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土日明けの昼休み。例のごとく、私たちは四人そろって食堂へと向かう。
「ねぇ、ねぇ。今度の土日のどっちかにさ、みんなで『みなとまつり』に行かない?」
パステルカラーのランチクロスをほどきながら、ハルカちゃんが言った。
次の週末、神戸の港では年に一度の夏祭りが開催される。
『Kobe Love Port・みなとまつり』と銘打たれたそれは、屋台やキッチンカーの他にも音楽ステージや著名人のトークライブなどがある。
「祭りって。こんな状況なのに、そんな浮かれてる場合か?」
遠野くんは微妙な反応だった。
祭りの開催は七月十三日と十四日の二日間。例の事故の日付が十七日なので、かなり直前になる。
「こういう時だからこそ、だよ。事故のこととか暗い話題ばっかだと、なんかマイナスなことを引き寄せそうじゃない? 逆にそういうのとは無縁の明るい雰囲気にしてればさ、事故が起きる未来なんて吹っ飛ばしちゃうかもよ?」
ハルカちゃんらしい意見だな、と思った。
彼女のようにポジティブな生き方をしていれば、ネガティブな出来事なんて本当に跳ね除けてしまうかもしれない。
「で、遠野と真央はどうする? 予定空いてる?」
ハルカちゃんと向田くんの所属する陸上部の練習は、祭りの開催に合わせて休みになるらしい。
私は言わずもがな、何の予定もない。
遠野くんはどうだろう、と彼の顔を窺うと、
「……日曜なら空いてる」
ぼそりと、あまり乗り気ではなさそうなものの、彼は参加のサインを出す。
「よっし。じゃあ決まり! 今度の日曜は、みんなでみなとまつりに行こー!」
こうしてあっさりと、週末の予定が決まる。
なんだか私にしては最近アクティブなイベントが多くて、珍しく高校生らしいことをしているような気がしてくる。
「女子二人はもちろん浴衣だよな? いやあ楽しみだよなー、遠野」
向田くんはやけにニヤついた顔で、隣の遠野くんに絡む。対する遠野くんは「別に」とそっけなく顔を逸らす。
一見仲が悪そうに見える二人だけれど、どちらも食べているのは同じ『ぼっかけピラフ』なので、意外と趣味は合うのかもしれない。
「浴衣かぁ。あたし、新しいの買わないとサイズが合わないかも。ねえ真央。土曜日にさ、一緒に浴衣買いに行かない?」
私も浴衣は最近着ていなかったので、サイズの合うものを新調しないといけない。
「うん。私も新しい浴衣ほしいな」
「じゃあそれも決まり! 可愛い柄のやつ、選んであげるからね!」
ハルカちゃんは底抜けに明るい笑顔で、本当に楽しそうに言う。
土曜日は彼女と二人でショッピング。そして翌日は四人でみなとまつり。
なんだか私にとってはいつも以上に賑やかな夏になりそうで、事故のことなんかつい忘れてしまいそうなくらいだった。



