駅構内に人の熱気が充満していたせいか、外に出ると少し涼しく感じた。それでもまだ少し暑いので、扇子を引っ張り出してパタパタと扇いで髪をそよがせていると、にゅっと桜井くんが覗き込むように顔を出す。その顔に向かってパタパタと扇ぐと、金髪をふわっと浮かせながら「あー涼しい」と気持ちよさそうに頬を緩めた。
「……胡桃のいうとおり、桜井くんって弟っぽいね」
「えー。英凜、誕生日いつなの」
「2月18日……」
「え、全然俺のほうが年上じゃん。俺、9月20日だもん。ちなみにねー、侑生と一緒」
そんな偶然があるのか? 担がれているのではないかと思ったけれど、頭には雲雀くんのメアドの文字列が浮かんだ──0920という数字が入っている。4桁の数字といえば誕生日と相場は決まっているので間違いない。
「……そんなことあるんだ」
「それが理由で仲良くなったみたいなところある」
「ないだろ」
そうだとして2人は何がきっかけで仲良くなったのだろう。少し気になったけれど、陽菜を拾ったのでその話は終わった。
陽菜は「もー、電車最悪だったね」とどこかで貰った団扇で風を呼ぶ。セリフとは裏腹に、肩につく程度のショートヘアが楽しそうに跳ねた。
「帰りもっと酷いんだろうなー。帰りは歩こ」
「池田と英凜がそれでいいならいいけど。浴衣だと歩けなくない?」
「電車よりマシマシ」
そうやって駅からほんの1分歩いたところから、紅鳶神社までの道のりを照らすように屋台が並び始めていた。陽菜は「なに食べよっかなー」と早速屋台を物色し始める。
「お、英凜、りんご飴食べようぜ」
「やだ」
「お前そういうとこだぞマジで! 一人でも食べるからいいけど!」
憤慨した陽菜はカゴ巾着をぐるぐると振り回しながら「あっち!」とりんご飴と書かれた屋台を指さし、爪先も向ける。でもりんご飴は見た目ほどおいしくないのだ。
「ぶどう飴なら食べる」
「祭りなんだからりんご飴だろ」
「俺もりんご飴かなー。侑生も食お」
「中のりんごが不味いから要らない」
「あ、分かる」
「英凜と雲雀って似た者同士だな。雲雀だけ甚平着てないし」
「普通持ってなくね」
「桜井は持ってるじゃん」
「俺はじいちゃんが買ってくれたから。でもなんか今年着たら小っちゃくなったんだよなあ」
屋台に並びながら、桜井くんはつんつるてんの袖を窮屈そうに引っ張った。もともと七分袖くらいのデザインだろうとは思うのだけれど、本人がそう言うのならそうだろう。
「桜井くん、背伸びたよね。最近測った?」
「え、マジ? 全然測ってない。侑生、背中くっつけて」
「やだよこんなところで」
「雲雀くんのほうが高いのは変わってないよ」
「差が縮まったかなと思って」
「雲雀くんも伸びてるよ」
「むむ。んじゃ帰って測ろ」
桜井くんは困ったように下唇を突き出した。その手ではお手玉のように二つ折りの財布が跳ねる。
「身長なー、せめて170センチは欲しいなー」
「桜井はチビだもんなー」
「池田がでかいんだろ! 俺と変わんねーじゃん!」
「まあ165センチはちょっと成長したな」
「ちょっと、だいぶ、かなり」
桜井くんは不満そうに復唱しつつ、徐々に程度を上げた。隣では余裕の雲雀くんが鼻で笑う。
「でも桜井くん、いま陽菜と変わらないから、167センチくらいにいはなったんじゃない? 今日の陽菜は下駄履いてるし、桜井くんはサンダルだし」
「……胡桃のいうとおり、桜井くんって弟っぽいね」
「えー。英凜、誕生日いつなの」
「2月18日……」
「え、全然俺のほうが年上じゃん。俺、9月20日だもん。ちなみにねー、侑生と一緒」
そんな偶然があるのか? 担がれているのではないかと思ったけれど、頭には雲雀くんのメアドの文字列が浮かんだ──0920という数字が入っている。4桁の数字といえば誕生日と相場は決まっているので間違いない。
「……そんなことあるんだ」
「それが理由で仲良くなったみたいなところある」
「ないだろ」
そうだとして2人は何がきっかけで仲良くなったのだろう。少し気になったけれど、陽菜を拾ったのでその話は終わった。
陽菜は「もー、電車最悪だったね」とどこかで貰った団扇で風を呼ぶ。セリフとは裏腹に、肩につく程度のショートヘアが楽しそうに跳ねた。
「帰りもっと酷いんだろうなー。帰りは歩こ」
「池田と英凜がそれでいいならいいけど。浴衣だと歩けなくない?」
「電車よりマシマシ」
そうやって駅からほんの1分歩いたところから、紅鳶神社までの道のりを照らすように屋台が並び始めていた。陽菜は「なに食べよっかなー」と早速屋台を物色し始める。
「お、英凜、りんご飴食べようぜ」
「やだ」
「お前そういうとこだぞマジで! 一人でも食べるからいいけど!」
憤慨した陽菜はカゴ巾着をぐるぐると振り回しながら「あっち!」とりんご飴と書かれた屋台を指さし、爪先も向ける。でもりんご飴は見た目ほどおいしくないのだ。
「ぶどう飴なら食べる」
「祭りなんだからりんご飴だろ」
「俺もりんご飴かなー。侑生も食お」
「中のりんごが不味いから要らない」
「あ、分かる」
「英凜と雲雀って似た者同士だな。雲雀だけ甚平着てないし」
「普通持ってなくね」
「桜井は持ってるじゃん」
「俺はじいちゃんが買ってくれたから。でもなんか今年着たら小っちゃくなったんだよなあ」
屋台に並びながら、桜井くんはつんつるてんの袖を窮屈そうに引っ張った。もともと七分袖くらいのデザインだろうとは思うのだけれど、本人がそう言うのならそうだろう。
「桜井くん、背伸びたよね。最近測った?」
「え、マジ? 全然測ってない。侑生、背中くっつけて」
「やだよこんなところで」
「雲雀くんのほうが高いのは変わってないよ」
「差が縮まったかなと思って」
「雲雀くんも伸びてるよ」
「むむ。んじゃ帰って測ろ」
桜井くんは困ったように下唇を突き出した。その手ではお手玉のように二つ折りの財布が跳ねる。
「身長なー、せめて170センチは欲しいなー」
「桜井はチビだもんなー」
「池田がでかいんだろ! 俺と変わんねーじゃん!」
「まあ165センチはちょっと成長したな」
「ちょっと、だいぶ、かなり」
桜井くんは不満そうに復唱しつつ、徐々に程度を上げた。隣では余裕の雲雀くんが鼻で笑う。
「でも桜井くん、いま陽菜と変わらないから、167センチくらいにいはなったんじゃない? 今日の陽菜は下駄履いてるし、桜井くんはサンダルだし」



