ぼくらは群青を探している

「笹部くんのほうがカーストが上に見えるってこと?」
「カーストってなに?」
「……ヒエラルキー、というか。人気度……とはちょっと違うな、クラスの中心人物っていうか」
「あー、なるほど。そうそう、そんな感じ。ほら笹部、胡桃ちゃんと一緒に夏祭り行くくらいには|カステー(・・・・)が高いんだろ」
「カーストね」

 うーん、とまた考え込んだ。桜井くんと雲雀くんはスクールカーストとかそういうものを超越した次元にいるから、カースト上位に物申す勇気みたいなものがあったわけではないと思うのだけど。でもそういう規格を超越できること自体が格好いいといえば、それはそうかもしれない。

「でもなー、雲雀はぶどう飴の食い方がイケメンだったなー。あれあたしもやられてー」
「カステラ、手にもって食べさせてあげればよかったのに」
「え、それ指まで食われるヤツだろ。ヤバ。キュン死ぬ。やればよかったけどあたしだったらきっとやってくれない!」

 そんな与太話(よたばなし)をだらだらとして、どのくらい経っただろう。トイレの順番が回ってくる少し前にメールを確認すると、九十三先輩から「いま正門」「いま東駅」「いま一色駅」と逐一(ちくいち)居場所を、しかも徐々に近づいていることを知らせるメールが来ていた。どこのホラーのメリーさんだろう。無視して「私達は紅鳶神社の休憩所です。先輩方が着く頃も境内にいると思います」と返事を打った。

「例の九十三先輩? 群青の先輩ら、本当にお前のこと大好きだよなー」
「女子に飢えているのでは?」
「モテそうな先輩もたくさんいるじゃん、九十三先輩とか。あと能勢さんと蛍さんは普通にモテるだろ」

 パチンと携帯を閉じながら、そっと思考を巡らせる。群青の先輩達が、もし、私を”大好き”に見えるのだとしたら、それは先輩達側になにか思惑があって、それを(おお)い隠すためのものじゃないだろうか。先輩達に“大好き”なんて思われる理由はないのだから。
 でも、その答えを探すためにはピースが足りないのだ。なにか一つでもいいと思うのだけれど、なにか一つ、群青の存在理由でも蛍さんの家族構成でも能勢さんのお姉さんのことでもなんでもいい、なにか一つヒントがあれば思考は先に進むはず……。

「……陽菜って、能勢さんの兄弟構成とか知ってる?」
「なに急に。姉いるんだろ、やっぱ姉いる弟が一番モテるって本当なんだな」
「そのお姉さんっていくつ離れてるの?」
「さあ? でも灰桜高校(はいこう)の3年に能勢なんていないし、2歳は離れてんじゃね?」

 ……さすがに死んだなんて噂はないらしい。噂になるものではないし、陽菜から情報を聞くには限度がありそうだ。

 トイレを出ると、陽菜の姿がなかった。前後に並んでいたとはいえ、トイレに行くまでには時間差があったし、出てくるタイミングまで同じというわけにはいかない。
 もしかして休憩所から出たのだろうか、と辺りを見回しながら出口に向かっていると、出口に陽菜の浴衣が見えた。ただ、同時に桜井くんと雲雀くんでない男子が2人いるのも分かった。
 ナンパだ……。私が行くより桜井くんと雲雀くんを呼び寄せたかったけれど、2人がどこにいるのか分からなかったし、少なくとも休憩所内に金髪と銀髪は見当たらなかった。
 諦めて陽菜のもとへ向かうと「え、そうそう。3年6組の人ですよね」と妙に(ほが)らかな声が聞こえてきた。なんだなんだと近づくと、陽菜が私を振り向いて「あ!」なんて私を巻き込む予備発言をした。

「この子とか、その蛍先輩のお気に入りです」