少しだけ昔、スギ村の南側かつケヤキ村の隣に、『ニレ村』という、とても小さな村があった。

 しかし、キンキラ銀山の採掘が始まった頃からテオドール王の時代まで、イシヅミ町とスギ村の激しい覇権(はけん)争いに巻き込まれ、暴徒化した人々により、村中が焼け野原となってしまい、()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ一人、難を逃れて生き残ったのは、()()()()()()()()()()()、だったそうだ。



 故テオドール王は、亡くなったニレ村の人々に深い祈りを捧げた。
 そして、当時の悲しい記憶を皆が忘れないよう、また永遠(とわ)に、全ての国民が心穏やかに暮らせるよう願いを込め、旧ニレ村の跡地に、白のバラを植えることを考えた。


 後代のアイザック王は、補佐官のオスカーと共に尽力し、イシヅミ町とスギ村の紛争(ふんそう)を見事に休戦させたそうだ。

 さらに、定期的に王宮の庭師を派遣(はけん)させて、今も旧ニレ村跡地の白いバラを手入れさせているらしい。