「お疲れ様でしたー!」
カメラのフラッシュが途切れると、ぴんっと張り巡らされていた緊張の糸がぷっつりと切れて、一気に安堵の波がスタジオ内を浸食して行く。カメラマンの傍に寄り、パソコンで今まで撮った写真のチェックを済ませると、俺は「お疲れさまでした」とスタッフに挨拶をした。
マネージャーに促されるまま、次の現場へと急いで向かう。
次は今期のドラマの番宣でバラエティー番組に、三本出なければいけない。
すでに時刻は夜の九時を示していた。
多分。……いや、絶対に今日中に家に帰れない気がする。
俺はそんな嫌な予感を抱えながら、マネージャーの車へと乗り込み、ケータイを取り出した。窓の外を流れるネオンを眺めながら、指先をスマホの画面の上でさ迷わせると、俺は諦めの溜め息を吐きながら、
『ごめん、先に寝てて』
と、一言だけメッセージを飛ばした。
今日は葵が俺の部屋に遊びに来ていて、本来なら、俺は十二時前には家に帰り着く予定だった。
それなのに、雑誌側の撮影が押してしまい、想像以上に時間を取られてしまった。プロ意識が高い事は、俺としても張り合いあるが、いざ緊張が溶けた途端、しまったと気が付くという時間配分のなさ。
俺は何度目かも忘れた溜め息を長く吐いた。
すると、すぐにメッセージに既読が付いて、
『頑張ってね! 待ってる』
と、簡易的な兎のイラストが、笑顔で飛び跳ねてるスタンプとともに返事が来た。
その柔らかい返しに、罪悪感が少しだけ薄れ、やがてすぐに申し訳なさと一抹の寂しさと不安が胸を締め付けた。放っておくと、その不安は大きく肥大して、気持ちが深い沼地に引きずられるように落ちて行くのが分かった。
約束を破るたびに、悲しませている。その事実が、言い表しようがない程に、ただ情けなく、寂しく、悲しい。身勝手に、悲しさだけが募っていく。
俺は膝に肘を立てて頭を抱えると、整えた髪を掻き乱した。
一体どうすりゃ良いんだ。
答えのでない、いや、既に答えが出てしまっている事をどう覆せば良いのか分からない。
「もうそろそろ着くからね。そしたら、すぐにスタイリストさんの所に行って、髪と衣装頼んでね」
「分かってるよ……っ!」
つい乱暴な言葉になり、俺ははっとして押し黙った。
マネージャーは何も言わなかった。
俺は重苦しい空気に小さく舌打ちをして、
『なるべく早く帰るから』
とメッセージを飛ばした。
カメラのフラッシュが途切れると、ぴんっと張り巡らされていた緊張の糸がぷっつりと切れて、一気に安堵の波がスタジオ内を浸食して行く。カメラマンの傍に寄り、パソコンで今まで撮った写真のチェックを済ませると、俺は「お疲れさまでした」とスタッフに挨拶をした。
マネージャーに促されるまま、次の現場へと急いで向かう。
次は今期のドラマの番宣でバラエティー番組に、三本出なければいけない。
すでに時刻は夜の九時を示していた。
多分。……いや、絶対に今日中に家に帰れない気がする。
俺はそんな嫌な予感を抱えながら、マネージャーの車へと乗り込み、ケータイを取り出した。窓の外を流れるネオンを眺めながら、指先をスマホの画面の上でさ迷わせると、俺は諦めの溜め息を吐きながら、
『ごめん、先に寝てて』
と、一言だけメッセージを飛ばした。
今日は葵が俺の部屋に遊びに来ていて、本来なら、俺は十二時前には家に帰り着く予定だった。
それなのに、雑誌側の撮影が押してしまい、想像以上に時間を取られてしまった。プロ意識が高い事は、俺としても張り合いあるが、いざ緊張が溶けた途端、しまったと気が付くという時間配分のなさ。
俺は何度目かも忘れた溜め息を長く吐いた。
すると、すぐにメッセージに既読が付いて、
『頑張ってね! 待ってる』
と、簡易的な兎のイラストが、笑顔で飛び跳ねてるスタンプとともに返事が来た。
その柔らかい返しに、罪悪感が少しだけ薄れ、やがてすぐに申し訳なさと一抹の寂しさと不安が胸を締め付けた。放っておくと、その不安は大きく肥大して、気持ちが深い沼地に引きずられるように落ちて行くのが分かった。
約束を破るたびに、悲しませている。その事実が、言い表しようがない程に、ただ情けなく、寂しく、悲しい。身勝手に、悲しさだけが募っていく。
俺は膝に肘を立てて頭を抱えると、整えた髪を掻き乱した。
一体どうすりゃ良いんだ。
答えのでない、いや、既に答えが出てしまっている事をどう覆せば良いのか分からない。
「もうそろそろ着くからね。そしたら、すぐにスタイリストさんの所に行って、髪と衣装頼んでね」
「分かってるよ……っ!」
つい乱暴な言葉になり、俺ははっとして押し黙った。
マネージャーは何も言わなかった。
俺は重苦しい空気に小さく舌打ちをして、
『なるべく早く帰るから』
とメッセージを飛ばした。



