re:Alize(リアライズ)



EST本拠地内、昼───。


翔太郎 (………。)

 翔太郎は自室で横になりながら、クレイとのやり取りを思い返していた。



(翔太郎:なっ…どういう事ですか!?俺は学校に行けないって…!)

(クレイ:分かってくれ。敵は翔太郎と同じ学年の、同じクラスに潜伏している可能性が高い。)

そう言うと、クレイは時計を確認する。

(クレイ:まだ期日までは5日ある。とりあえず翔太郎には学校を休んでもらってる形を取り、敵をこれ以上刺激しない方が得策だと判断した。)

(翔太郎:そんな…っ!)

(クレイ:これ以上同じクラスで顔を合わせていたとしてもさらに条件を増やされるか本当に人質を取られかねない。分かってくれ。)

(翔太郎:なっ…!)



翔太郎 (………。)

翔太郎「クソ…ッ。」



(???:これはお前のゲームだ…。)

(???:お前がプレイヤーの…血のゲーム…。)



期限が、着々と迫って来ていた。





最上沢高校、昼────。


水野「はぁ~~~…。」

水野の友達1「なんだー?どうしたの、ため息なんかして。」

水野「いや~~~…。文化祭近いじゃん~~?なんか疲れるなぁ~~って思って。」

 そう、水野の言う通り最上沢高校は近日に文化祭を控えているのだ。

水野の友達1「えぇーーっ!?何でー?!文化祭楽しいじゃん!」

水野「うぅーん…楽しいのはわかってるんだけど、なんかイベント事って疲れるって言うか〜…。」

水野の友達1「えぇーーっ?蒼は分かってないなぁ~~。こういうのは準備が楽しいんだよ!あ!そう言えば、うちのクラス何にするんだろ。聞いてこよ!」

そう言うと水野の友達は他のクラスメイトの所へと駆け出していってしまった。

水野「………。」

水野「はぁ…。」

小川「おっ!水野~~!」

水野「…ん?何?」

水野が無愛想に返事をすると、狼狽えた様子で小川が返す。

小川「なっ…なんでそんな態度悪いの…。」

水野「学校ではあまり話しかけないでくんない?めんどくさいんだけど」

小川「なっ…イツキにもさっき同じことを言われた…じゃなくて!」

そう言うと、小川はとある紙を水野の前に出してきた。紙は明るく装飾されており、どうやら内容は文化祭に関するものらしい。

水野「…ん?何これ。」

小川「ほらー、今年の文化祭って俺が実行委員だろー?だから前もって文化祭の出し物を聞いておこうと思って!」

ピラッと目の前の紙を手に取ってみる。

水野「んーっと何なに…メイド喫茶、焼きそば屋、わたあめ屋、お化け屋敷など色々…。」

小川「今クラスの連中に聞いて回ってるんだがメイド喫茶と焼きそば屋で張り合っててな!焼きそば屋11票に対してメイド喫茶はなんと13票!このまま行けば夢のメイド姿が拝める事に…ってあれ?」

気付くと水野は既に席を離れてどこかへと向かう様子だった。

小川「ちょっ…おーい!まだ話は終わってないぞー!?」

 手をひらひら振りながら、水野は振り返ること無く小川にこう返した。

水野「何となくわかったからもういいや〜。あと勿論だけど、私の1票は焼きそば屋に入れといて。」





EST本拠地内、昼────。


ESTの一室。クレイは誰もいない部屋で一人考えていた。

クレイ「………。」

静かに時計に目をやる。

少しの沈黙の後、こう口を開いた。

クレイ「あと4日か…。」



最上沢高校、夕方────。


キーンコーン…カーンコーン…

学校内に響くチャイムが一日の終わりを告げる。

三神「竹本ー。」

竹本「…!」

竹本「三神…。」

三神「文化祭の曲どうする〜?ギターが抜けちまったから新しい曲探さなきゃいけねぇし、小野の方もまだギターやってくれる奴は見つかってねぇみてぇだし…。」

三神「竹本は誰か見つかったか?」

竹本「いや、こっちもまだなんだ…。」

裾を握っていた右手に力が入るのを感じる。

竹本「…………。」

竹本「ギター…か…。」





EST本拠地内、夜────。


ゼル「そんでよォ〜。事務の人を呼ぶからもう少し待っててくださいって言われたと思ったら、さらにまた2時間待たされてよォ~~。」

 ゼルとアリエスが他愛もない会話をしながら歩いて行く。隣にいたレオネルがクレイにあの事を聞いてみる。

レオネル「…翔太郎君の件はどうだ?」

クレイ「どうだろうな…。」

少し考えて、口を開く。

クレイ「やはり今の状況を考えると、迂闊に手を出せないのが現状だ…。」

レオネル「………。」

難しいと言った様子でため息をつくレオネル。

レオネル「そうか…。」

クレイ「……ぐっ……!」

クレイ「クソッ………!!」


そして、クレイの他にもう一人。


翔太郎「………………。」

 ESTの自室で待機とは言え、外にも出れない事のストレスと自らの内側からくる焦燥感によって翔太郎もまた、追い詰められていた。

翔太郎「────ッ!」

翔太郎「あーーーーーッッッ!!!クソッッッ!!」

やりきれない怒りのままについ枕を投げる。

翔太郎「……………。」

やるせない表情のまま枕を拾うと、またベッドに横になる。

怪物の脅迫から数日、翔太郎の頭の中では常に竹本のあの言葉が反芻(はんすう)していた。

(竹本: …退部届は、自分で出せよ。)

翔太郎「───ッ!」

思い出すたびに嫌になる。

しかし翔太郎はまだ知らないのだ。まさか次の日が翔太郎にとって激戦の日になろう事とは────。



EST本拠地内、地球外生命体(ゾディアック)監視室────。


 EST地球外生命体(ゾディアック)監視室。その名の通り、収容された地球外生命体(ゾディアック)を監視するガラス張りの部屋である。様々な防御性能に優れており、内側からは勿論、外側からも危害は加えられない仕様となっている。監視員は2人。問題があれば即EST本部へと連絡が行く仕組みになっている。


監視員1「はぁ~~。暇っスねぇ~~。」

監視員2「まぁなぁ~…。」

監視員1「話しかけてもなにも喋んないし…。コイツ、何で出来てんすかね?おーい。」

そうマイクから声を掛けてみるが、メルルは一切気にする素振りを見せない。

監視員1「っはぁ~~。暇だなぁ~~~~…。」

メルル「…………。」





次の日、最上沢高校、昼────。


水野の友達1「ねぇねぇ蒼聞いた~~?」

水野「ん~~?」

水野の友達1「ウチの出し物焼きそばになるっぽいよ~~?」

水野「マジ?よっしゃっ…!」

そう聞くと同時に思わずガッツポーズをする水野。

クラスの前辺りでは実行委員であるはずの小川がテンション低めで集計を書き出している。

水野「はぁ~~~…よかった、焼きそば屋になってくれて…ん?」

水野の友達1「ん?どうかしたの?」

水野「そういえば、先輩達は何するんだろう?」

水野の友達1「先輩?蒼知り合いいたっけ?」





EST本拠地内、昼────。


 いつものように業務をこなしているZAQ(ザック)の元に突然アナウンスが響き渡る。

ジジッ……ジジジジ……ッ

アリエス「!」

クレイ「…?」

『緊急通報!緊急通報!都内、最上沢高校にて殺人事件発生!都内、最上沢高校にて殺人事件発生!』

ゼル「あぁ!?何だそりゃ?とりあえず行くかっ…」

そう言って立ち上がろうとしたゼルをクレイの左手が制止する。

ゼル「…?」

ゼル「何だよ?」

クレイ「…何かおかしい」

クレイがそう言ったかと思うと、再びノイズのような音がスピーカー越しに流れ出した。


ジジッ…ジジジジ…ッ

ジジ……ッ……ジジッ……


そして『それ』は、突然始まった。

???『…やぁ。EST諸君。』

一同「!?」

そこから流れたのは聞いた事のない声。しかしESTの中でただ一人だけ、その声に聞き覚えのある人間がいた。

???『そして…。』

???『聞いているんだろう…?久我翔太郎。』

クレイ「!」

クレイ「───ッゼル!」

その名前を聞いた途端、クレイはすぐに部下に指示を出していた。

その怪物が言った名前───。
翔太郎が何か行動を起こすと直感したからだ。


翔太郎「……………。」


???『最上沢高校へ来い…。』

???『来ないのならば…すぐにでも"殺戮"を開始する。』

翔太郎「…………」

翔太郎「─────ッ!!」

考えるより先に、翔太郎は部屋を飛び出していた。


クレイ「ゼルは翔太郎の部屋を!私たちは他のフロアだ!」

アリエス「…!」

レオネル「…!」

2人の部下は分かったと言わんばかりに頷くと、直ぐに行動を開始した。目的は無論、翔太郎だった。


 突然緊張が走り出したEST内に怪物の声が響き渡る。

???『すぐに来い…。久我翔太郎…。さっさと始めてしまうぞ…?はははははは……。』

焦りを感じているZAQ(ザック)のメンバーとは裏腹に愉快そうな怪物の笑い声が響き渡る。


ガチャガチャッ!


ゼル「翔太郎!開けるぞっ!!」

ガチャッと勢いよくドアが開かれる。

ゼル「………。」

ゼル「いない……。」

部屋には誰もいなかった。翔太郎は既に部屋を飛び出していた。

ゼル『部屋に翔太郎はいねぇ!多分もう…!』

クレイ「分かった!全員車に乗り込むぞッ!」

ZAQ(ザック)のメンバーは車で敵のいる地、最上沢高校へ向かおうとしていた。



翔太郎「ハッ…!ハッ…!」

翔太郎は無我夢中で街の中を駆け出していた。

翔太郎「ハッ…!ハッ…!ハッ…!」

荒くなる呼吸の中で、頭の中にはある人物の顔を思い浮かべていた。

翔太郎「ハッ…!ハッ…!」

翔太郎 (竹本…!)



最上沢高校、昼────。


三神「はぁ~~。結局ギター見つかんねぇなぁ~~…。どうしよ~~…。」

竹本「うーん…何とか呼べる人を探してみるしかない。曲を見つけるのはそこからだ。」

三神「うーーん……ん?」

窓に寄っかかっていた三神が窓の外で何かを見つけた。

三神「なぁ…あれ…翔太郎じゃね…?」

竹本「…!?」

その言葉に驚き、竹本もつい窓の方を振り向く。

竹本「………。」

窓から必死にこちらへ駆けてきたのであろうその姿を発見し、ついその名を口にする。

竹本「翔太郎……。」


翔太郎「はぁっ…!はぁっ…!」

ようやく学校へ到着すると、急いで階段を駆け上がり自分のクラスへと直行する。

脳裏には竹本とは別に、もう一人の顔を思い浮かべていた。

翔太郎 (………ッ!)



ガララッ!!



 豪快に教室の扉を開くと、息も切れ切れになりながら翔太郎は『犯人』の元へと足を運んでいった。

翔太郎「ハァッ…!ハァッ…!」

竹本「翔太郎…。」

もはや誰の視線も気になりはしない。翔太郎はようやく、その『犯人』の前で歩みを止めたのだった。

翔太郎「はっ…!はっ…!」

???「ふーん。やっぱり分かってたんだ〜…。」

翔太郎「やっぱり…お前なんだな……ッ!」

翔太郎の見つけた『犯人』。それはこの前別の女子生徒にぶつかっていたあの『メガネをかけた女子生徒』であった。

女子生徒1「えっ…?なっ、何が…?」

女子生徒2「何なに…何なの…?」

男子生徒1「なんだ何だ…?」

メガネをかけた女子生徒「まぁいいか…もうこの女も…必要…ない……っ」

メガネをかけた女子生徒の声色が途端に変わったかと思いきや、突然体から黒い液体のようなものが溢れ出した。

女子生徒1「きゃーーーーーっっっ!!!」

男子生徒2「何だ!?アレ…!」

三神「なっ………!!」

竹本「何だよ……アレ…!?」

バタンッ、とメガネをかけた女子生徒が倒れる。

その女子生徒から溢れ出た黒い液体は翔太郎の目の前の空中で段々と積み重なっていき、それは形を成していく。

翔太郎「………ッ!」

そして目の前に現れた『ソレ』は、いつの日か翔太郎が目にした『あの黒い鎧を纏った怪物』であった。

???「やぁ…久しぶりだねぇ…。翔太郎クン。」

翔太郎「ぐッ…!!」

グレイク「俺の名はグレイク。と言っても、今から殺す君に言っても何の意味も無いが。」

翔太郎「こ、コイツ…!」

翔太郎 (やる気だ…ッ!ここで『始める』気だ…ッ!!)

グレイク「さぁ…"変身"したまえよ…。君の本当の姿をみんなに見せて差し上げようじゃないか…。」

翔太郎「……ッ。」

近くにいた竹本と三神を一瞥する。

三神「…?」

竹本「翔太郎…?」


翔太郎 (…………。)

翔太郎「………チェインジ。」

そう翔太郎が唱えると、全身が黄色い光に包まれて行く。そしてそこに立っていたのは────。

三神「!」

竹本「!!」

全身が黄色と白の鎧で包まれた、一体の"精霊"であった。


ざわ……ざわ……


突然の変身に、困惑する周囲。

三神「何だよ……アレ……?!」

竹本「翔太郎…?」


グレイク「さぁ…っ!始めようか…!俺たちだけのパーティーをっ……!!」

翔太郎「………。」

翔太郎 (────ッ!)

怪物が何か言ったかと思ったその時だった。


バシュンッッ!!


翔太郎「!!」

怪物の攻撃を間一髪で避ける。

翔太郎「…ッ!!」


ヒュンッヒュンッ!!!


鋭く飛んでくる怪物の一撃を危機一髪で回避する翔太郎。

翔太郎「コッ…!コイツ……ッッ!!」

グレイク「ほらぁッ!!避けろォッ!!避けてみろッッ!!!ひゃははははははッ!!」


ビュンッ!!ビュンッ!!


怪物の攻撃は想像よりも遥かに早く、避けるのにも精一杯である。

翔太郎「なッ…!ぐッ……!!」

危ない、と思ったその時だった。


ドズッ……!!


翔太郎「────ウグッ!!」

つい、怪物の一撃を貰ってしまった。

グレイク「ヒャハッ!!」

怪物がそう笑ったかと思うと今度は信じられない速度の回し蹴りが飛んできた。

グレイク「オルァアアァッ!!!」

翔太郎 (……ッ!!)

顔面狙っての鋭い回し蹴り。しかし何とか間一髪でガードする。


ドグォオッッ!!!!


翔太郎「……ッグ!!」

バリバリィィーーンッッ!!!

吹っ飛ばされた衝撃で背面のドアがいとも簡単に壊れてしまう。

ドアのガラスが割れた音は学校中に鳴り響いた。



バリィーーンッ!!

(ゆずる)「…?」



バリィーーンッ!!

水野の友達1「…?」

水野の友達1「何だろ、この音?」

水野「……。」

小川「……?」

巫狩(いがり)「………。」



グレイク「おらおらァ、どうしたァ?翔太郎センパーイ。」

ガッ!!

翔太郎「ぐッ……!!」

 片手で頭を掴まれる翔太郎。相手の方がパワーもスピードも上な事をこの一瞬の闘いで翔太郎は身に染みて感じていた。

翔太郎 (こっ…コイツッ…!強ぇ…ッ!!)

グレイク「テメーが立ち上がって()んねぇとつまんねぇだろうが…」

グレイク「…さっ!」


ドゴォォッッ!!!!


グレイクは軽々と回し蹴りを翔太郎の腹に放つ。

翔太郎 (────ウグゥッ!!)

相手の方が鎧も厚く重そうな印象を受けるのに当然のようにパンチや蹴りが飛んでくる。

ここまで圧倒的な強さを誇る敵は翔太郎史上、初めてだったのだ。


ドガァァッッ!


廊下のさらに奥へと吹っ飛ばされる翔太郎。何とか意識を保って立ち上がるが、その足元は覚束(おぼつか)()い。

別のクラスの女子生徒1「キャアッ!!!」

別のクラスの男子生徒1「うわぁっ!?何だアレ!?」

別のクラスの男子生徒2「何だなんだ…?」

他のクラスがこのやり取りを見て声を上げるが、もはや翔太郎の耳にはそんなもの入ってこない。そんな状態では無い。

グレイク「ほらッ。ほらッ!そらッ!!あはははははは!!」

グレイクはまるで踊るようにパンチや回し蹴りを繰り出してくる。翔太郎にはそれを防ごうとするので精一杯であった。

翔太郎「ぐっ……!!グッ………!!!」

グレイク「オルァァアッッ!!」

グレイクの流れるような回し蹴り。翔太郎はそれをモロに食らってしまう。


ドグォォッッ!!


翔太郎「ぐあっ!!」

バリィィッッ。

別のクラスのドアを翔太郎ごと蹴破るグレイク。もはや誰かの悲鳴など翔太郎の耳には入ってなかった。

グレイク「おい……」

グレイク「オラアアアァァッッ!!」

グレイクの蹴りが翔太郎に飛んでくる。

翔太郎「…!」


バリィィッッッッ!!!


翔太郎とクレイグはその勢いで窓ガラスを突き破った。

翔太郎「ぐっ…!うぅっ……!!」

グレイク (………。)


ドズァアッッ!!


翔太郎「ぐあっ……!!」

グレイク「…………。」

3階から落ちてしまった翔太郎と見事に着地したグレイク。このままいけばどちらが勝利するかは一目瞭然であった。

翔太郎「……ッウ…!!」

何とか立ち上がる翔太郎。しかしもう反撃は見込めない。

翔太郎「ウグッ……!!」

グレイク「もうよせ……。」

翔太郎「…ッ!?」

グレイク「これ以上無様な様を見せるな…。」

グレイク「敗北を…受け入れるのだ…。」

翔太郎「グッ……ゥッ……!!」

翔太郎 (諦め…たくない…ッ!!)

翔太郎 (コイツに…ッ!)

翔太郎 (コイツに…勝って……ッ!)

そう思った、その時であった。

???「翔太郎ーーーーーー!!!!!」

翔太郎「!?」

グレイク「…?」

竹本「翔太郎ーーーーーッッッ!!!!」

声の主は竹本であった。教室の窓から顔を出しており、その顔は涙で歪んでいる。

翔太郎「たッ……竹本!?」

グレイク「………。」

竹本「頑張れっ……!頑張れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

翔太郎「────ッ。」

竹本「頑張れ……っ!頑張れぇぇえぇぇえ!!!!!」

三神「頑張れえぇぇぇえ!!!!翔太郎ぉぉぉおおおおおおお!!!!!」

三神「ほら!小野!お前も言えって!!!」

小野「あっ…がっ、頑張れえぇぇぇぇぇぇえええーーー!!!!!」

すると何と、校舎の窓から顔を出した他の生徒も翔太郎へ向かって応援し始めたのだ。

『頑張れぇぇえええーーー!!!!』

『いけぇぇえええーーーーっっっ!!!』

翔太郎「…………。」


グレイク「ふん…。下らん…。」

声援をよそに、翔太郎へ向かって歩みを進めるグレイク。

グレイク「自分の弱さに死ね…。」


ヒュオッッ!!


再び繰り出される流れるような回し蹴り。だが!


ガッ!!


グレイク「───ッ!?」

グレイクの回し蹴りを翔太郎が受け止めたのだ。

翔太郎「終わってねぇよ……まだ…!」

グレイク「……ッ。」

翔太郎から距離を取るグレイク。

翔太郎「…………。」

グレイク「…………。」

睨み合う2匹の獣。2度目の闘いの火蓋が切って落とされようとしていた。



ゼル「着いたぞッ!」

同時刻、クレイ達ZAQ(ザック)のメンバーが学校へ到着していた。現場は警察やら救急隊員やらでごった返している。

レオネル「何がどうなっているんだ…」

クレイ「とりあえず行くぞッ!」



翔太郎「………行くぞ……!!」

グレイク「───ッ!」


翔太郎「オラァァァァアアッッ!!」

グレイク「ゥオリャアァァッッ!!」


ガンッ!!!ガンッッ!!ガンッッッ!!!


2匹の拳がすれ違う。一進一退の攻防が続くかと思われた。

翔太郎「ゥオラァァッッ!!」


ドゴオォォッ!!!!


グレイク「───ッッ!!」

不利かと思われていた翔太郎の拳がグレイクを捉え始めたのだ。

翔太郎「オラァァッッ!!」


ドグオッ!!ドグォッッ!!


続いて2発、グレイクの胴体にめり込む。

グレイク「……ッグ!……ゥウッ!!」

翔太郎「オラァァァッッ!!」

グレイク「……ッッ!!」

再び翔太郎の拳がグレイクに命中する。そしてグレイクがその勢いで吹っ飛ばされたその時だった。

翔太郎「……!」

翔太郎 (この感覚は…!)

翔太郎の右手に力が宿り始める。ふと周りを見渡すと、伏見(ふしみ)が物陰で翔太郎へと力を送っていた。

翔太郎 (……!)

楪 (……うん!)

翔太郎「ッ!」

翔太郎は近くに落ちていたスコップを拾うと力を溜め始めた。

ギギギギ……ビキ……ビキ……

翔太郎の持っていたスコップが見る見るうちに立派な斧へと変化していく。

グレイク「グゥッ……!」

翔太郎「うぉぉおおおおおおーーーーーッッッ!!!!」

翔太郎「ライオネル・サンダー・ブレイクッッッ!!!!!!」


ギュイイイィィィィィィンッッッッッ!!!!!!


グレイク『……………ッ。』

翔太郎が放った大きな一撃がグレイクを貫通する。

グレイク「……そうか……。」

グレイク「これが力…。」

グレイク「これが悦び……。」

グレイク「満ちていく…満ちていく……ぞッ……!」


ドゴォォォォォォオッッッッッ!!!!


最後の言葉と共に爆発するグレイク。正真正銘、翔太郎の勝利である。

翔太郎「────ッ。」

変身が解けると、翔太郎は膝をついていた。

翔太郎「……………。」

翔太郎は校舎から溢れる歓声を聞くこと無く、眠りにつくのであった。