その夜、村の顔役が訪れ、都での出稼ぎを提案した。囲炉裏の火がパチパチと音を立て、母は涙をこらえた。


「お前たちなら、都で高く売れる。母さんの薬代も稼げるよ」

 そう顔役が言うと、芹は目を輝かせた。

 芙蓉は不安になるも押し隠して頷いた。
 翌朝、二人は村を後にした。藁草履が土の道を踏むたび、背後の小屋は霧に溶けた。

 芙蓉は振り返り、母の影を見つめた。芹は前を向き、笑顔だった。