真夏の観測者たち

 
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 午前の授業が終わって昼休みになると、私たち四人は食堂へ向かった。
 壁際の四人席を陣取って昼食をとる。私とハルカちゃんは家から持参したお弁当。遠野くんと向田くんは食堂のメニューにある『ぼっかけピラフ』。

 ぼっかけは神戸の郷土料理で、牛すじ肉とこんにゃくを甘辛く炊いたもの。それをボリュームのあるピラフに混ぜたこのメニューは、食べ盛りの男子たちが取り合いになるほど人気だった。

「今日の授業内容も、やっぱり俺たちの記憶にある通りだったよな」

 遠野くんはそう言って、スプーンに山盛りのピラフを一気に口へ含む。

「ほんとヘンな感じ……。やっぱりあたしたち、本当に過去にタイムリープしちゃったのかな」

 今度はハルカちゃんが言った。
 「なんかファンタジーみたいな話だよね」と苦笑しながら、ツヤツヤの卵焼きを頬張る彼女に、

「ファンタジーじゃなくて、SFだろ」

 そう突っ込みを入れたのは向田くんだった。彼はSFが好きで、そういう類の漫画や映画などをよく知っている。

「タイムリープってのはさ、実は科学で証明できるんだよ。時間の流れってのは物体の運動とか重力とかの関係で歪むことがある。だから実際、すげー細かい単位で言えば、未来へのタイムリープは日常的に起こってるんだ」

 そんな向田くんの説明に、ハルカちゃんは目を丸くする。

「日常的に? え、どういうこと? あたし、未来に行った人の話なんて聞いたことないけど」

「オレたちが体感できないぐらいの小さい単位での話だよ。一秒の何億分の一とかさ。たとえば新幹線に乗って東京から博多まで移動した人は、それ以外の人よりも十億分の一秒だけ未来に行けるって言われてる」

「十億分の一秒って。そんなの短すぎて全然わかんないんじゃないの?」

「そう。現代の技術だとそれくらいしか観測できないから、SF映画とかに出てくるタイムマシンみたいな代物はまだ実在しない。でも理論上ではタイムリープは可能なんだ。だからこの広い宇宙のどこかには、もしかしたらそういう技術を持った惑星がすでに存在してるかもしれない。……で、そいつらがオレたちにすでに接触してきてるとしたら、どうだ? オレたち四人がいま観測しているこの現象も、実はそいつらのせいかもしれないぞ」

 なんだか壮大な話だった。
 この宇宙のどこかには、私たちの住む地球よりもずっと文明の進んだ星が存在するかもしれない。そしてその星の技術をもってすれば、タイムリープは現実的なものとして考えることもできるのだ。

「宇宙人が俺たちに接触してきたってことか? さすがに映画の見すぎだろ」

 遠野くんが冷静に突っ込むと、向田くんはムッとした顔で睨み返す。

 どこか夢見がちな向田くんと、現実的な思考の遠野くん。この二人は何かと対照的で、すぐにこうやってぶつかってしまう。

「ねえ、ラビはどう思う?」

 この場の空気の入れ替えも兼ねて、私はスマホのマイクへそう尋ねてみる。画面には見慣れたウサギのキャラクターが待機していて、私たちの会話に耳を澄ませていた。

「理論上は、ないとは言えません。ですが、あくまで仮説ですね」

 なんとも淡白な返事だった。こういうところは、やっぱりAIだなと思う。