「マジこのむさ苦しい男の園に胡桃ちゃんいるの最高だよな……桜井グッジョブ」
「アイツが幼馴染みじゃなきゃなあ……でも幼馴染みだからいるんだよな……くそぉ……」
「やっぱ狙い目は三国ちゃんか」
「でも三国ちゃんに手出したら雲雀と永人に殺されるよな」
「マジそれ」
……まただ。やっぱり、群青の人達にとっては――少し自意識過剰な表現かもしれないけれど――蛍さんが私を守るのが当然であるかのような認識になっている。
妹と重ねている――能勢さんの指摘をもう一度考える。妹がいるというのは、いまパラレルにされた蛍さんと雲雀くんの共通項でもある。もし私が“妹っぽい”というのであれば、そして妹がいる人にとってついつい“妹っぽい”人を心配しがちだというのなら、分からなくはない。雲雀くんは妹が危険な目に遭ったというし、蛍さんも何年も会ってないということは……。
「ってわけで、三国ちゃんもどーお?」
「英凜も行くよね!」
「え?」
九十三先輩と牧落さんに名前を呼ばれて我に返る。全く聞いていなかった。
「な……なにを……?」
「夏休み、海行こーって」
「……はあ、海なら行きます、が……」
「よっし! 永人、今の聞いたな? 三国ちゃんが自分で行くって言ったから! 俺らなーんも悪いことしてないからな!」
鬼の首を取ったように叫ぶ九十三先輩に、蛍さんは眉間に深い皺を寄せ、瞑目したままハリセンで肩を叩いている。たかが海へ行く程度のことでそんなに騒ぐ理由が分からないので、きっと私が聞いていないうちに別の遣り取りがあったのだろう。
そんな騒ぎを聞きつけた能勢さんがトントンと上段から降りてきて「なんですか、海?」と瞬時に話題を拾いながら私の前の机に手をついた。
「いいですね、梅雨明け、テスト終わりの土曜とか。誰が行くんですか?」
「俺らと胡桃ちゃんと三国ちゃん」
俺ら、と言いながら九十三先輩は他の先輩達を示した。当然桜井くんと雲雀くんも入っていて、桜井くんは「俺も?」とキョトンとしているし、雲雀くんも眉を跳ね上げる。
「俺なにも言ってませんけど」
「へーえ、じゃあいいの、俺らだけ三国ちゃんと胡桃ちゃんの水着見ちゃうよ?」
「どうせ三国はお約束でスク水以外持ってないですよ」
九十三先輩の煽りには返事をせず、雲雀くんは「なあ、三国?」と私に顔を向けた。
「いやさすがにそのお約束やったら致死の力でぶん殴る。男女不平等主義の俺でさえ許さねぇ」
九十三先輩の隣では蛍さんがハリセンの準備をしている。能勢さんは「まさか、そんな天然記念物女子高生いないですよ?」と笑う。
「ね、三国ちゃん」
「水着はスクール水着しかないです」
「…………」
「大丈夫です、海にスクール水着で行くなんてことは言い出しません。私が着るのはティシャツと短パンです」
「三国ちゃんだめ! それは本当にだめ!!」
蛍さんより誰より、九十三先輩が素早く反応すると共に激しく首を横に振った。
「なんで海で脱がない!?」
「字面やべーな」
その蛍さんの声は、牧落さんが初めて勉強会に来たときに似ていた。
「日焼けして痛いじゃないですか」
「日焼け止めってものがあるだろ!」
「それを塗る手間を考えると衣服で皮膚を覆うほうが楽でしょう」
「あーっもうやだ! 昴夜のバカさと足して2で割れよお!」
「アイツが幼馴染みじゃなきゃなあ……でも幼馴染みだからいるんだよな……くそぉ……」
「やっぱ狙い目は三国ちゃんか」
「でも三国ちゃんに手出したら雲雀と永人に殺されるよな」
「マジそれ」
……まただ。やっぱり、群青の人達にとっては――少し自意識過剰な表現かもしれないけれど――蛍さんが私を守るのが当然であるかのような認識になっている。
妹と重ねている――能勢さんの指摘をもう一度考える。妹がいるというのは、いまパラレルにされた蛍さんと雲雀くんの共通項でもある。もし私が“妹っぽい”というのであれば、そして妹がいる人にとってついつい“妹っぽい”人を心配しがちだというのなら、分からなくはない。雲雀くんは妹が危険な目に遭ったというし、蛍さんも何年も会ってないということは……。
「ってわけで、三国ちゃんもどーお?」
「英凜も行くよね!」
「え?」
九十三先輩と牧落さんに名前を呼ばれて我に返る。全く聞いていなかった。
「な……なにを……?」
「夏休み、海行こーって」
「……はあ、海なら行きます、が……」
「よっし! 永人、今の聞いたな? 三国ちゃんが自分で行くって言ったから! 俺らなーんも悪いことしてないからな!」
鬼の首を取ったように叫ぶ九十三先輩に、蛍さんは眉間に深い皺を寄せ、瞑目したままハリセンで肩を叩いている。たかが海へ行く程度のことでそんなに騒ぐ理由が分からないので、きっと私が聞いていないうちに別の遣り取りがあったのだろう。
そんな騒ぎを聞きつけた能勢さんがトントンと上段から降りてきて「なんですか、海?」と瞬時に話題を拾いながら私の前の机に手をついた。
「いいですね、梅雨明け、テスト終わりの土曜とか。誰が行くんですか?」
「俺らと胡桃ちゃんと三国ちゃん」
俺ら、と言いながら九十三先輩は他の先輩達を示した。当然桜井くんと雲雀くんも入っていて、桜井くんは「俺も?」とキョトンとしているし、雲雀くんも眉を跳ね上げる。
「俺なにも言ってませんけど」
「へーえ、じゃあいいの、俺らだけ三国ちゃんと胡桃ちゃんの水着見ちゃうよ?」
「どうせ三国はお約束でスク水以外持ってないですよ」
九十三先輩の煽りには返事をせず、雲雀くんは「なあ、三国?」と私に顔を向けた。
「いやさすがにそのお約束やったら致死の力でぶん殴る。男女不平等主義の俺でさえ許さねぇ」
九十三先輩の隣では蛍さんがハリセンの準備をしている。能勢さんは「まさか、そんな天然記念物女子高生いないですよ?」と笑う。
「ね、三国ちゃん」
「水着はスクール水着しかないです」
「…………」
「大丈夫です、海にスクール水着で行くなんてことは言い出しません。私が着るのはティシャツと短パンです」
「三国ちゃんだめ! それは本当にだめ!!」
蛍さんより誰より、九十三先輩が素早く反応すると共に激しく首を横に振った。
「なんで海で脱がない!?」
「字面やべーな」
その蛍さんの声は、牧落さんが初めて勉強会に来たときに似ていた。
「日焼けして痛いじゃないですか」
「日焼け止めってものがあるだろ!」
「それを塗る手間を考えると衣服で皮膚を覆うほうが楽でしょう」
「あーっもうやだ! 昴夜のバカさと足して2で割れよお!」



