その記憶が完全に想起されるとマズイことを口走られる──! どうにか誤魔化したかったけれど、私が下手に口を出すと私と結びつけてしまう危険がある。
内心|狼狽えながら桜井くんと笹部くんを見比べていたけど、笹部くんが「さあ、ないけど……。人違いだと、思うけど……」と妙に自信なさそうな声で、なんなら少し視線を彷徨わせながら先に答えた。
「笹部、東中だよ。いま野球部だし、昴夜と接点ないでしょ」
「あー、ないな。マジで全然ない。てか英凜と同中──」
「うん、中2のときに同じクラスだった」
桜井くんが思い出しそうになったのを察知して慌ててセリフをかぶせた。桜井くんは一瞬止まって「あー!」とでも言いたげにその口を丸く開けて、そして閉じた。偉い。
が、胡桃はそうはいかない。「あれ、そうなんだ。全然元クラスメイトって感じじゃないね」と私と笹部くんを見比べる。
「英凜、昴夜と侑生と仲良いし、男子とも普通に友達のタイプなんだと思ってた」
そうですね、2人と同じとまではいかずとも、外部からは笹部くんとそれなりに仲が良いと言われる程度の友達|でした(・・・)──なんて口が裂けてもいえない。
「そうでもない。三国、クラスの男子とあんま喋んなかったし。俺と川西くらいじゃねーの」
当時の夏祭りメンバーの1人でもある川西くん……。この場にいなくてよかった、いたら関係者が揃い踏みで気まずいに違いない。
「てか三国ってあの桜井と付き合ってんだ、知らなかった」
……はい?
ただでさえ気まずい状況なのに、笹部くんが意味の分からないことを口走ったせいで、笹部くんにますます変な視線を向ける羽目になってしまった。
いやでも確かに、私と桜井くんが2人だけで並んでいるとそう見えなくはない……か……? 雲雀くんと陽菜も一緒に来ているなんて、笹部くんからしたら知らないことだし……。
「……雲雀くんと陽菜も来てるけど」
「うわダブルデートか」
うわってなんだ……。げんなりしてしまって、否定する気が起きなかった。ただなぜこの遣り取りでげんなりとまでしてしまったのかは自分でも分からない。
間に立っていた胡桃は「え? なに? そうなの?」と私達を見比べる。
「だったらちゃんと教えてよ!」
「いや付き合ってないけど……」
桜井くんの声もどこかげんなりしている気がした。最近の桜井くんは胡桃と付き合っている噂ばかり聞かされているから、相手が私でも誰でも、いい加減にしてほしい話題なのだろう。
そんな桜井くんをじろじろと見ていた笹部くんの視線が私に向いた。
「……池田はともかく、三国って桜井とか雲雀とつるむようになったんだ。普通科だし、なんか変わったな」
「2人とも高校に入るまで知り合いじゃなかったんだから、いま友達でいることが私の変化をなぜ理由づけるのか理解できないんだけど」
「え、いやだからさあ……」
ああ、そうだ、思い出した。笹部くんはいつもこうして、私と会話が噛み合わないのだ。たとえるなら、私が投げたボールを、笹部くんはキャッチした後に、それを置いて、それなのにあたかも私が投げたボールだったかのような顔をして別のボールを持ち直して投げ返してくるだけなのだ。
やっぱり“話が合わない”なんてありふれた理由で私達はクラスメイト以上になることはなかったのだ。なんだか一人で納得した。
内心|狼狽えながら桜井くんと笹部くんを見比べていたけど、笹部くんが「さあ、ないけど……。人違いだと、思うけど……」と妙に自信なさそうな声で、なんなら少し視線を彷徨わせながら先に答えた。
「笹部、東中だよ。いま野球部だし、昴夜と接点ないでしょ」
「あー、ないな。マジで全然ない。てか英凜と同中──」
「うん、中2のときに同じクラスだった」
桜井くんが思い出しそうになったのを察知して慌ててセリフをかぶせた。桜井くんは一瞬止まって「あー!」とでも言いたげにその口を丸く開けて、そして閉じた。偉い。
が、胡桃はそうはいかない。「あれ、そうなんだ。全然元クラスメイトって感じじゃないね」と私と笹部くんを見比べる。
「英凜、昴夜と侑生と仲良いし、男子とも普通に友達のタイプなんだと思ってた」
そうですね、2人と同じとまではいかずとも、外部からは笹部くんとそれなりに仲が良いと言われる程度の友達|でした(・・・)──なんて口が裂けてもいえない。
「そうでもない。三国、クラスの男子とあんま喋んなかったし。俺と川西くらいじゃねーの」
当時の夏祭りメンバーの1人でもある川西くん……。この場にいなくてよかった、いたら関係者が揃い踏みで気まずいに違いない。
「てか三国ってあの桜井と付き合ってんだ、知らなかった」
……はい?
ただでさえ気まずい状況なのに、笹部くんが意味の分からないことを口走ったせいで、笹部くんにますます変な視線を向ける羽目になってしまった。
いやでも確かに、私と桜井くんが2人だけで並んでいるとそう見えなくはない……か……? 雲雀くんと陽菜も一緒に来ているなんて、笹部くんからしたら知らないことだし……。
「……雲雀くんと陽菜も来てるけど」
「うわダブルデートか」
うわってなんだ……。げんなりしてしまって、否定する気が起きなかった。ただなぜこの遣り取りでげんなりとまでしてしまったのかは自分でも分からない。
間に立っていた胡桃は「え? なに? そうなの?」と私達を見比べる。
「だったらちゃんと教えてよ!」
「いや付き合ってないけど……」
桜井くんの声もどこかげんなりしている気がした。最近の桜井くんは胡桃と付き合っている噂ばかり聞かされているから、相手が私でも誰でも、いい加減にしてほしい話題なのだろう。
そんな桜井くんをじろじろと見ていた笹部くんの視線が私に向いた。
「……池田はともかく、三国って桜井とか雲雀とつるむようになったんだ。普通科だし、なんか変わったな」
「2人とも高校に入るまで知り合いじゃなかったんだから、いま友達でいることが私の変化をなぜ理由づけるのか理解できないんだけど」
「え、いやだからさあ……」
ああ、そうだ、思い出した。笹部くんはいつもこうして、私と会話が噛み合わないのだ。たとえるなら、私が投げたボールを、笹部くんはキャッチした後に、それを置いて、それなのにあたかも私が投げたボールだったかのような顔をして別のボールを持ち直して投げ返してくるだけなのだ。
やっぱり“話が合わない”なんてありふれた理由で私達はクラスメイト以上になることはなかったのだ。なんだか一人で納得した。



