殿方に送って貰えた嬉しさの一方で、芙蓉の心は葛藤で揺れていた。

遊女として、客に心を許すことは禁忌だった。蕭条村での貧しさ、芹の輝きに隠れてきた自分の不遇な過去が、彼女に囁いた。


「私はただの遊女。清隆様のような高貴な人に、愛される価値はない。花巫女だとしても、穢れた身だ」


 夜、芙蓉は裏庭で琴を弾きながら、涙を流した。花紋が温かく脈打つたび、花巫女の使命を感じた。

 だけども、愛への恐れが彼女を縛った。
 彼女は鏡の前で花紋を見つめ、呟いた。


「花巫女の力なんて、私には重すぎる。清隆様のそばにいられるはずがない……」