「……いや、蛍さんに行けって言われてたし」
「ほんとねー、なんで俺達まで付き合わされてんだろ。永人さんに命令されなきゃ来なかったのに」
「あたしが言ってるんだから付き合ってよ」
「俺、胡桃の保護者じゃないんだよなあ」
エスカレーターの手前には、よくあるように各階のカテゴリーとショップ名が書かれている。牧落さんと桜井くんに続いてエスカレーターに上りながら、それをじっと見つめた。
「水着売り場って何階?」
「あ、見てなかった」
「……4階だったよ。イチアイ水着、だよね?」
頭の中には「一愛水着」という字が浮かんでいたけど、読めなかった。すると牧落さんが「ヒメ水着だよ」と教えてくれた。あれでヒメか……。
「初めて聞いた」
「英凜、小学校のときとかどうしてたの? 本当にスク水?」
「うん、市民プールくらいしか行かなかったし。小学校のときは海が近くになかったから、別に必要なくて……」
牧落さんのくりんとした目がパチパチと何度か瞬きした。そっか、桜井くんも私がおばあちゃんと住んでるとかそういう余計な話はしないのか……。
「……中学から一色市に引っ越してきたから」
「あ、そうなんだ、知らなかった。みんな東中の三国さんって知ってたから」
エスカレーターで2階に上ったところ。ポーズを取ったマネキンとオレンジのティシャツに同系色のチェックのショートパンツ。エスカレーターを降りたところに表を向けるようにしてずらりと並ぶ服の手前は黒。「Honey bee」をもじった店のロゴ。レディースのショップ。
「英凜ってそんな有名人なの」
「代表挨拶したのに普通科なんだもん。有名だよ」
「そんな4月の一瞬の話をいつまでも……」
「てか普通科の授業でいいの? だって授業聞いてる人なんていないでしょ?」
「うん、でも今のところ特に困ってないし」
エスカレーターで3階に上ったところ。ネイビーのスーツとピンクのブラウスを着たマネキン。その隣には水色のブラウスにオフホワイトのタイトスカートをはいたマネキン。白、黄色、水色、ピンクのブラウスがその隣に平積みになっている。ベージュを基調とした店舗。「20+」というロゴ。またレディースのショップ。
「ていうか、侑生、そろそろ機嫌直してよ」
「牧落のせいでこんだけ機嫌悪いって分かって言ってんのか、それ?」
「だからごめんって謝ったじゃん。帰っていいよとも言ったし」
「ここまで来させといて帰っていいよって本気か?」
エスカレーターで4階に上ったところ。降りたときにちょうど視界に入るように、バッグがいくつか並んでいる。水色、黄色、ピンク色。その棚の下に小物。カードケース、財布。ピンク色、黄色、白色。
「……で、その一愛水着ってどこ? てか俺と侑生このカフェで待ってていい?」
茶色い壁で囲まれたチューリーズ・コーヒー。看板は水色の背景に白色と黄色のグラデーションの飲み物。「Summer Lemon×Soda」の文字。
「そんなんじゃ来た意味ないじゃん。ちゃんと選んでよ」
「選ぶの!?」
「……本気で言ってるなら昴夜とやって、そういうの。俺帰るから」
「帰んないで! 俺が1人で選ぶことになるだけだから!」
万屋と名乗っていてもおかしくないほどなんでも雑多な小物が揃っている店。色も全体的にまばら。通りかかる人が見るところには、筆箱、手帳、カードケースの革小物が並んでいる。
「うわ、もう見た目からして入りたくない。女の水着しか置いてない」
「ほんとねー、なんで俺達まで付き合わされてんだろ。永人さんに命令されなきゃ来なかったのに」
「あたしが言ってるんだから付き合ってよ」
「俺、胡桃の保護者じゃないんだよなあ」
エスカレーターの手前には、よくあるように各階のカテゴリーとショップ名が書かれている。牧落さんと桜井くんに続いてエスカレーターに上りながら、それをじっと見つめた。
「水着売り場って何階?」
「あ、見てなかった」
「……4階だったよ。イチアイ水着、だよね?」
頭の中には「一愛水着」という字が浮かんでいたけど、読めなかった。すると牧落さんが「ヒメ水着だよ」と教えてくれた。あれでヒメか……。
「初めて聞いた」
「英凜、小学校のときとかどうしてたの? 本当にスク水?」
「うん、市民プールくらいしか行かなかったし。小学校のときは海が近くになかったから、別に必要なくて……」
牧落さんのくりんとした目がパチパチと何度か瞬きした。そっか、桜井くんも私がおばあちゃんと住んでるとかそういう余計な話はしないのか……。
「……中学から一色市に引っ越してきたから」
「あ、そうなんだ、知らなかった。みんな東中の三国さんって知ってたから」
エスカレーターで2階に上ったところ。ポーズを取ったマネキンとオレンジのティシャツに同系色のチェックのショートパンツ。エスカレーターを降りたところに表を向けるようにしてずらりと並ぶ服の手前は黒。「Honey bee」をもじった店のロゴ。レディースのショップ。
「英凜ってそんな有名人なの」
「代表挨拶したのに普通科なんだもん。有名だよ」
「そんな4月の一瞬の話をいつまでも……」
「てか普通科の授業でいいの? だって授業聞いてる人なんていないでしょ?」
「うん、でも今のところ特に困ってないし」
エスカレーターで3階に上ったところ。ネイビーのスーツとピンクのブラウスを着たマネキン。その隣には水色のブラウスにオフホワイトのタイトスカートをはいたマネキン。白、黄色、水色、ピンクのブラウスがその隣に平積みになっている。ベージュを基調とした店舗。「20+」というロゴ。またレディースのショップ。
「ていうか、侑生、そろそろ機嫌直してよ」
「牧落のせいでこんだけ機嫌悪いって分かって言ってんのか、それ?」
「だからごめんって謝ったじゃん。帰っていいよとも言ったし」
「ここまで来させといて帰っていいよって本気か?」
エスカレーターで4階に上ったところ。降りたときにちょうど視界に入るように、バッグがいくつか並んでいる。水色、黄色、ピンク色。その棚の下に小物。カードケース、財布。ピンク色、黄色、白色。
「……で、その一愛水着ってどこ? てか俺と侑生このカフェで待ってていい?」
茶色い壁で囲まれたチューリーズ・コーヒー。看板は水色の背景に白色と黄色のグラデーションの飲み物。「Summer Lemon×Soda」の文字。
「そんなんじゃ来た意味ないじゃん。ちゃんと選んでよ」
「選ぶの!?」
「……本気で言ってるなら昴夜とやって、そういうの。俺帰るから」
「帰んないで! 俺が1人で選ぶことになるだけだから!」
万屋と名乗っていてもおかしくないほどなんでも雑多な小物が揃っている店。色も全体的にまばら。通りかかる人が見るところには、筆箱、手帳、カードケースの革小物が並んでいる。
「うわ、もう見た目からして入りたくない。女の水着しか置いてない」



