ある春の夕暮れ、芙蓉は清隆と庭に立ち、琴を奏でた。音色は、蕭条村の川のせせらぎと山茶花の花びらが風に舞う情景を映し、二人を包んだ。
芙蓉の花紋が月光に照らされ、淡く光る。清隆は芙蓉の手を取り、微笑む。
「芙蓉、君の音は私の永遠だ。君とこうして過ごす日々が、私の幸せだ」
芙蓉は彼の胸に寄りかかり、囁いた。
「清隆様、あなたとここにいるだけで、私の心は満ちています。花巫女の力も、愛の前ではただの飾りです」
二人は山茶花の木の下で抱き合い、静かな幸福に浸った。芙蓉は清隆の温もりに、蕭条村の貧しさや芹の影に隠れた過去を癒され、ただ一人の女性として愛されている喜びを感じた。
清隆は芙蓉の笑顔に、過去の孤独を忘れ、彼女との未来に希望を見た。庭の山茶花がそよ風に揺れ、二人の愛を祝福するように花びらが舞う。
そんな中、芹は佐野次郎と旅に出ていた。
交易の道で舞を披露し、新たな夢を追い続けた。芙蓉への対抗心は薄れ、姞の幸せを心の奥で認めていた。
彼女は次郎に支えられ、軽やかな笑顔で新たな舞台に立った。
そして芙蓉と清隆は、都の喧騒を離れ静かな屋敷で穏やかな日々を過ごした。芙蓉の琴の音が、庭の山茶花と響き合い、二人の愛を永遠に紡いだ。
終



