ぼくらは群青を探している

「確かに……!」
「ってことは俺も伸びたな。173センチくらいありそう」
「見下ろしてんじゃねーよ!」
「ねー、桜井、英凜とあたしの写真撮ってよ」
「私はいいから」
「だからお前本当にそういうところ!」

 そうは言われても写真は苦手なのだ。桜井くんが陽菜のケータイで写真を撮った後に「俺もー」「んじゃ英凜と撮ってやるよ」「いやだから私はいい」「池田と撮ったんだから俺とも撮ってよ!」なぜか桜井くんとも写真を撮る羽目になった。雲雀くんは一人だけ終始無言だ。

「侑生も撮れば?」
「いや別にいい」

 甚平姿でりんご飴を(かじ)る桜井くんとティシャツ姿で突っ立っている雲雀くんとの落差がすごい。こんなにもお祭りの楽しみ方が対象的な親友がいるのかとさえ思える。

「……雲雀くん、ぶどう飴食べる?」
「……なんで?」
「なんか私達だけ食べてるから」
「雲雀って甘いもの嫌いなの?」
「別に嫌いじゃねーけど」
「むしろ甘党だと思ってた。ほら、この間もドーナツとお饅頭(まんじゅう)食べてたし」
「まあ普通に好きだけど甘党ってほどじゃない」
「じゃ1個あげるよ」

 ぶどう飴は3つ連なっているので、1個というあげ方ができる。はい、と(そで)を持ちながら差し出すと雲雀くんの口がきゅっと引き結ばれた。

「侑生、何照れてんの。気持ち悪ッ」
「照れてねーよ」

 声がいつもより数段冷ややかだった。でもそんなことを言われると私も照れるのでやめてほしい。

「私は食べかけ気にしないから」
「英凜、食べかけって言うのやめよ!」
「そうだぞお前! 男子憧れの間接チューって言えよ!」
「いやそれ言われたら俺と侑生がキモいからやめよ!」
「どんどん食いにくくなるだろやめろ」

 苛立った雲雀くんはもう食べないのかと思ったけれど、おもむろに私の左手ごと掴むと──その熱にドッと心臓が跳ねる──そのまま引き寄せてぶどうを1個齧(かじ)った。

「さんきゅ」

 私の手を離し、ぶどうを咀嚼(そしゃく)しながら口の端の飴を親指でぬぐう雲雀くんに、陽菜が肩を震わせる。

「雲雀……お前マジイケメンだな……!」
「なにがどうだよ」
「俺もそういうイケメンな食い方したい」
「桜井くんもぶどう飴食べる?」
「食べる食べる」

 喜び勇んだものの、ぶどうが串の根元に近くて、雲雀くんのように串の上から齧ることはできない。桜井くんが「む……」と首を(ひね)るのでそのまま串を渡すことになった。桜井くんは「わーい」と串を持って横から(かじ)り「……いやそういうことじゃなくない?」当初の目的が達成されていないことに気付いたらしい。でもその口は満足気に動いている。

「……桜井くんはそのままで変わらないでね」
「え、なに、どういう意味」
「つか三国、3分の1しか食ってなくね」
「りんご飴を一口あげるのとぶどう飴のぶどう1個あげるのって違うよな。なんかぶどう飴1個あげれるのって心広い気しない?」
「あー、分かる。あたしあげらんねー」
「池田の心狭ッ」

 桜井くんと陽菜は揃って声を上げて笑いながら「あ、焼きそば食いたい。俺買ってくる」「あー、あたしも」と次の屋台へ行ってしまった。あの2人、精神年齢が近いのかもしれない。

「三国、なんか食いたいもんある」
「いま食べたばっかりだから別に。なんで?」
「ぶどう飴、3分の1しか食ってなくねって話だよ」