「キミはまだ子どもだよ」


 ――大学四年生の就職活動が落ちついた夏のある日、高校の同窓会のハガキが届いた。
 それを片手に思いだす。
 三年生の夏休み直前に、担任の久保田先生にフラれてしまったときのことを。


 卒業式に撮ったツーショット写真。
 いまでも机の上にかざってある。
 彼はワインレッドフレームの眼鏡でスーツ姿。隣に泣き顔の私なんてダサいけど。


 当時の彼は数学担当だった。
 わからないことは放課後マンツーマンで教えてくれたし、友達のことで悩んでるときは親身になって話を聞いてくれた。

 次第に感情の変化があらわれて告白したけど、眼鏡のレンズに映っていたのは教え子のひとりの私。
 身も心も一人前の大人だと思っていたけど、25歳の彼にはきっと子どもにしか見えなかったんだよね。

 もし同窓会で会えるのなら、卒業式以来の再会に。