「まあ英凜には聞かねーよ、お前そういう話全然ダメだし」陽菜はシッシと手を振り「あーでも、夏祭り、桜井のこと誘わなかったんだもんな。んじゃやっぱ違うのかな」前言を撤回した。
「誘われるの待ってたんじゃねーの」これに対し雲雀くんはすぐに仮説を打ち立てて「牧落、プライド高えだろ。さすがにあんだけアピールしといて夏祭り誘われない選択はなかったんじゃね」
なるほど、そういう可能性もあるのか……。でも牧落さんのプライドが高いというのは初耳だ。少なくとも私が見ている牧落さんはそうではない。雲雀くんにはそう見えているのだろうか……。
「今まで1回も誘ったことないのに? ないない。つか、俺がケータイ持ってないから5組来てるだけだろ、会うたびに面倒だからケータイ買えって言われてるし。あーあ」
メンドクセ、と言いながら桜井くんは椅子の背にもたれ、そのまま首をのけぞらせる。
「胡桃にとっととカレシできればいいのに。侑生とか付き合ったら?」
「よくそんな嫌がらせを口に出せるな」
「雲雀は贅沢だな。あんだけ可愛かったらみんな付き合いたいもんなんじゃないの」
「数学できない女は無理」
「え、やば、あたし数学28点だったから雲雀の対象外だ」
陽菜は明るく笑い飛ばしながら「てかあたし、昼食べなきゃ。部活間に合わね」時間に気付いて慌てて立ち上がり「んじゃ! 夏祭り、時間メールして!」と走って出て行った。桜井くんと雲雀くんも時計を見て「どおりで腹減ったわけだな」と片付けを始める。
「なんか食って帰る?」
「ああ。三国も食うだろ?」
「あ、うん。でも──」
「もうばあちゃんが飯作ってる?」
「ううん、それは大丈夫なんだけど」
実は終業式後に桜井くんと雲雀くんとお昼を食べることは期待していたので、おばあちゃんには「お昼がいるときだけ連絡する」と言って出てきてしまっていた。
「生物の課題ノート、出してなかったから。佐久間先生のところ行ってくる」
「もう成績ついたんだから出さなくてよくない?」
確かに……。桜井くんの指摘に目から鱗が落ちた。でも出せと言われたら出さなければいけない気がする。
「つか英凜、ノート出してないのに生物『5』なの? 贔屓じゃん」
「5組いたら三国は見た目だけで『5』つくだろ」
「やっぱり贔屓じゃん」
「寝息立てて寝てる桜井くんには言われたくないかな……」
「だって生物、大体昼飯の後なんだもん」
「んじゃとっとと行ってきたら。俺らここで待っとくから」
「生物教室行くから、そのまま正門出たほうが早いけど」
「外暑いからここいる」
それもそうか、と桜井くんの本能的な発想に納得し、カバンは持たずにノートだけ持つことにした。教室を出て扉を閉めるとき、背後からは「なに食う? いま俺お好み焼き食べたい」「このクソ暑いのに?」「いいじゃん、どうせお店の中は涼しいし」と聞こえてきた。お好み焼き、雲雀くんは文句を言ってたけど私は賛成だ、早く食べたい。お陰で少し速足になってしまう。
そうして、パタパタと上履きの音をさせながら生物教室から戻る途中「あ、えりー!」下駄箱前で呼び止められたと思って振り向くと牧落さんがいた。その肩にはラケットケースが、手にはローファがあるので、きっと今から部活へ行くのだろう。
「……牧落さん」
「胡桃でいいって言ってるじゃん、てか胡桃って呼んでよ。牧落さん呼びってなんかダサくない?」
「誘われるの待ってたんじゃねーの」これに対し雲雀くんはすぐに仮説を打ち立てて「牧落、プライド高えだろ。さすがにあんだけアピールしといて夏祭り誘われない選択はなかったんじゃね」
なるほど、そういう可能性もあるのか……。でも牧落さんのプライドが高いというのは初耳だ。少なくとも私が見ている牧落さんはそうではない。雲雀くんにはそう見えているのだろうか……。
「今まで1回も誘ったことないのに? ないない。つか、俺がケータイ持ってないから5組来てるだけだろ、会うたびに面倒だからケータイ買えって言われてるし。あーあ」
メンドクセ、と言いながら桜井くんは椅子の背にもたれ、そのまま首をのけぞらせる。
「胡桃にとっととカレシできればいいのに。侑生とか付き合ったら?」
「よくそんな嫌がらせを口に出せるな」
「雲雀は贅沢だな。あんだけ可愛かったらみんな付き合いたいもんなんじゃないの」
「数学できない女は無理」
「え、やば、あたし数学28点だったから雲雀の対象外だ」
陽菜は明るく笑い飛ばしながら「てかあたし、昼食べなきゃ。部活間に合わね」時間に気付いて慌てて立ち上がり「んじゃ! 夏祭り、時間メールして!」と走って出て行った。桜井くんと雲雀くんも時計を見て「どおりで腹減ったわけだな」と片付けを始める。
「なんか食って帰る?」
「ああ。三国も食うだろ?」
「あ、うん。でも──」
「もうばあちゃんが飯作ってる?」
「ううん、それは大丈夫なんだけど」
実は終業式後に桜井くんと雲雀くんとお昼を食べることは期待していたので、おばあちゃんには「お昼がいるときだけ連絡する」と言って出てきてしまっていた。
「生物の課題ノート、出してなかったから。佐久間先生のところ行ってくる」
「もう成績ついたんだから出さなくてよくない?」
確かに……。桜井くんの指摘に目から鱗が落ちた。でも出せと言われたら出さなければいけない気がする。
「つか英凜、ノート出してないのに生物『5』なの? 贔屓じゃん」
「5組いたら三国は見た目だけで『5』つくだろ」
「やっぱり贔屓じゃん」
「寝息立てて寝てる桜井くんには言われたくないかな……」
「だって生物、大体昼飯の後なんだもん」
「んじゃとっとと行ってきたら。俺らここで待っとくから」
「生物教室行くから、そのまま正門出たほうが早いけど」
「外暑いからここいる」
それもそうか、と桜井くんの本能的な発想に納得し、カバンは持たずにノートだけ持つことにした。教室を出て扉を閉めるとき、背後からは「なに食う? いま俺お好み焼き食べたい」「このクソ暑いのに?」「いいじゃん、どうせお店の中は涼しいし」と聞こえてきた。お好み焼き、雲雀くんは文句を言ってたけど私は賛成だ、早く食べたい。お陰で少し速足になってしまう。
そうして、パタパタと上履きの音をさせながら生物教室から戻る途中「あ、えりー!」下駄箱前で呼び止められたと思って振り向くと牧落さんがいた。その肩にはラケットケースが、手にはローファがあるので、きっと今から部活へ行くのだろう。
「……牧落さん」
「胡桃でいいって言ってるじゃん、てか胡桃って呼んでよ。牧落さん呼びってなんかダサくない?」



