彼の声は穏やかで、芙蓉は初めて自分の存在が特別だと感じた。清隆は心の中で、芙蓉の音が自分の孤独を溶かす光だと感じていた。彼は彼女の純粋な魂に惹かれ、遊女という立場を超えた何かを見ていた。

清隆は芙蓉に花巫女の伝承を語った。

「花巫女は、古代に神々の声を音で伝え、人々の心を癒した。山茶花の紋は、その使命の証だ。君の音には、その力が宿っている。私の屋敷で、都の者たちを癒す曲を奏でてほしい」


 芙蓉は驚き、夢の老女の言葉を思い出した。

 彼女は自分の不器用な過去や、芹の影に隠れてきた人生を振り返り、呟いた。


「私みたいな者が、そんな大それた使命を…?」

 清隆は彼女の手を取り、言った。

「君の音は、蕭条村の川のせせらぎ、雪の静けさを持っている。それが君の力だ」