

「この状態で深緋の連中に出くわすと面倒だし、まず蛍さんに電話──」
「待って」

 やっと、思考が戻ってきた。(もや)がかかって、()びついてしまったかのように回らなかった思考がやっと回り始めた。雲雀くんの背中から手を離し、電話をかけようとしていたその手を掴んで止めた。突然|覚醒(かくせい)した私に雲雀くんは目を丸くしている。

「先輩達は信用できない。先輩達っていうか……、特定の、先輩」
「……何?」