「いやガキの頃の話だしね、好きだったとは……うーんでも男がそういうこと言うのカッコ悪いな」
うーーーん、と桜井くんは長い唸り声をあげた。
「……結婚しようって言われても悪くないくらいには好きだったってこと?」
「悪くない……。なんかその言い方も俺が悪者っぽいな。むむ」
「でも男子はそういうものだって荒神くんが言ってた」
「アイツ三国に何吹き込んでんだ?」
「でも舜の言うことは男の真理かもな。男なんてみんな好きって言われたら好き」
「私、桜井くんのこと好きだよ」
ゴホッと桜井くんが盛大に噎せた。そのままゲッホゴッホと激しく咳き込む。
「……ごめん、冗談だよ?」
「ジョウダン!? 冗談でそんなこと言うの!? 三国が!? ゲッホ、動揺して三国呼びに戻っちゃった」
「……三国、お前声のトーン変えないのやめろ。マジなのか冗談なのか分かんねーから」
雲雀くんにも白い目を向けられて少し反省した。どうやらいまは冗談を口にしていい場面ではなかったらしい。お詫びの印に、桜井くんのグラスに冷たいお茶を注いだ。
「……ごめん、言われてみたからつい実験したくなって……」
桜井くんはすぐにそのグラスを手に取ってお茶を飲み干して「──実験って言った!」再び抗議した。
「……コイツ馬鹿だから。んなこと言って本気になられたらどうすんだ」
「それはちょっと……」
「いま俺フラれた!? なんで!?」
「牧落さんが桜井くんを好きらしいから、他人と確執が生まれるような恋愛はしたくないっていうか……」
「カクシツ?」
「ああ、女子が好きな男は早いもん勝ちみたいにしてるヤツな」
「恋愛ってそういう頭でするもんなの? マジ?」
「あと本当に好きだと軽々しく好きって言えないと思うから、私が軽々しく好きって言うってことは冗談だと思ってくれて大丈夫」
「いまさり気なく俺に酷いこと言わなかった? ねえ? つまり俺のこと別に好きじゃないってことだよね? ……苦笑いやめろ」
いつものおどけた口調が一瞬だけ厳しくなったせいでスッと表情を引っ込める羽目になった。桜井くんも怒らせてはいけないタイプかもしれない。
「もーやだよー今日、めちゃくちゃ俺のこといじめるじゃん」
「……いじめるのは好きな子だからかもしれな──」
「本ッ当にその冗談やめて。俺マジで怒るからね」
遮られたので本当に怒っているのかもしれない。桜井くんがこの手のからかいにそこまで過敏に反応するとは思っていなかった、今後は分類項目に加えておこう。
「……すいません?」
「……つか男にその手の冗談言うのやめとけ。舜とか本気にしてもしなくてもその気になるから」
雲雀くんはその手の冗談を言ってはいけない人だろうし……、なんとなく言えなかった。なぜそう直感しているのか、自分でも分からなかったけど。
「……九十三先輩にもっと冗談とか覚えたほうがいいって言われたから冗談言ってみたんだけど……」
「あの先輩も三国に何教えてんだ?」
「冗談覚えるのはいいんだけどさあ、覚える冗談の種類がね」
「あ、あと最近、九十三先輩に1日1回カッコイイって冗談を言う練習してる」
「マジであの先輩、三国に何教えてんの?」
「真面目だった娘がどうでもいい先輩に向かって毎日カッコイイ連呼してるって、英凜の親が知ったらショックで寝込みそうだな。……あ、ごめん」
桜井くんは一瞬閉口して、すぐに謝った。もしかしたら私の表情が変わってしまったのかもしれない。
うーーーん、と桜井くんは長い唸り声をあげた。
「……結婚しようって言われても悪くないくらいには好きだったってこと?」
「悪くない……。なんかその言い方も俺が悪者っぽいな。むむ」
「でも男子はそういうものだって荒神くんが言ってた」
「アイツ三国に何吹き込んでんだ?」
「でも舜の言うことは男の真理かもな。男なんてみんな好きって言われたら好き」
「私、桜井くんのこと好きだよ」
ゴホッと桜井くんが盛大に噎せた。そのままゲッホゴッホと激しく咳き込む。
「……ごめん、冗談だよ?」
「ジョウダン!? 冗談でそんなこと言うの!? 三国が!? ゲッホ、動揺して三国呼びに戻っちゃった」
「……三国、お前声のトーン変えないのやめろ。マジなのか冗談なのか分かんねーから」
雲雀くんにも白い目を向けられて少し反省した。どうやらいまは冗談を口にしていい場面ではなかったらしい。お詫びの印に、桜井くんのグラスに冷たいお茶を注いだ。
「……ごめん、言われてみたからつい実験したくなって……」
桜井くんはすぐにそのグラスを手に取ってお茶を飲み干して「──実験って言った!」再び抗議した。
「……コイツ馬鹿だから。んなこと言って本気になられたらどうすんだ」
「それはちょっと……」
「いま俺フラれた!? なんで!?」
「牧落さんが桜井くんを好きらしいから、他人と確執が生まれるような恋愛はしたくないっていうか……」
「カクシツ?」
「ああ、女子が好きな男は早いもん勝ちみたいにしてるヤツな」
「恋愛ってそういう頭でするもんなの? マジ?」
「あと本当に好きだと軽々しく好きって言えないと思うから、私が軽々しく好きって言うってことは冗談だと思ってくれて大丈夫」
「いまさり気なく俺に酷いこと言わなかった? ねえ? つまり俺のこと別に好きじゃないってことだよね? ……苦笑いやめろ」
いつものおどけた口調が一瞬だけ厳しくなったせいでスッと表情を引っ込める羽目になった。桜井くんも怒らせてはいけないタイプかもしれない。
「もーやだよー今日、めちゃくちゃ俺のこといじめるじゃん」
「……いじめるのは好きな子だからかもしれな──」
「本ッ当にその冗談やめて。俺マジで怒るからね」
遮られたので本当に怒っているのかもしれない。桜井くんがこの手のからかいにそこまで過敏に反応するとは思っていなかった、今後は分類項目に加えておこう。
「……すいません?」
「……つか男にその手の冗談言うのやめとけ。舜とか本気にしてもしなくてもその気になるから」
雲雀くんはその手の冗談を言ってはいけない人だろうし……、なんとなく言えなかった。なぜそう直感しているのか、自分でも分からなかったけど。
「……九十三先輩にもっと冗談とか覚えたほうがいいって言われたから冗談言ってみたんだけど……」
「あの先輩も三国に何教えてんだ?」
「冗談覚えるのはいいんだけどさあ、覚える冗談の種類がね」
「あ、あと最近、九十三先輩に1日1回カッコイイって冗談を言う練習してる」
「マジであの先輩、三国に何教えてんの?」
「真面目だった娘がどうでもいい先輩に向かって毎日カッコイイ連呼してるって、英凜の親が知ったらショックで寝込みそうだな。……あ、ごめん」
桜井くんは一瞬閉口して、すぐに謝った。もしかしたら私の表情が変わってしまったのかもしれない。



