JR神戸駅付近で、事故。
ついさっき、私が通ってきた場所だ。
思わず振り返って、テレビの画面を凝視する。映っていたのは、ひどく見覚えのある景色だった。
「あらあら、事故? すぐ近くじゃない。大変ねぇ」
のんびりと他人事のように言うお母さんと違って、私は内心穏やかじゃなかった。
嫌な予感がした。
この場所は、さっき私が通ってきた道。近くには遠野くんもいたはずだ。
彼は大丈夫だろうか。まさかとは思うけれど、事故に巻き込まれたりしていないだろうか。
不安になって、すかさず手元のスマホに問いかける。
「ねえ、ラビ。このニュースの詳しい情報……——」
そこまで言ったところで、ハッとする。
画面には『メンテナンス中』の文字。そういえば今はアプリは使えないんだった。
仕方なく、ネットで検索する。
JR神戸駅付近で起こった事故。被害の状況。
事故はつい三十分ほど前、十九時半ごろに起こったようだった。
そういえば、さっき駅のホームから電車に乗り込んだとき、近くで救急車やパトカーのサイレンが鳴っていた。
あれはもしかしたら、その事故の対応だったのかもしれない。
ネットニュースの記事ではまだ詳しい情報は出ていない。二人が軽傷、一人が意識不明の重体。さっきテレビで言っていた内容と同じだった。
軽傷の二人はともかく、重体になっている人物のことが気になる。
私はじれったくなって、今度はSNSのアプリを開いた。
思った通り、現場に居合わせた数人が事故後の様子を写真に撮ってアップしている。私は目を皿のようにして、それらの投稿を片っ端から確認していく。
すると、ある一つのアカウントの発言が目にとまった。
『轢かれたのは高校生ぽい 男子の制服だった』
その言葉の意味を理解した瞬間、足元が崩れていくような感覚があった。
事故に遭ったのは男子高校生。
あの時間帯にあそこを歩いていた人物となると、ますます遠野くんのことが心配になってくる。
と、今度は別のSNSアプリにメッセージが届いた。
学校のクラスで共有している、連絡用のアプリだった。そこに、クラスメイトの一人がメッセージを投稿している。
『遠野が事故に遭った』
視界に飛び込んできた文字に、思わず呼吸が止まる。
遠野くんが事故に遭った。
本当に?
危惧していた最悪の事態が、SNS上で情報共有される。
『え うそ どこで?』
『もしかして今ニュースになってるやつ?』
『神戸駅の近く? ハーバーの辺りか!』
見る見るうちに、他のクラスメイトたちの発言も流れていく。
最初に事故の報告をしたのは、向田悠生くんだった。クラスの中でも特に目立つタイプの男子で、彼の発言があると周りもすぐに反応する。
話の流れを見ていると、どうやら向田くんは、事故当時にその現場にいたらしい。目の前で遠野くんが車に撥ねられるところを目撃してしまったのだ。
どうか人違いであってほしいと思ったけれど、クラスメイトである向田くんの発言となれば、それは難しいかもしれない。



