清隆は芙蓉を自邸に招いた。藤原邸は、都の中心に佇む荘厳な屋敷だった。

 庭の池には睡蓮が月光に揺れ、書斎には書物が積まれ、琴や琶が置かれていた。部屋には松の香が漂い、窓から差し込む月光が床に銀色の模様を描いている。

 清隆は芙蓉に琴を弾くよう促した。

「お前の音は、人の心を癒す。花巫女の血を継ぐ者なら、その力を試したい」



 芙蓉は緊張しながら琴を構えた。
 弦を弾くと、部屋は静寂に包まれる。音色は、山茶花の花びらが風に舞うように、繊細で力強かった。

 花紋が脈打ち、音に神秘的な響きを加えた。清隆は微笑んだ。

「この音は、神に通じる。お前は花巫女だ、芙蓉」