珍しくパッチリと目が覚めた。
枕元に置いてあるスマホのアラームを止め、時間を確認すると午前7時7分。ダラダラ支度しなければ今日は遅刻せずに済む時間に起床できていた。
遅刻しないで学校に行ったら近江を驚かせられるじゃん、とガバリと起き上がり。しかし自分のネイビーブルーの髪が視界にチラつき、早く行ったらその分女子に話しかけられる確率が上がるじゃんと体が前に倒れた。
上昇したテンションが一瞬で下降した。
しかし敢えて授業をサボる気はないので、下降したテンションのままノロノロと再度体を起こす。仕方なく顔を洗いに行く。
「ヒッ」
「えっ」
幽霊を見たみたいな目でおれを見つめる母さん。
洗面台を占領していたところにおれが入っていき、小さく悲鳴をあげられるほど驚かれた。おれも驚いた。普段は互いに朝会うことがないから、いると思ってなかった。
近江より先に母さんを驚かせることになるとは。
「なんでいるの?」
「なんでって、学校あるから」
「こんな時間に?」
「これが正しい時間なんだよ」
なるほどと納得され、洗面所から出ていった。
こんな時間って、ネタなのか本気なのか。認識がズレる程度にはずっと遅刻しているので、咎められないのはありがたい。一般的な親としてそれで良いのかはわからないけど、おれは助かってる。
起きたばかりのおれとは違い、母さんは今すぐにでも家を出られるような完璧に整えられた格好をしていた。
早起きって遺伝しないのかな。後で覚えていたら調べてみようかな。
ゆっくりしてる時間はないと思い出して、顔を洗い寝癖を整え、朝ごはんを食べに行く。
「野菜もちゃんと食えよ」
リビングに入って開口1番に言われるのがそれ?
これだけは口酸っぱく言われるな。肉が多めなだけで、偏った食生活というほどではないと思う。
朝ごはんに必ずサラダの小鉢が置いてあるから野菜も摂取してる。食べられないわけじゃないし、残したことはない。わざわざ準備していってくれてるものあって、残せない。
「ちゃんと食べてるよ」
「そうだった、偉い偉い」
自分の椅子に座りいただきますをする。動き回る母さんを視界の端に捉えつつ、用意してくれてあった箸でレタスを摘み口に運ぶ。
時計を確認し、バッグを持ち、スマホを仕舞う一連の行動を見て、もしかしてと思う。
「もう行くの?」
「もう行くんだよ」
早くない? 世の中ってこんな朝早くから動いてるんだ。
早起きすることなんてそうないと、玄関に向かう母さんについて行くことにして箸を置く。
「早起きは三文の徳だな。見送ってもらえるなんて。じゃ、行ってきますー!」
「いってらっしゃーい」
手を振り見送ると、名残惜しさもなくサッと出かけていく。
閉じられていく扉をぼんやりと見つめたまま、俺にも何か徳があるかなと考える。
早く登校したら、何があるか。
近江に早く会えるな。早く会えた分、多く会話できる。マイナス方向を考えてテンションが下降していたけど、近江とだって話せる機会が増えるんだと気づいた。
学校に行く唯一の楽しみが近江に会うことになりつつあるな。でも楽しいからいいと思う。
更科たちも遅刻せず登校してるんだし、廊下側後ろの席のみんなで話せたらいい。
さっさと朝ごはんを食べ切って支度しようと、リビングに戻る。
野菜は別に嫌いではない。好んで食べるほどでもないけどと思いながらパクパクと食べ進め、他のものも平らげる。ごちそうさま。
皿を洗って、歯を磨いて、着替えてって、朝ってやること多いよ。朝の少ない時間でキビキビと動く人はすごいと感心する。
ネクタイを締めるのに若干手間取った後、母さんと同じ一連の行動をして、家を出た。鍵もちゃんと閉めた。
***
入学して初めて、遅刻しない時間に登校することに成功した。とは言っても余裕のある登校ではないので、予鈴を聞きながら昇降口で靴を履き替える。
電車内で花粉情報については調べたが、早起きの遺伝について調べるのは忘れたな、と気づいたところで声をかけられた。
「江間か?」
声がした方に振り向くと、佐々木がおれの後ろから階段を上ってきていた。
不思議なものを見たという感じの表情をしているな。
「珍しいな。早くても1限始まってからだろう」
「珍しいどころか初めてだよ」
声でわかっていたけど呼び止められたのが佐々木でよかった。
ギリギリの時間というのもあって人がいてもみんな急いでいるから、ここまで話しかけられることはなかった。
「佐々木は朝練終わり?」
頷かれる。
朝ちゃんと起きて練習に取り組むなんてすごいな。
「お疲れ様、毎日やってるの?」
もう1度頷いて、今度は言葉を続けるみたいで口を開いた。
「今月末大会があるんだ」
「今月末? え、もう少しじゃん。佐々木も出るってこと?」
三たび頷かれる。
「1年なのにすごいね。頑張ってね」
頷いてから「好きでやってるからな、ありがとう」と言われた。
佐々木と2人で会話するのも初めてかな。意外と喋れるものだ。喋ったというかやっぱり頷いてる印象が強いけど。
テスト前だから少し大変だって話をしてるうちに教室に着き、佐々木に続いて中に入る。
「佐々木おはよー! あ! 江間?!」
先に教室に入った佐々木の、おれより大きな背で隠れていた先の景色を捉えて、時が止まる。
「江間と一緒に来たのか?」
「階段で会ったんだ」
朝から元気で大きな更科の声すら素通りする。
声をかけてきたのは佐々木だけで、何事もなく教室に着いてよかったと。おれがネガティブに考えすぎていただけだったんだと思った矢先だ。
頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。
近江と更科の席の間に、速水さんと鷲尾さんが並んで立っていた。
更科と話していただけだと取るには、無理がある。だって体が近江へ向いていているから。きっと近江とも話していたんだ。
いつも遅刻しているから、朝どんな風に過ごしてるかなんて考えたことなかった。つい最近、近江の口から朝探索したって話を聞いていたにもかかわらず、考えが及ばなかった。
もしかして素顔がもうバレてるなんて可能性もあるのかな。
「えっ、江間くんおはよう!」
「あ……、おはよー」
速水さんの声と視線を受けて、なんとか再起動して挨拶を返す。
不自然に止めた足を動かす。教室のドアから1歩の自分の席に行きバッグを置くという行為すら難しく感じた。
「今日は早いね、どうしたの? なっ、何かあるの?」
「んーん、何もないよ」
近江がいるすぐ横で、速水さんと会話する。なんか嫌だな。でも席順の関係でここから離れるわけにもいかない。
おれが知らないだけで仲良かったの? 仲が良くなったのなら、それはいつから?
全然何も知らなかった。
今日初めて話したんだ、とかならいいな。
「おれも偶には起きれるんだ」
「そっ、そうなんだね、でもギリギリだよ」
「ね、もう少し早く着くかなって思ってたんだけど」
教室の壁にかかった時計を見ると本鈴がもう鳴りそうだ。
遅刻しなかったんだから、短時間でも、この時間で近江と話したかった。でもどう話しかけていいかわからない。目の前にいるのに。
速水さんとの会話を終わらせるんじゃなくても、せめて話題を広げて近江とも話せるようにできればいいのに。そんな器用なことできない。
「そうしたらもっと喋れるのにね」
「え?」
「な、なんでもないよ、チャイム鳴っちゃったね。私いつもタイミング悪い……」
小さい声に本鈴が重なったせいでかき消されて、聞き取れなかった。
「あっ、そうだった、飴あげる!」
「飴?」
おれの手にぎゅっと押しつけるようにして渡される。
勢いに負けてつい受け取った手を開くと、デフォルメされた牛とミルクの柄が印刷された小さな包みが3つ。
「いつも遅刻しててちゃんと朝ごはん食べてるか心配だから!」
「心配してくれたんだ? ありがとう」
「あの、うん! 飴なら授業中にも舐められるから! またねっ」
鷲尾さんと顔を突き合わせて窓際の方の席へ走っていく。
おれの心に悪感情が広がっているなんて思ってもいなさそうな、優しい笑顔で渡してくれた。
遅刻するようなやつのことを思って行動できるなんて、きっといい子なんだろうな。
でもおれはいつも、ゆっくり支度して朝ごはんもちゃんと食べてる。心配してもらうようなやつじゃない。
もう1度手を握って、飴をそのままブレザーのポケットに仕舞う。
「江間、おはよ」
腕をつつかれて、そっちを向く。
「おはよー……」
重たいメガネとマスクをした、表情のわかりにくさにも慣れてきた近江の顔。
やっと話せるのに、嬉しくない。
おれの中で燻っているあんまり良いとは言えない感情が邪魔をする。
「遅刻しないなんて珍しいな」
「うん」
「今日はノートいらないな」
「うん」
そうだ。今日は借りる必要がない。
良いことだ。近江に負担をかけなくて済む。だけど、おれと近江の関係が途切れてしまうような気がして、不安な気持ちが膨らんでいく。
「まだ眠い?」
「だ、大丈夫。先生来たからまた後でね」
近江に背を向け、席に座る。
いつも甘えて負担をかけてるくせに、態度悪くなっちゃった。
話を途中で切れるなら、近江じゃなくて女子のときにできればいいのに。今じゃなくていいのに。でも心がざわついてどうしようもない。
出席を確認する際、担任にも驚かれた。
一応毎回おれがいるかどうかの確認をしてくれていることを知って、申し訳ない気持ちになった。
いつまで経っても朝起きられない、いや、起きようとしないおれへの罰か。
それとも試練かな。
乗り越えたらその先に待ってるものはあるんだろうか。早起きした分の徳ってやつが待っているといいんだけど。
***
枕元に置いてあるスマホのアラームを止め、時間を確認すると午前7時7分。ダラダラ支度しなければ今日は遅刻せずに済む時間に起床できていた。
遅刻しないで学校に行ったら近江を驚かせられるじゃん、とガバリと起き上がり。しかし自分のネイビーブルーの髪が視界にチラつき、早く行ったらその分女子に話しかけられる確率が上がるじゃんと体が前に倒れた。
上昇したテンションが一瞬で下降した。
しかし敢えて授業をサボる気はないので、下降したテンションのままノロノロと再度体を起こす。仕方なく顔を洗いに行く。
「ヒッ」
「えっ」
幽霊を見たみたいな目でおれを見つめる母さん。
洗面台を占領していたところにおれが入っていき、小さく悲鳴をあげられるほど驚かれた。おれも驚いた。普段は互いに朝会うことがないから、いると思ってなかった。
近江より先に母さんを驚かせることになるとは。
「なんでいるの?」
「なんでって、学校あるから」
「こんな時間に?」
「これが正しい時間なんだよ」
なるほどと納得され、洗面所から出ていった。
こんな時間って、ネタなのか本気なのか。認識がズレる程度にはずっと遅刻しているので、咎められないのはありがたい。一般的な親としてそれで良いのかはわからないけど、おれは助かってる。
起きたばかりのおれとは違い、母さんは今すぐにでも家を出られるような完璧に整えられた格好をしていた。
早起きって遺伝しないのかな。後で覚えていたら調べてみようかな。
ゆっくりしてる時間はないと思い出して、顔を洗い寝癖を整え、朝ごはんを食べに行く。
「野菜もちゃんと食えよ」
リビングに入って開口1番に言われるのがそれ?
これだけは口酸っぱく言われるな。肉が多めなだけで、偏った食生活というほどではないと思う。
朝ごはんに必ずサラダの小鉢が置いてあるから野菜も摂取してる。食べられないわけじゃないし、残したことはない。わざわざ準備していってくれてるものあって、残せない。
「ちゃんと食べてるよ」
「そうだった、偉い偉い」
自分の椅子に座りいただきますをする。動き回る母さんを視界の端に捉えつつ、用意してくれてあった箸でレタスを摘み口に運ぶ。
時計を確認し、バッグを持ち、スマホを仕舞う一連の行動を見て、もしかしてと思う。
「もう行くの?」
「もう行くんだよ」
早くない? 世の中ってこんな朝早くから動いてるんだ。
早起きすることなんてそうないと、玄関に向かう母さんについて行くことにして箸を置く。
「早起きは三文の徳だな。見送ってもらえるなんて。じゃ、行ってきますー!」
「いってらっしゃーい」
手を振り見送ると、名残惜しさもなくサッと出かけていく。
閉じられていく扉をぼんやりと見つめたまま、俺にも何か徳があるかなと考える。
早く登校したら、何があるか。
近江に早く会えるな。早く会えた分、多く会話できる。マイナス方向を考えてテンションが下降していたけど、近江とだって話せる機会が増えるんだと気づいた。
学校に行く唯一の楽しみが近江に会うことになりつつあるな。でも楽しいからいいと思う。
更科たちも遅刻せず登校してるんだし、廊下側後ろの席のみんなで話せたらいい。
さっさと朝ごはんを食べ切って支度しようと、リビングに戻る。
野菜は別に嫌いではない。好んで食べるほどでもないけどと思いながらパクパクと食べ進め、他のものも平らげる。ごちそうさま。
皿を洗って、歯を磨いて、着替えてって、朝ってやること多いよ。朝の少ない時間でキビキビと動く人はすごいと感心する。
ネクタイを締めるのに若干手間取った後、母さんと同じ一連の行動をして、家を出た。鍵もちゃんと閉めた。
***
入学して初めて、遅刻しない時間に登校することに成功した。とは言っても余裕のある登校ではないので、予鈴を聞きながら昇降口で靴を履き替える。
電車内で花粉情報については調べたが、早起きの遺伝について調べるのは忘れたな、と気づいたところで声をかけられた。
「江間か?」
声がした方に振り向くと、佐々木がおれの後ろから階段を上ってきていた。
不思議なものを見たという感じの表情をしているな。
「珍しいな。早くても1限始まってからだろう」
「珍しいどころか初めてだよ」
声でわかっていたけど呼び止められたのが佐々木でよかった。
ギリギリの時間というのもあって人がいてもみんな急いでいるから、ここまで話しかけられることはなかった。
「佐々木は朝練終わり?」
頷かれる。
朝ちゃんと起きて練習に取り組むなんてすごいな。
「お疲れ様、毎日やってるの?」
もう1度頷いて、今度は言葉を続けるみたいで口を開いた。
「今月末大会があるんだ」
「今月末? え、もう少しじゃん。佐々木も出るってこと?」
三たび頷かれる。
「1年なのにすごいね。頑張ってね」
頷いてから「好きでやってるからな、ありがとう」と言われた。
佐々木と2人で会話するのも初めてかな。意外と喋れるものだ。喋ったというかやっぱり頷いてる印象が強いけど。
テスト前だから少し大変だって話をしてるうちに教室に着き、佐々木に続いて中に入る。
「佐々木おはよー! あ! 江間?!」
先に教室に入った佐々木の、おれより大きな背で隠れていた先の景色を捉えて、時が止まる。
「江間と一緒に来たのか?」
「階段で会ったんだ」
朝から元気で大きな更科の声すら素通りする。
声をかけてきたのは佐々木だけで、何事もなく教室に着いてよかったと。おれがネガティブに考えすぎていただけだったんだと思った矢先だ。
頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。
近江と更科の席の間に、速水さんと鷲尾さんが並んで立っていた。
更科と話していただけだと取るには、無理がある。だって体が近江へ向いていているから。きっと近江とも話していたんだ。
いつも遅刻しているから、朝どんな風に過ごしてるかなんて考えたことなかった。つい最近、近江の口から朝探索したって話を聞いていたにもかかわらず、考えが及ばなかった。
もしかして素顔がもうバレてるなんて可能性もあるのかな。
「えっ、江間くんおはよう!」
「あ……、おはよー」
速水さんの声と視線を受けて、なんとか再起動して挨拶を返す。
不自然に止めた足を動かす。教室のドアから1歩の自分の席に行きバッグを置くという行為すら難しく感じた。
「今日は早いね、どうしたの? なっ、何かあるの?」
「んーん、何もないよ」
近江がいるすぐ横で、速水さんと会話する。なんか嫌だな。でも席順の関係でここから離れるわけにもいかない。
おれが知らないだけで仲良かったの? 仲が良くなったのなら、それはいつから?
全然何も知らなかった。
今日初めて話したんだ、とかならいいな。
「おれも偶には起きれるんだ」
「そっ、そうなんだね、でもギリギリだよ」
「ね、もう少し早く着くかなって思ってたんだけど」
教室の壁にかかった時計を見ると本鈴がもう鳴りそうだ。
遅刻しなかったんだから、短時間でも、この時間で近江と話したかった。でもどう話しかけていいかわからない。目の前にいるのに。
速水さんとの会話を終わらせるんじゃなくても、せめて話題を広げて近江とも話せるようにできればいいのに。そんな器用なことできない。
「そうしたらもっと喋れるのにね」
「え?」
「な、なんでもないよ、チャイム鳴っちゃったね。私いつもタイミング悪い……」
小さい声に本鈴が重なったせいでかき消されて、聞き取れなかった。
「あっ、そうだった、飴あげる!」
「飴?」
おれの手にぎゅっと押しつけるようにして渡される。
勢いに負けてつい受け取った手を開くと、デフォルメされた牛とミルクの柄が印刷された小さな包みが3つ。
「いつも遅刻しててちゃんと朝ごはん食べてるか心配だから!」
「心配してくれたんだ? ありがとう」
「あの、うん! 飴なら授業中にも舐められるから! またねっ」
鷲尾さんと顔を突き合わせて窓際の方の席へ走っていく。
おれの心に悪感情が広がっているなんて思ってもいなさそうな、優しい笑顔で渡してくれた。
遅刻するようなやつのことを思って行動できるなんて、きっといい子なんだろうな。
でもおれはいつも、ゆっくり支度して朝ごはんもちゃんと食べてる。心配してもらうようなやつじゃない。
もう1度手を握って、飴をそのままブレザーのポケットに仕舞う。
「江間、おはよ」
腕をつつかれて、そっちを向く。
「おはよー……」
重たいメガネとマスクをした、表情のわかりにくさにも慣れてきた近江の顔。
やっと話せるのに、嬉しくない。
おれの中で燻っているあんまり良いとは言えない感情が邪魔をする。
「遅刻しないなんて珍しいな」
「うん」
「今日はノートいらないな」
「うん」
そうだ。今日は借りる必要がない。
良いことだ。近江に負担をかけなくて済む。だけど、おれと近江の関係が途切れてしまうような気がして、不安な気持ちが膨らんでいく。
「まだ眠い?」
「だ、大丈夫。先生来たからまた後でね」
近江に背を向け、席に座る。
いつも甘えて負担をかけてるくせに、態度悪くなっちゃった。
話を途中で切れるなら、近江じゃなくて女子のときにできればいいのに。今じゃなくていいのに。でも心がざわついてどうしようもない。
出席を確認する際、担任にも驚かれた。
一応毎回おれがいるかどうかの確認をしてくれていることを知って、申し訳ない気持ちになった。
いつまで経っても朝起きられない、いや、起きようとしないおれへの罰か。
それとも試練かな。
乗り越えたらその先に待ってるものはあるんだろうか。早起きした分の徳ってやつが待っているといいんだけど。
***
