牧落さんが英語組に混ざってしまった。もうだめだ。そっと蛍さんの様子をうかがうと、上段からこちらを見てパンパンとハリセンを動かしている。いつ叩かれてもおかしくない。慌てて単語帳に視線を戻した。
「……いやえっと」
「だって模試満点だったでしょ? すごくない?」
ちらりと蛍さんが座っているところに視線を向ける。立ち上がる気配はない。大丈夫……だろうか?
「どうやって覚えるの?」
「……長文で見たときに、そのまま覚えてる、とか」
「そのままって?」
「……そのまま」
それ以上なにも言えなくて口籠っていると、パタンと隣の雲雀くんが辞書を閉じた。
「別に、わざわざ覚えようとしなくても頭入るって話だろ。先輩ら頭の出来違うんで諦めて地道に覚えてください」
「この顔だけ先生ムカつくなオイ!」
ほ……と雲雀くんの隣で安堵の息を吐く。もしかしたら雲雀くんは私が言い淀んだことに気付いたのかもしれない。
「頭の出来かー。そりゃそうだよな、三国ちゃんぱっぱと解いちゃうんだもんな」そして九十三先輩は何も気づいた様子はなく「最初に三国ちゃんに教えてもら他ヤツあるじゃん? あれセンターで出てたんだって。俺ちょうど当てられたから三国ちゃんの回答丸パクして褒められた」
「情けなくないんですか?」
「だからムカつくなあコイツ!」
「うるせーぞ九十三、勉強しろ」
遂に蛍さんがやってきて、九十三先輩の頭が勢いよく叩かれた。九十三先輩は「教えてもらったぶんが出て行くっての」とブツブツ文句を言いながらも従順に教科書を開いた。
ただその集中力が続くはずもなく、20分も経てば「ねー胡桃ちゃーん」と九十三先輩は頭をのけぞらせて牧落さんにちょっかいをかけ始めた。
「もうプール始まった? いつあんの? てか夏休み海行こ」
「九十三先輩、流れるように下心出してんな」
「海だけに? ……なんちって」
桜井くんのジョークは雲雀くんの絶対零度の目に黙殺された。私はちょっと笑ってしまった。
「プール、始まりましたよ。明日ありますけど……」
「マジ? 何時間目」
「気持ち悪い質問してんじゃねーよ九十三」
「イッテ!」
バァンッと九十三先輩の横っ面が叩かれた。確かに、プールの授業がいつあるのか聞くと、かなり具体的な下心を感じる。当人からすれば気持ち悪いことかもしれない。
ただ、ハリセンを持つ蛍さんを前に、牧落さんは「大丈夫ですよ、気にしないですから」と苦笑いだ。
「ていうか海は行きたいので連れてってください」
「待て待て待て。なに抜け駆けしてんだよ!」
一人の先輩が九十三先輩の肩を組めば「え、もちろん群青のみなさんに連れて行ってほしいってことですよ? 2人じゃ行かないですよ」牧落さんがさりげなくデートを否定した。蛍さんは「すげーな、可愛いと百戦錬磨かよ」と小さく呟く。九十三先輩は「まーじかぁ。昴夜の上にはなれねーよなそりゃ」と椅子の後ろに頭を投げ出した。
「あ、だから海連れて行ってほしいのは本当ですよ。ほらナンパとか邪魔だし、先輩達いてくれたら楽チンかなって」
「俺の群青を男|除けに使うんじゃねーよ」蛍さんはぼやくけれど「全然除ける! 胡桃ちゃんに近づく虫は全部火炎放射で燃やせる!」他の先輩たちは満更でもなさそうだ。
「……いやえっと」
「だって模試満点だったでしょ? すごくない?」
ちらりと蛍さんが座っているところに視線を向ける。立ち上がる気配はない。大丈夫……だろうか?
「どうやって覚えるの?」
「……長文で見たときに、そのまま覚えてる、とか」
「そのままって?」
「……そのまま」
それ以上なにも言えなくて口籠っていると、パタンと隣の雲雀くんが辞書を閉じた。
「別に、わざわざ覚えようとしなくても頭入るって話だろ。先輩ら頭の出来違うんで諦めて地道に覚えてください」
「この顔だけ先生ムカつくなオイ!」
ほ……と雲雀くんの隣で安堵の息を吐く。もしかしたら雲雀くんは私が言い淀んだことに気付いたのかもしれない。
「頭の出来かー。そりゃそうだよな、三国ちゃんぱっぱと解いちゃうんだもんな」そして九十三先輩は何も気づいた様子はなく「最初に三国ちゃんに教えてもら他ヤツあるじゃん? あれセンターで出てたんだって。俺ちょうど当てられたから三国ちゃんの回答丸パクして褒められた」
「情けなくないんですか?」
「だからムカつくなあコイツ!」
「うるせーぞ九十三、勉強しろ」
遂に蛍さんがやってきて、九十三先輩の頭が勢いよく叩かれた。九十三先輩は「教えてもらったぶんが出て行くっての」とブツブツ文句を言いながらも従順に教科書を開いた。
ただその集中力が続くはずもなく、20分も経てば「ねー胡桃ちゃーん」と九十三先輩は頭をのけぞらせて牧落さんにちょっかいをかけ始めた。
「もうプール始まった? いつあんの? てか夏休み海行こ」
「九十三先輩、流れるように下心出してんな」
「海だけに? ……なんちって」
桜井くんのジョークは雲雀くんの絶対零度の目に黙殺された。私はちょっと笑ってしまった。
「プール、始まりましたよ。明日ありますけど……」
「マジ? 何時間目」
「気持ち悪い質問してんじゃねーよ九十三」
「イッテ!」
バァンッと九十三先輩の横っ面が叩かれた。確かに、プールの授業がいつあるのか聞くと、かなり具体的な下心を感じる。当人からすれば気持ち悪いことかもしれない。
ただ、ハリセンを持つ蛍さんを前に、牧落さんは「大丈夫ですよ、気にしないですから」と苦笑いだ。
「ていうか海は行きたいので連れてってください」
「待て待て待て。なに抜け駆けしてんだよ!」
一人の先輩が九十三先輩の肩を組めば「え、もちろん群青のみなさんに連れて行ってほしいってことですよ? 2人じゃ行かないですよ」牧落さんがさりげなくデートを否定した。蛍さんは「すげーな、可愛いと百戦錬磨かよ」と小さく呟く。九十三先輩は「まーじかぁ。昴夜の上にはなれねーよなそりゃ」と椅子の後ろに頭を投げ出した。
「あ、だから海連れて行ってほしいのは本当ですよ。ほらナンパとか邪魔だし、先輩達いてくれたら楽チンかなって」
「俺の群青を男|除けに使うんじゃねーよ」蛍さんはぼやくけれど「全然除ける! 胡桃ちゃんに近づく虫は全部火炎放射で燃やせる!」他の先輩たちは満更でもなさそうだ。



