ぼくらは群青を探している

「笹部がいうのは、英凜って昴夜とか侑生みたいな不良とつるむような子じゃなくてもっと真面目な子だったってことでしょ。でもそこは英凜のこと知らなかったあたしでも思うかも、なんでだろって」

 きっと私と笹部くんの間には微妙な空気が流れていたのだろう、間にいる胡桃が笑い飛ばした。
 でも、だから笹部くんは“認識が甘い”のだ。中学2年生のときにクラスにいた子達と桜井くんと雲雀くんは違うのだから。「不良」と(じっ)()一絡(ひとから)げにする、その分類と認識と評価が甘すぎる。
 笹部くんなんかより、2人のほうがよっぽど話が通じやすいし話が合うなんて、笹部くんは考えもしない。

「……さあ、隣の席だからじゃないかな」

 そういうのをわざわざ説明するのが面倒くさいから、笹部くんは面倒くさいのだ。
 その私の回答を、笹部くんは会話の放棄とみることができたのだろうか。眉を顰めていた笹部くんがもう一度口を開こうとしたとき「……なにこれ」フライドポテト片手に不機嫌そうな雲雀くんが戻ってきた。胡桃以外の3人は「ゲッ」とでも聞こえてきそうな顔で背後の雲雀くんを振り向き、そのまま飛びのいた。次は胡桃を見た雲雀くんが「ゲッ」と顔をしかめる番だ。

「なんだ牧落か……」
「なんだってなに、侑生まで。あ、侑生も写真撮ろうよ」
「いや俺はいい」
「池田は?」
「まだ並んでた。つかマジでなんの集まりだ、これ」

 雲雀くんの機嫌はすごぶる悪かった。もしかして並んでいる間に不機嫌になったのだろうか。

「なんかそこでばったり会って。つか結局誰なんだっけ、胡桃のクラスメート?」
「そうそう。みんな1組の特別科。笹部──は知り合いなんでしょ、あとは……」
「笹部?」

 胡桃が残り2人の男女を紹介する前に、雲雀くんの怪訝(けげん)な声が挟まった。その目はじろじろと笹部くんを見て……「ああ、お前がね」と鼻で笑った。笹部くんの顔は当然「は?」とでも聞こえそうにしかめられたけど、雲雀くんは無視して私にフライドポテトを差し出す。

「三国、食う?」
「た……食べる……」

 けど、今の笹部くんに対する(あざけ)りはなに? 困惑しているのはきっと私だけではないはずだ、が、雲雀くんに逆らえるのはここにいる中では桜井くんだけだ。そしてその桜井くんは「えー俺は? 俺も食べたい」とやはり無視。

「英凜ーっ」そこに飛び込んできた明るい声は陽菜のもので「ごめんめっちゃ並んでた! でもおじさんがカステラサービスくれた! やっぱあたしって可愛いからかな!」と本当にこの場にそぐわない明るいことを言ってくれた。そして時間差で胡桃達の存在に気が付き「え、胡桃ちゃんじゃん、やば、死ぬほど可愛くね!?」とどこぞの群青の先輩のような本音を口走る。

「ありがと! めっちゃ気合入れたから!」
「マジか。いや気合入れてなくてもめっちゃ可愛いっしょ。浴衣美少女コンテストあるじゃん、あれ出ないの?」
「人前に立つの向いてないから。池田さん、だっけ? 池田さんも浴衣可愛いよね」
「えへー、でしょー、このためにあたしも気合入れて買った」

 あの2人は自己肯定レベルが同じ、と。私だったら可愛いと言われてもそうでしょうとは言えない。

「え、つか笹部じゃん」
「あー、うん」

 そして陽菜はようやく笹部くんの存在に気が付いた。陽菜はポッカリとその口を丸くして「えー、マジか、なんかイケメンになってね?」と笑いながら遠慮なくその肩を小突いた。