「……蛍さんから煙草の臭いがしたから」
「……蛍さんから?」
煙草嫌いの蛍さんからするはずのない煙草の臭い。あれが新庄のものと同じだったかは分からないけれど、少なくとも不審さを抱くには充分だ。
ただ雲雀くんは「なんだそんなことか」と手をパタパタと横に振った。
「大丈夫、群青も全員が全員煙草吸わないわけじゃない。多分それ能勢さんだ」
「……え」
思わぬ指摘に目を丸くしてしまった。群青のメンバーには禁煙が義務付けられているとばかり思っていた。それどころか、No.2の能勢さんが喫煙者だなんて。
「能勢さん……、煙草吸うの?」
「ああ。蛍さんはイヤがってるけどな。その代わり能勢さんの近くにいて煙草臭いって思ったことねーよ、ブレスケアとかちゃんとしてんだろ」
そっか、あの日の蛍さんに煙草の臭いがついていたのは能勢さんが吸うからか……。確かに、煙草の臭いがつくということは少なからず蛍さんの近くで煙草を吸っていた人がいるということだ。いくら手を組んでいると言ったって、1年生の新庄があたかも対等であるかのように蛍さんの隣で煙草を吸えるはずがない。
なんだ、私の思い過ごしか……。いや、まだ可能性は排除しきれていない。きっかけが考えすぎだったというだけだ。
「……ま、蛍さんを疑わない理由はないけどな。正直、三国のこと気に入ってんのは謎だし」
「……あれ本当に気に入ってるのかな」
「ただ利用されてんじゃないかって?」雲雀くんは首を傾げて「……まあ今回のことはともかく、利用することねーだろ」
「……私も私に利用価値があるとは思ってないけど」
「別にそこまで言ってねーけど」
「……謎が深い人だなってだけ」
はあ、と息を吐き出して残りのカフェラテを少し啜った。水とカフェラテが分離していたので軽く振ってから飲み干す。
「……いまの話、桜井くんに内緒ね」
「……別にいいけどなんで」
「……桜井くん、顔に出るから」
「……今も出てなけりゃいいけどな」
問題の桜井くんから電話があったのは、それから少し経ってからだった。
「(あー、もしもし、三国ぃ?)」
いつもの調子で、なんならちょっと困った様子だった。
「(あのさー、ちょっと侑生と一緒にground-0の前まで来てくんない?)」
「……なにか不測の事態でも?」
「(うーんまあそんな感じ。あ、てかホテルの前で補導されるとめんどいな。近くにいるよな? ちょっと今から言うところ来て)」
テーブルを挟んだ向こう側の雲雀くんは怪訝な顔をしている。でも私だって何が起こったのか分からない。
「……三国、ちょっと代わって」
「ん」
「昴夜、なにかあったか」
「(あー、大丈夫、俺が身動き取れなくてお前ら呼び出すってのじゃないから)」
雲雀くんは少し警戒心を露わにしたけれど、電話の向こうでは桜井くんの明るい声が聞こえる。さすがに何かあればもう少し合図らしきものを入れるだろう。
「……分かった、どこ行けばいい」
電話の向こうから桜井くんに指示され、私達はground-0からもう1本外れた通りに行くことになった。その通りは街灯が少なく「侑生、三国」と呼ばれて振り返れば、ちょっと小汚い路地から桜井くんが手招きしていた。その後ろにはなぜか美人局っぽい3人組がいる。
「……何してんだお前」
「いいから、ちょい聞かれると面倒だからこっち」
「……蛍さんから?」
煙草嫌いの蛍さんからするはずのない煙草の臭い。あれが新庄のものと同じだったかは分からないけれど、少なくとも不審さを抱くには充分だ。
ただ雲雀くんは「なんだそんなことか」と手をパタパタと横に振った。
「大丈夫、群青も全員が全員煙草吸わないわけじゃない。多分それ能勢さんだ」
「……え」
思わぬ指摘に目を丸くしてしまった。群青のメンバーには禁煙が義務付けられているとばかり思っていた。それどころか、No.2の能勢さんが喫煙者だなんて。
「能勢さん……、煙草吸うの?」
「ああ。蛍さんはイヤがってるけどな。その代わり能勢さんの近くにいて煙草臭いって思ったことねーよ、ブレスケアとかちゃんとしてんだろ」
そっか、あの日の蛍さんに煙草の臭いがついていたのは能勢さんが吸うからか……。確かに、煙草の臭いがつくということは少なからず蛍さんの近くで煙草を吸っていた人がいるということだ。いくら手を組んでいると言ったって、1年生の新庄があたかも対等であるかのように蛍さんの隣で煙草を吸えるはずがない。
なんだ、私の思い過ごしか……。いや、まだ可能性は排除しきれていない。きっかけが考えすぎだったというだけだ。
「……ま、蛍さんを疑わない理由はないけどな。正直、三国のこと気に入ってんのは謎だし」
「……あれ本当に気に入ってるのかな」
「ただ利用されてんじゃないかって?」雲雀くんは首を傾げて「……まあ今回のことはともかく、利用することねーだろ」
「……私も私に利用価値があるとは思ってないけど」
「別にそこまで言ってねーけど」
「……謎が深い人だなってだけ」
はあ、と息を吐き出して残りのカフェラテを少し啜った。水とカフェラテが分離していたので軽く振ってから飲み干す。
「……いまの話、桜井くんに内緒ね」
「……別にいいけどなんで」
「……桜井くん、顔に出るから」
「……今も出てなけりゃいいけどな」
問題の桜井くんから電話があったのは、それから少し経ってからだった。
「(あー、もしもし、三国ぃ?)」
いつもの調子で、なんならちょっと困った様子だった。
「(あのさー、ちょっと侑生と一緒にground-0の前まで来てくんない?)」
「……なにか不測の事態でも?」
「(うーんまあそんな感じ。あ、てかホテルの前で補導されるとめんどいな。近くにいるよな? ちょっと今から言うところ来て)」
テーブルを挟んだ向こう側の雲雀くんは怪訝な顔をしている。でも私だって何が起こったのか分からない。
「……三国、ちょっと代わって」
「ん」
「昴夜、なにかあったか」
「(あー、大丈夫、俺が身動き取れなくてお前ら呼び出すってのじゃないから)」
雲雀くんは少し警戒心を露わにしたけれど、電話の向こうでは桜井くんの明るい声が聞こえる。さすがに何かあればもう少し合図らしきものを入れるだろう。
「……分かった、どこ行けばいい」
電話の向こうから桜井くんに指示され、私達はground-0からもう1本外れた通りに行くことになった。その通りは街灯が少なく「侑生、三国」と呼ばれて振り返れば、ちょっと小汚い路地から桜井くんが手招きしていた。その後ろにはなぜか美人局っぽい3人組がいる。
「……何してんだお前」
「いいから、ちょい聞かれると面倒だからこっち」



