数年後、芙蓉の琴は都中に知れ渡ったことによって花巫女として人々の心を癒し続けた。

 清隆は、ついに決意して芙蓉を身請けすることを申し出た。
 花月楼の客室で、彼は芙蓉の手を取り、静かに言った。


「芙蓉、君の音は私の心を癒し、君の存在は私の人生を照らす。私の妻として、自由に生きてほしい」


 芙蓉は涙を浮かべ、葛藤を乗り越えた心で頷いた。


「清隆様、私も…あなたと一緒にいたい。遊女の私を、こんな風に愛してくれて、ありがとう」


 彼女の心は、過去の自己否定や遊女の枠を越え、愛に満ちていた。

 椿は身請けを認め、芙蓉は花月楼を去った。