ぼくらは群青を探している

「……あ、いや、別に……」
「昴夜に言ったのか」
「言ってない」

 慌てて首を横に振った。さっきの理由の信憑性(しんぴょうせい)が増したのか、雲雀くんはどこか安堵に近い反応をする。

「……逆に、舜はなんで言わない? アイツ、知ってるよな?」
「あ、うん……荒神くんには言わないでって言ったから……。でも、そっか、荒神くん言わないでいてくれたんだ……」

 さすがに桜井くんと雲雀くんに詰められたら言わずにはいられないだろうと勝手に思っていたのだけれど、どうやら見た目より口が堅いらしい。荒神くんの株が少し上がった。逆に雲雀くんは苛立ちの混ざった溜息をついた。

「……ちっ。なんかあったかって聞いても殴られたのは自分だけの一点張りだったし、もっと詰めればよかったな」
「……私が頼んだことなので、荒神くんのことは怒らずにいてもらえると」
「別に怒ってねーよ!」

 怒ってるじゃん……。そんなに眉間に皺を寄せて、道行く人々が少し振り返るほど声を荒げて、怒っていないというほうが無理がある。

 雲雀くんもその自覚はあるのだろう、ついた頬杖でそのまま口元を隠してそっぽを向いた。

「……俺が言いたかったのは変に隠し事すんじゃねーよって話だよ。言いたくないことはいいけど背負(せお)いこむな」
「……すいません」
「……だから怒ってるんじゃねーけど」

 雲雀くんは指の関節でこめかみをほぐす。本当に怒ってるようにしか見えないけどな……。

「……つか俺が気付いてんだから蛍さんも気付いてんだろ」
「……そういえば」

 あの時、蛍さんの視線が動いた先が分からないことがあった。あれはもしかして床に落ちている煙草の不自然さに気付いていたからだったのかもしれない。

「……何も言われてないけど、雲雀くんと同じ観点から気付いてる可能性はある」
「……どっちかいうと俺はお前があんだけ怯えたから気付いたけど。煙草の不自然さなんて、後から考えればそういうことだったくらいの話だ」

 ……それなら、蛍さんは気付いていない? 確かに、気付いているのなら新庄に何もしないのは妙だ。……自分で言うのもおかしいけれど、廊下でほんの些細な私の陰口を叩いた3年生の顔を蹴るくらいだ、新庄の行動を知っていれば何か仕掛けるほうが自然。

 ただ、蛍さんが新庄と手を組んでいるのなら話は別だ。蛍さんが私を気に入っているように見える言動は全て何かのカムフラージュ……。

「……新庄ってなんで(ディープ・)(スカーレット)に入ってるの?」
「急に話が変わったな」
「ご、ごめん……」
「……俺も知らねーよ。(せい)(らん)学園に入って、そんでそこ仕切ってるのが(ディープ・)(スカーレット)でってだけじゃねーの」
「……蛍さんと新庄が仲がいい可能性は?」

 意図を理解したのだろう、雲雀くんの表情が(けわ)しくなった。

「……蛍さんのこと疑ってんのか」
「や、その、疑うってほど明確な何かがあるわけじゃないんだけど……。桜井くんと雲雀くんが群青に入って得をするのは蛍さんだから……」

 新庄の行動も含めて考えて、仮説の筋が通るから──。私が立てた仮説も含めて説明すると、雲雀くんは少し考え込むように目を伏せた。

「……まあ、筋は通るな」
「……だから聞いただけ。明確に怪しいことを言われたわけじゃない」
「だったらなんで蛍さんを疑った? きっかけはあったろ」

 その問いかけで頭の中でサッとあの日のアルバムを整理する。バイクの上に座る私を抱きかかえた蛍さん……。