芙蓉の花魁就任後、花月楼はかつてない繁盛を見せていた。彼女の琴は都中に知れ渡り、貴族や公卿がこぞって指名した。

 彼女の演奏は、花巫女の力で人々の心を癒し、都に平和をもたらした。

 かつて「顔だけ」と嘲った梅乃や遊女たちは、芙蓉の才能に頭を下げた。
 ある夜、梅乃が芙蓉に詫びた。


「あんたを侮ってすまなかった。花魁にふさわしいよ」


 芙蓉は微笑み、「過去は忘れましょう」と答えた。

 芹は新たな舞を練習し、芙蓉に挑戦状を叩きつけた。

「姉さま、次は負けないから!」


 芙蓉は穏やかに答えた。


「芹、いつでも挑戦を受けて立つよ」


 その言葉に、芹は唇を噛んだ。内心で姉の強さを認め始めていた。
 佐野次郎は芹を支え、瑠璃色の帯を贈った。


「芹殿、この帯で新しい舞台を舞ってくれ」


 芹は彼の優しさに心を奪われ、「次郎さんと一緒に、もっと大きな夢を見たい」と呟いた。