清隆は芙蓉を頻繁に訪れ、彼女の琴を聴いた。
 彼は芙蓉の演奏後、静かに言った。

「君の音は、都を変える。花巫女として、人々の心を癒し続けなさい」

 清隆の心は、芙蓉への愛で満ちていた。彼は自分の立場や過去の孤独を乗り越え、芙蓉を愛することを決意していた。

 夜、芙蓉が琴を弾き終えると清隆は彼女を庭の山茶花の木の下に連れ出した。

 月光が山茶花の花びらを照らし、芙蓉の花紋と共鳴するように輝いた。


「芙蓉、君は遊女の枠を超えている。私のそばで、自由に音を奏でてほしい」

 清隆は真っ直ぐに芙蓉を見ると、言った。

 芙蓉の心は葛藤で揺れた。清隆の愛は、彼女を高貴な存在として認めるものだった。
 だけど、遊女としての自分を否定できなかった。


「清隆様、私は遊女です。蕭条村の貧しい生まれで、芹の影に隠れてきた私に、あなたのような方を愛する資格なんて…」


 彼女の声は震え、涙が頬を伝った。清隆は彼女の手を強く握り、静かに言った。

「君の過去も、遊女という立場も、私には関係ない。私の見ているのは、芙蓉という女性だ。君の音、君の心、それだけで十分だ」