美人局に脅されているわけでもなさそうだし、なにか問題でも……? 招かれるがままに路地に入った私と雲雀くんは顔を見合わせたのだけれど、桜井くんは腕を組んで難しい顔をした。
「あのさー……えーっと簡単に説明すると……美人局違い?」
「は?」雲雀くんは呆気に取られて「……つまりお前、別の美人局捕まえたってことか?」
「そう」
桜井くんが神妙な面持ちで深く頷くと、背後の男子2人が「すみません!」と揃って頭を下げた。女子は膨れっ面をしていたけれど、男子の1人が小突いて謝らせようとして「ほらお前も謝れよ!」「やだよ、だからやめとこってアタシ言ったのに」「嘘吐くんじゃねーよ! お前がやろうって言い出したんじゃねーか!」そのまま仲間割れを始めた。
「……桜井くん、なんで別の美人局って分かったの?」
「払えって言う金が5万だからおかしいなと思って。で、肩小突かれたから胸座掴んでちょっと突き飛ばしたら泣いた」
「だめだよ胸座掴んで突き飛ばしちゃ!」
思わずツッコミを入れずにはいられなかった。というか小突かれたから胸座掴んだってなんだ、蛮人なのか。……いや桜井くんと雲雀くんはそういう人だった。むしろ殴らなかっただけ偉いと褒めるべきなのかもしれない。
「いや……あの……マジで桜井さんだったとか知らなくてすみません……」目が赤いほうの男子がボソボソと「あの……マジでちょっと小遣い稼ごうとしただけなんで……もう二度としないんで」
「だからさぁ、俺の話聞いてた? 俺達はお前らが美人局やろうとしたことなんてどうでもいいわけ。お前らだったことが問題なんだよ」
桜井くんの言うとおりだ。いや、桜井くんのお陰で潜在的な被害者が生じずに済んだのかもしれないけれど、このままでは中津くんという最大の被害者が救われない。
桜井くんがほんの少し苛立ったのはそれが理由だったのだろうけれど、この美人局3人組からしたらそんなことは知ったことじゃない。桜井くんが怒っているという事実だけで充分すぎる威迫になってしまったらしく「マジですみません!」……土下座を始めた。1人が始めたせいでもう1人も慌てて「すみません!」とその場に正座した。
「いやもう本当にスミマセン! 俺ら本当に桜井さんと雲雀さんって知ってたらスルーしてたんで!」
「まさか桜井さんが頭染めて張ってるなんて思ってなかったし」
「雲雀さんもバックにいたとか……」
そうやって口々に謝る2人の隣で、女の子はくるくると綺麗な黒髪を弄んで我関せずだ。なんならちらりと桜井くんを見て「てか桜井くんなら全然いいよー」と1人だけ方向の違う返事をした。
「てかそっかー、張ってたから何もしてくれなかったんだ。キスしてくれてよかったのにー」
「あーすいませんちょっと黙ってもらっていいですか」
桜井くんは大声で遮ったけど時既に遅しというやつだ。でも桜井くんがおとりをやる羽目になったのは半分私のせいだから聞かなかったことにした。
「キスくらいしてもよかったんじゃね」でも雲雀くんが蒸し返した。
「なんでそんなこと言うんだよ! 三国の前だぞ!」桜井くんは当然憤慨した。
「落ち着いて。私は気にしないから」
「あのさー……えーっと簡単に説明すると……美人局違い?」
「は?」雲雀くんは呆気に取られて「……つまりお前、別の美人局捕まえたってことか?」
「そう」
桜井くんが神妙な面持ちで深く頷くと、背後の男子2人が「すみません!」と揃って頭を下げた。女子は膨れっ面をしていたけれど、男子の1人が小突いて謝らせようとして「ほらお前も謝れよ!」「やだよ、だからやめとこってアタシ言ったのに」「嘘吐くんじゃねーよ! お前がやろうって言い出したんじゃねーか!」そのまま仲間割れを始めた。
「……桜井くん、なんで別の美人局って分かったの?」
「払えって言う金が5万だからおかしいなと思って。で、肩小突かれたから胸座掴んでちょっと突き飛ばしたら泣いた」
「だめだよ胸座掴んで突き飛ばしちゃ!」
思わずツッコミを入れずにはいられなかった。というか小突かれたから胸座掴んだってなんだ、蛮人なのか。……いや桜井くんと雲雀くんはそういう人だった。むしろ殴らなかっただけ偉いと褒めるべきなのかもしれない。
「いや……あの……マジで桜井さんだったとか知らなくてすみません……」目が赤いほうの男子がボソボソと「あの……マジでちょっと小遣い稼ごうとしただけなんで……もう二度としないんで」
「だからさぁ、俺の話聞いてた? 俺達はお前らが美人局やろうとしたことなんてどうでもいいわけ。お前らだったことが問題なんだよ」
桜井くんの言うとおりだ。いや、桜井くんのお陰で潜在的な被害者が生じずに済んだのかもしれないけれど、このままでは中津くんという最大の被害者が救われない。
桜井くんがほんの少し苛立ったのはそれが理由だったのだろうけれど、この美人局3人組からしたらそんなことは知ったことじゃない。桜井くんが怒っているという事実だけで充分すぎる威迫になってしまったらしく「マジですみません!」……土下座を始めた。1人が始めたせいでもう1人も慌てて「すみません!」とその場に正座した。
「いやもう本当にスミマセン! 俺ら本当に桜井さんと雲雀さんって知ってたらスルーしてたんで!」
「まさか桜井さんが頭染めて張ってるなんて思ってなかったし」
「雲雀さんもバックにいたとか……」
そうやって口々に謝る2人の隣で、女の子はくるくると綺麗な黒髪を弄んで我関せずだ。なんならちらりと桜井くんを見て「てか桜井くんなら全然いいよー」と1人だけ方向の違う返事をした。
「てかそっかー、張ってたから何もしてくれなかったんだ。キスしてくれてよかったのにー」
「あーすいませんちょっと黙ってもらっていいですか」
桜井くんは大声で遮ったけど時既に遅しというやつだ。でも桜井くんがおとりをやる羽目になったのは半分私のせいだから聞かなかったことにした。
「キスくらいしてもよかったんじゃね」でも雲雀くんが蒸し返した。
「なんでそんなこと言うんだよ! 三国の前だぞ!」桜井くんは当然憤慨した。
「落ち着いて。私は気にしないから」



