「見事だ。この娘は誰だ?」

 椿が慌てて芙蓉を呼び寄せた。

 清隆は彼女の首筋の花紋に目を留め、呟いた。

「山茶花の紋…花巫女の末裔か?」


 彼の視線は鋭くも優しく、芙蓉の心を震わせた。清隆の胸には、芙蓉の音色が忘れていた感情を呼び覚ました。

 彼は若い頃、戦乱で家族を失い、心を閉ざしてきたが、芙蓉の琴に癒しと希望を見た。
 彼女は清隆の瞳に、敬意とほのかな温かさを感じ、初めて誰かに認められた喜びに胸が熱くなった。

 だが、そんな中、芹は欄干の影で驚愕と嫉妬の表情を浮かべていた。