神花の姫と夜叉王の加護

時は満ち、再び神殿の広間に花嫁候補たちが集められた。
神聖な空気が張り詰める中、民衆や家臣たちの視線が一斉に朱鷺と浅葱へ注がれていた。

朱鷺は依然としてその美貌と誇り高き姿勢を崩さなかったが、その瞳の奥には焦燥と恐怖が揺れている。
一方、浅葱は覚醒の力を纏い、堂々と夜叉王の前に立っていた。

「さて、最終の選定を始めよう」

夜叉王の声が響き渡る。
彼の甲冑は光を受けて神々しく輝き、その威厳に誰もが息を呑んだ。

「浅葱よ、お前の魂は清く、加護は揺るぎない。神の花嫁としてふさわしいと私は認める」

浅葱の頬にうっすらと涙が浮かび、その胸は誇りと覚悟で満たされていた。

次に朱鷺の前に夜叉王が歩み寄る。
「朱鷺、お前の心は欲望と嫉妬に染まり、神の意に背いている。ゆえに、神殿の力によりその美貌も、家の威光も失い、ここに追放とする」

その宣告とともに、空気が凍りついた。
朱鷺の顔が瞬時に変わり、肌がかすかに青白くなっていく。
家紋が輝きを失い、彼女の着物からは光が消え、まるで花が枯れるかのように凋落していった。

「いや、そんな……!」

朱鷺は叫び、足元がぐらつく。
だが、誰一人として彼女に手を差し伸べる者はいなかった。

夜叉王は冷たく言い放つ。

「お前の虚栄と悪意はこの民衆の前で暴かれた。これが神の裁きだ」

その時、民衆の間から嘲笑と怒りが巻き起こった。
「ざまあみろ!」「お前の罪は赦されない!」

朱鷺の姿はやがて夜の闇に溶け、常夜の国の人々の心に深い教訓として刻まれた。

一方、浅葱はその光景を静かに見つめながらも、決して人を憎むことはなかった。
「私が選ばれたのは、誰かを蹴落としたからではなく、自分自身の力を信じたから」

彼女は微笑み、夜叉王の側に歩み寄った。
「これからは、私がこの国の光となり、皆の希望となります」

夜叉王は優しく頷き、静かに彼女の手を取った。

「浅葱よ、お前の未来は輝かしい」

そう告げられ、常夜の国には新たな時代の幕が上がった。