「姉さま、なんで私の邪魔をするの!? 花魁は私ひとりのはずだったのに!」

 それに、芙蓉は静かに答える。


「芹、琴の弦を緩めたのはあんたでしょう? でも、私は花巫女として、自分の力で勝った。姉として、あんたを誇りに思うよ。でも、私もね……輝きたい」


 清隆が舞台に上がり、芙蓉の手を取った。


「芙蓉、君の琴は魂を揺さぶる。芹君の舞も素晴らしいが、君は花月楼の光だ」


 彼の声は穏やかで、芙蓉は彼の手に自分の未来を見た気がした。
 芹は顔を赤らめ、黙って立ち去った。
 佐野次郎が彼女を追いかけ、慰める。


「芹殿、君はまだ輝ける。芹殿は芹殿でいいじゃないか、私は今の芹殿だから好きになったんだからね」


芹は涙を拭き、次郎に抱きついた。
だけど、心の奥では芙蓉への嫉妬がまだ燃えて消えそうにない。