真夏の観測者たち

 
 高校の同級生が、交通事故で亡くなった。

 私のクラスメイトである、遠野(とおの)彼方(かなた)くん。
 背が高めで、もっぱら喧嘩が強いという噂があった男の子。周りの男子たちからは恐れられていて、教室では一人で過ごしていることが多かったように思う。

 彼とは同じクラスということ以外に、私はほとんど接点がなかった。
 けれど昨日、珍しく彼と話す機会があって。ちょっとだけ、彼の意外な一面を知ったばかりだった。

 だから、彼が亡くなったという報せを聞いたときはショックだった。
 こんな悲しい事故があっても、翌日は学校があるので休むわけにはいかない。彼のいなくなった教室で、まるで何事もなかったかのように授業を受けるのは、想像しただけでも嫌だった。

 けれど、

「……あれ。遠野くん、どうしてここにいるの?」

 いざ登校して教室に入ってみると、そこにはなぜか、昨日亡くなったはずの遠野くんの姿があった。

 幽霊なんかじゃない。
 周りのみんなも、彼の姿が見えている。

 そして当の彼は私を見て、思いもよらぬことを口にした。

一ノ瀬(いちのせ)こそ、なんでここにいるんだよ。昨日、事故で亡くなったって聞いたけど……」

 彼の中ではなぜか、私の方が死んだことになっていた。

 私と彼との間で、認識の食い違いが起きている。
 何か、説明できない現象が起こっている。

 不可思議で、きっと一生忘れることはない、私たちの夏が始まろうとしていた。