修復魔術士の孫

 話は少しだけ戻るが、ここでエヴァンズ家に継承する、【修復魔術】について詳しく話そう。

【修復魔術】を大きく分けると、二種類あるそうだ。
 一つは、長年の愛用品等の傷や穴を(ふさ)いで、元通りに直す魔術……。もう一つは、様々な物の頑固な汚れやシミを落として、色彩や光沢を復活させる魔術である。


 また、元通りに直す魔術よりも、色合いや光沢を復活させる魔術の方が圧倒的に習得しづらいという。
 使う魔力の塩梅(あんばい)、つまり微調整が非常に難しいらしい。

 そして、汚れやシミを完全に落とし切れるようになるには、繊細さだけでなく、精神力も必須である。
 集中力を最大限に高めた上、新品のような物の色彩や光沢を鮮明にイメージしなければ、魔術を使いこなすことはできない、と……。



 代々続くエヴァンズ家の中で、上記のような難易度の高い【修復魔術】を習得したのが最も早かったのは、一族で一番優秀なケーラだった。

 エヴァンズ家の習得した年齢は、平均的に二十代後半である。
 ケーラは二十一歳の時、堂々と華々しく、愛用品等の色彩や光沢を復活させる魔術を身につけたのだった。


 それ故、ケーラの孫であるドロシーは長年、亡き後でもケーラを熱烈に慕っているのである。
 ドロシーにとっては、永遠に憧れる祖母。それに、彼女の心の中で、ずっと輝き続けている女性なのだ。



 幼い頃からケーラの背中を見てきたドロシーは、今もケーラのような素晴らしい『修復魔術士』になりたいと、毎日、地道にコツコツと魔術の練習に励んでいる。

 焦っている訳ではないが、汚れとシミ落としの魔術を習得して、ケーラのように、多くの人を助けたいと思っているのだ。

 ……まあ、ドロシーが仕事熱心な理由は他にあるのだが、長くなりそうなので、別の機会に話すことにしよう。



 疲れ果ててしまいそうなドロシーの鍛錬は、これからも続いていくだろう。