都に着いた姉妹は、遊郭【花月楼】に連れて来られた。
花月楼は、朱塗りの門に青々とした柳が揺れており庭には錦鯉が泳ぐ池が広がる。
都でも指折りの大見世だった。
夜になると提灯の明かりが楼を暖かく照らし、客の笑い声と三味線の音が響き合った。二階の欄干には花鳥の彫刻が施され、窓からは桜や梅の枝が覗いた。
楼内は沈香の香りが漂い、絹の着物を纏った遊女たちが華やかな笑顔で客を迎えた。
女将・椿は、紫の絹着物を纏っており髪に金の簪を挿した威厳ある女性だった。
彼女は姉妹を値踏みし、唇を綻ばせ笑う。
「双子の美人姉妹か。客の目を引くね。さあ、着替えな」
私たちは、新造用の藍色の木綿着物に着替えた。
二人は、楼の奥の狭い部屋に通された。畳は古び、窓からは裏庭の雑草しか見えなかったが、村の小屋に比べれば天国だった。



