蕭条(しょうじょう)村は、国の北端にひっそりと佇む貧しい集落だった。
  切り立った山々に囲まれ、冬は雪に閉ざされ、夏は痩せた土から粟や芋がわずかに採れるのみ。家々は苔むした茅葺き屋根が傾き、隙間から冷たい風が忍び込んだ。

 芙蓉(ふよう)(せり)の家は村はずれの小さな小屋で、土壁にはひびが入り、囲炉裏の火が赤く揺れるたび、煤けた天井に影が揺らめいる。
 そのため母は昼は畑、夜は機織りで生計を立て、二人は薪拾いや水汲みを手伝った。

 芙蓉は姉として穏やかで、芹の笑顔を守るように振る舞った。
 芹は妹で、陽気で人懐っこく、いつも歌を口ずさみ、川辺で石を投げては水しぶきを笑顔で見つめた。二人の美しさは癒しであり村の希望だった。

 黒髪は月光のように滑らかで、瞳は山の湧き水のように澄んでいた。村人たちは市場で「蕭条村の美人姉妹」と囁き、この貧しい暮らしに彩りを添えていたのだ。