ぼくらは群青を探している

 ケチくさい計算をすれば、300円で買ったぶどう飴の200円分を桜井くんと雲雀くんが食べてしまったということになるということだ。実際、3分の1しか食べることができなかったのは残念な気持ちもあるけど、雲雀くんと桜井くんは後から3分の2の埋め合わせをしてくれると分かっていたので損した気持ちはない。

「でもぶどう飴は私の希望で買ったものだし。雲雀くんが買ったものを分けてくれれば」
「……あっそ」

 私達がそんな話をする横で桜井くんは早速焼きそばを買って戻ってきた。ご丁寧に割りばしを2本持っていて「英凜も食うだろ?」と早速3分の1のお返しをしてくれるつもりらしい。

「陽菜は?」
「気変わったって、カステラ並んでる。焼きそばの隣」
「俺、フライドポテト買ってくる」
「んじゃここいるぞ」

 ちょうど屋台の裏に駐車場のスペースがあったので、私と桜井くんだけそこへ逃れる。桜井くんは焼きそばのパックを左手に、右手に割りばしを持ち、両者を見比べて「……箸が割れない!」と愕然(がくぜん)とするのでパックを一度引き取った。本当に弟みたいだ。

「ありがとー」
「きっとこういうのって、2人だったら雲雀くんの役目なんだろうね」
「あー、うん、そうだな。なんでだろうな、俺達全く同じ年ってことになるのに。妹いるから違うのかな」
「……私、雲雀くんが妹と離れて暮らしてるって知らなかった」

 桜井くんから焼きそばのパックを受け取りながら、ついさっき犯した間違いを呟いた。でも桜井くんは「あー、侑生、言ってなかったんだ?」といつもの調子だ。

「でもそっか、離婚って友達に話すタイミングないよな」
「……本当に配慮が足りなかったと思うんだけど、妹とお祭り行かないのとか聞いちゃって……」
「別にいいんじゃん? 侑生も、別に英凜なら怒んないっしょ」
「そりゃ雲雀くんは優しいから怒ったりはしなかったけど……」

 怒ったというか、傷ついてないかのほうが気になるんだけどな……。うーん、と割れていない割り箸と焼きそばパックを持ったまま首を(かたむ)けていると、桜井くんが私の手から割り箸を引き取って割ってくれた。別にそこに困って首を傾けていたわけではないのだけど、確かに片手では割れなかったので助かった。

「普段の情報からいくらでも読み取れたんじゃないかと反省して……」
「え、無理だろそんなの、侑生ってそういうの言うタイプじゃないし。英凜には懐いてんだから気にすることないって」ぱたぱたと桜井くんは手を横に振った後にハッとした顔つきになって「どっちかいうと侑生が英凜にあーんしてもらうくらい懐いてることのほうが気にしたほうがいい。アイツ、手負いの(けもの)みたいなもんだから。あんまり気に入られると食われるよ」
「別にあーんはしてないけど……」

 あと食われるってなんだ、獣なんてもののたとえなのに。でもぶどう飴を差し出したのは冗談半分だったというか、雲雀くんなら私の手頭(てず)からではなく串を受け取って食べると思っていたので、確かにあれは予想外だった。その意味では懐かれていると自信を持ってもいいのかもしれない。

「でも……そうだね、手負いの獣か……胡桃には懐かなかったんだもんね」
「まあ胡桃のとこは両親揃ってるし、なんか分かり合えねーって思うんじゃん? 俺もいうて母親いないし」
「でもそれでいったら私は揃ってるし……。なんなら、おばあちゃんの家にいるのは両親が心配した結果だし……」