ヒノキ村内の山岳警団と、トーコの家は同じ方向にある。ヒノキ村からは、山岳警団の方が少し遠い。
トーコは、山岳警団の詰所に向かって歩いている途中に、深い溜め息をついた。
(さっき、リズちゃんに『ボォーとしてる』って言われたけど、仕事のことよりも、オズワルドさんのことが大きいんだよな~。
髪と眼を、すっごく褒めされたからだと思うけど、なんか意識しちゃうな……。あの後も、何度か温泉で会ったけど、目を合わせられなかったし……)
再び溜め息をついたが、その後もトーコは、何度も繰り返し溜め息が止まらなかったようだ。
トーコの家の横を通り過ぎ、突き当たりの開けた敷地内にある、山岳警団の詰所が見えてきた。
詰所前の広場に入ろうとした時、トーコはすぐに木の後ろに隠れた。広場で数名の若い衆が、薪割りや薪の運搬をしているのに、気が付いたからだ。
非常に慎重な性格が故、トーコは、団員に声をかけるべき時間を熟考している。
しかも、広場の中央付近の、よく目立つ位置で、オズワルドが薪割り作業をしている。
その上、オズワルドの近くで、トーコよりも少し若そうな二人の娘が、黄色い声を出しているようだ。
(うう……。何だか行きにくいっ!)
心の中で呟くと、再び溜め息をついて、トーコは広場の様子を見ていた。
しばらくすると、作業を終えた団員たちは、ぽつぽつと詰所の中に入っていった。
広場に居た娘たちが、ヒノキ村の方向に歩き始めたのを確認すると、トーコは小走りで木々の間を通り抜け、詰所の裏側に回った。
深呼吸を数回した後、恐る恐る広場の方に行くと、斧を持ったまま、ひと休みしていたオズワルドと目が合った。
「あー……、団長に用か?」
「あっ、はい。エヴァ先生からの預かり物です」
「今は不在だ。部屋に置いてくる。……ちょっと待っていろ」
マジョラムが入った籠ごと受け取ると、オズワルドは詰所から早足で戻ってきた。
「……やる」
オズワルドは、透き通った薄い茶色の何かが入ったガラス瓶を、トーコに渡した。
「もしかして、ハチミツですか? どっ、どうして、こんな高級な物を、私に……?」
「知り合いからもらったんだが、団員の料理用には少なくてな……。良かったら、使ってくれ」
「あ、ありがとうございますっ」
(てかっ、余計に意識しちゃうじゃんっ!)
オズワルドにお礼を言った後、トーコは心の奥で、そう一人で突っ込みを入れたのだった。
トーコは、山岳警団の詰所に向かって歩いている途中に、深い溜め息をついた。
(さっき、リズちゃんに『ボォーとしてる』って言われたけど、仕事のことよりも、オズワルドさんのことが大きいんだよな~。
髪と眼を、すっごく褒めされたからだと思うけど、なんか意識しちゃうな……。あの後も、何度か温泉で会ったけど、目を合わせられなかったし……)
再び溜め息をついたが、その後もトーコは、何度も繰り返し溜め息が止まらなかったようだ。
トーコの家の横を通り過ぎ、突き当たりの開けた敷地内にある、山岳警団の詰所が見えてきた。
詰所前の広場に入ろうとした時、トーコはすぐに木の後ろに隠れた。広場で数名の若い衆が、薪割りや薪の運搬をしているのに、気が付いたからだ。
非常に慎重な性格が故、トーコは、団員に声をかけるべき時間を熟考している。
しかも、広場の中央付近の、よく目立つ位置で、オズワルドが薪割り作業をしている。
その上、オズワルドの近くで、トーコよりも少し若そうな二人の娘が、黄色い声を出しているようだ。
(うう……。何だか行きにくいっ!)
心の中で呟くと、再び溜め息をついて、トーコは広場の様子を見ていた。
しばらくすると、作業を終えた団員たちは、ぽつぽつと詰所の中に入っていった。
広場に居た娘たちが、ヒノキ村の方向に歩き始めたのを確認すると、トーコは小走りで木々の間を通り抜け、詰所の裏側に回った。
深呼吸を数回した後、恐る恐る広場の方に行くと、斧を持ったまま、ひと休みしていたオズワルドと目が合った。
「あー……、団長に用か?」
「あっ、はい。エヴァ先生からの預かり物です」
「今は不在だ。部屋に置いてくる。……ちょっと待っていろ」
マジョラムが入った籠ごと受け取ると、オズワルドは詰所から早足で戻ってきた。
「……やる」
オズワルドは、透き通った薄い茶色の何かが入ったガラス瓶を、トーコに渡した。
「もしかして、ハチミツですか? どっ、どうして、こんな高級な物を、私に……?」
「知り合いからもらったんだが、団員の料理用には少なくてな……。良かったら、使ってくれ」
「あ、ありがとうございますっ」
(てかっ、余計に意識しちゃうじゃんっ!)
オズワルドにお礼を言った後、トーコは心の奥で、そう一人で突っ込みを入れたのだった。

