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目的のJR神戸駅で降りると、そこからエスカレーターに乗って地下へ向かう。
駅の下には『デュオこうべ』という地下街が広がっていて、それはまっすぐハーバーランドの方まで伸びている。
雑貨屋や飲食店などが並ぶ広々とした通路を進んでいくと、やがてまたエスカレーターに乗って地上に出る。
そうして眼前に現れたその場所こそが、例の事故の現場だった。
「ここだよな。オレたち四人が、それぞれ事故に遭った場所」
JR神戸駅とハーバーランドとの間。大型ショッピングモール『umie』の目の前。T字路になっているこの交差点へ、トラックは突っ込んできたのだ。
「うん。あたしも、ここで悠生が轢かれるのを見た」
「俺も、ニュースで見たのはこの場所だった」
「私も……」
あの日、テレビの中継で映し出されていたのはまさにこの場所だった。
ここで、私たち四人はそれぞれの死を体験したのだ。
「で、どうすんの? とりあえずここに来てみたはいいけど、事故が起こるのは七月十七日だよね?」
ハルカちゃんが言った。
彼女の言う通り、事故が起こるのはまだ先のこと。今日ここで誰かが被害に遭うという話は聞いていない。
「まあ、そう焦るなって。こういうのはな、地道に調査していけば何かしら手掛かりになるものが見つかって……——って、おいハルカ。前見て歩けよ。ぶつかるぞ」
そう向田くんが忠告したものの、時すでに遅し。会話に集中するあまり横を向いていたハルカちゃんは、前方から歩いてきた人と肩がぶつかってしまった。
「わっ……と、と」
反動で、体のバランスを崩した彼女はすぐ隣にあった車道へはみ出してしまった。
そこへ、ちょうどやってきた車が激しくクラクションを鳴らす。
「……ハルカ!」
向田くんがそう叫んだとき、ハルカちゃんの目の前にはすでに車が迫っていた。
甲高いブレーキ音が、辺りに響き渡る。
「ハルカちゃん!」
私もたまらず叫んでいた。
このままではぶつかる。
やがて車のフロント部分が彼女と衝突しようとした、その刹那。
彼女の腕を力ずくで引き寄せ、ギリギリのところで接触を回避させたのは遠野くんだった。
二人は一緒に倒れ込むようにして歩道へ戻る。
そうして無事に衝突を免れた車は数メートル先で停止して、「危ねえだろ!」と窓から抗議の声を飛ばしていた。
「……あ、ありがと。遠野」
すぐさま上体を起こしたハルカちゃんは、気まずそうに遠野くんから離れる。
対する遠野くんは相変わらず冷静な様子で、「怪我はないか?」と確認する。
その後ろで、向田くんはまるで腰が抜けたようにヘナヘナとその場へ膝をついた。そうして両手で頭を抱えて、何かを考え込むように無言になる。
私も私で、胸の奥では心臓が早鐘を打っていた。
脳裏では七月十七日の、事故のニュースがフラッシュバックする。
一歩間違えれば死んでいた。
それほどまでに、死は私たちの身近にあった。
何気ない日常の中で突然訪れたそれは、まるで私たち四人に対する警告のようだった。



